45.テーベ平原の戦い~終わり~
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「うっらぁぁぁあぁ」
バルザックは、相棒の大剣をオークに振り下ろす。
斜めに斬られたオークは、青い液体をまき散らしながら消えていく。
後ろから振り下ろされる棍棒を、バルザックは軽く避けると、その黒い腹に蹴りを入れた。
蹴られたオークは別のオークに衝突した。そして体勢を立てなおす――まもなく、バルザックの大剣で二体まとめて切り捨てられた。
「あぁー足りねぇ。せっかく守るもんも無くなったのに、黒豚退治かよ」
バルザックは、愚痴を吐きながらも、見えるオークを次々と斬り、潰して回る。
歩く度に、オークを始末するバルザック。
彼の視界に、チラチラと炎人間の姿が映り、そちらへ行きたい感情が湧き上がってくる。
バルザックの視界の中で、武器を破壊されたジャイアントが、炎人間を掴みにかかる。が、燃える炎に阻まれて失敗に終わった。
炎人間は、そのままジャイアントの四肢を斬り、消し飛ばすと、胴を横薙ぎにし、ジャイアントを魔力ごと消滅させた。
「あれ、モンスターじゃなくて良かったぜ……いや、いっぺん戦いてぇな」
バルザックは、一回転するように大剣を振り回し、群がる黒いオークをまとめて始末する。
さて、どうするか。バルザックは考える。
両翼にいたモンスター達は、マルクの空けた中央に集まってきている。
ドムとサラス、テガーとシャラガムが、それぞれ左右のオークを殲滅している。
バルザック自身はマルクに向かいかねないオークを倒しているが……。
「間に合えばいいんだがなぁ」
黒いオークの首を飛ばしながら、バルザックは呟いた。
苦手な土の魔法で作った足場を三つ飛び移り、黒いジャイアントの頭から炎の大剣で真っ二つにする。然しものジャイアントも、一撃で炎と化した。
「六体目! あと四」
そして俺は、横に大きく跳び退く。
着地の隙を狙ったジャイアントの大棍棒が、地面を抉る。
一体一体と戦う間隔が、狭くなっている。
中央に集まったのだろう。
炎という魔力に誘われたのだろうか? 全て俺の方に向かってきているようだ。
さらに一撃、別のジャイアントから大棍棒が横薙ぎに振るわれた。
俺は炎の大剣で、大棍棒を切り裂く。
だが、大棍棒と大剣の衝突による衝撃は、俺の体を吹き飛ばすには十分だったようだ。
「ちぃ、≪風の羽≫」
唱えた魔法により、ふわりと落下が緩やかになる。
タイミングを計り、地に足を付け、踏ん張る。地面の焦げる臭いがする。
手はヒリヒリするが、体に傷や損傷はない。
幸いなことに、二体のジャイアントと距離を取ることが出来た。
ならば魔術師らしく行こう。
想像を掻き立てろ。天を覆う厚い雲を。雲の嘶きを。声が呼ぶは、天の怒り。
二体の標的を見据え、魔力を高める。
「≪天馬の雷≫」
線の如き閃光が二つ、上空から空気を割って、ジャイアントに落ちた。
一体一条。
二体のジャイアントそれぞれが、雷により薄い煙を上げている。
ジャイアントは、直撃を受けたままの姿で動かない。
全力で駆け寄り、二体の両足、計四本の足を切り取る。
倒れたジャイアント達の首を、炎の大剣で切り落とす。
ジャイアント達の足と首、それぞれの切り口から侵食するように燃え上がり、命が尽きる。
「残り二」
風の羽もそうだし、天馬の雷もそうだが、三つも同時に魔力を吸われるとキツイものがある。特に、炎帝竜の大剣を出しっぱなしにしているのが……辛い。
だがあと二体だ。
事前情報は正しく、それ以外の敵は見当たらない。
偵察を行ってくれた人に、感謝したいものだ。
見え辛い視界で見渡してみると、オークの数も、もう数えるほどだ。
見ると、残りのジャイアント達は、二体合わせてこちらを同時に襲うつもりのようだ。こちらにとっては好都合なのに。
炎獄王の鎧を解除する。
拡散するように、炎が空気に溶けて消えていく。
鼻から息を吸い、口から長く吐く。
「はぁー熱かった」
「おぅ、マルク。流石にもう限界か。ハァハァハ。間に合ってよかったぜ」
俺の隣で、バルザックさんが笑う。
でも、御免。もう終わりなんだ。
勢いを上げ、俺たちに突っ込んでくる黒いジャイアント。
距離はまだある。
だから俺は、二体を仕留める為に、前方のジャイアントに向け、炎の大剣を投げつけた。
高速で飛ぶ炎の大剣が、ジャイアントの胸に突き刺さった。
「燃えろ」
溜まりに溜まった全ての魔力が、膨れ上がる。突き刺さった炎の大剣を中心に。
そしてそれは轟音と共に、炎と化し、爆発した。
魔力の奔流が地を抉り、触れるものを許さぬが如く、燃え、燃え、燃え、尽きるまで燃やし尽くした。
余波の熱風が、こちらにも流れる。
「うぉ! あちぃ!」
バルザックさんが、熱風に顔をしかめる。
秒も掛からず現象は終わり、そこには抉れた地面を残すのみであった。
二体のジャイアントの姿は、当然のように塵一つ残ってはいない。
魔石は回収できたのかは、ミュール様に後で聞くしかないだろう。
俺の頭に痛みが走る。
バルザックさんの仕業だ。
「マルク! てめぇ何しやがる」
「ごめんバルザックさん。魔力がもったいなくて……つい」
「ついじゃねぇ。絶対ついじゃねぇだろう。俺の獲物ごと吹っ飛ばしやがって」
もう一発、拳が飛んできた。
流石に見ていれば、避ける事が出来る。
「やっぱりマルクとは、いっぺん方ぁ付けねぇと駄目だな……覚悟しろ」
「ちょっと! バルザックさん? 目が本気なんですけど。助けてください。ドムさん。テガーさん。助けてー」
砦へ向け、全力で走る。
逃げながらも、警戒は怠らない。それはバルザックさんも同じだろう。
バルザックパーティー全員が、バルザックさんの後ろを走って付いてきている。
これでは、パーティーの次の獲物が俺みたいではないか。
サラスさんに至っては、走りながらケラケラ笑っている。
空からも、クスクス笑い声が聞こえる。
全力の逃走劇は砦まで続いた。道中に、モンスターの影は一つもなかった。




