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ミネルヴァの雄~冒険者を辞めた俺は何をするべきだろうか?~  作者: ごこち 一
第一章

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46/1014

45.テーベ平原の戦い~終わり~

誤字修正 読みやすいように全体修正 内容変更なし 誤字報告感謝

「うっらぁぁぁあぁ」


 バルザックは、相棒の大剣をオークに振り下ろす。

 斜めに斬られたオークは、青い液体をまき散らしながら消えていく。

 後ろから振り下ろされる棍棒を、バルザックは軽く避けると、その黒い腹に蹴りを入れた。

 蹴られたオークは別のオークに衝突した。そして体勢を立てなおす――まもなく、バルザックの大剣で二体まとめて切り捨てられた。


「あぁー足りねぇ。せっかく守るもんも無くなったのに、黒豚退治かよ」


 バルザックは、愚痴を吐きながらも、見えるオークを次々と斬り、潰して回る。

 歩く度に、オークを始末するバルザック。

 彼の視界に、チラチラと炎人間の姿が映り、そちらへ行きたい感情が湧き上がってくる。

 バルザックの視界の中で、武器を破壊されたジャイアントが、炎人間を掴みにかかる。が、燃える炎に阻まれて失敗に終わった。

 炎人間は、そのままジャイアントの四肢を斬り、消し飛ばすと、胴を横薙ぎにし、ジャイアントを魔力ごと消滅させた。


「あれ、モンスターじゃなくて良かったぜ……いや、いっぺん戦いてぇな」


 バルザックは、一回転するように大剣を振り回し、群がる黒いオークをまとめて始末する。

 さて、どうするか。バルザックは考える。

 両翼にいたモンスター達は、マルクの空けた中央に集まってきている。

 ドムとサラス、テガーとシャラガムが、それぞれ左右のオークを殲滅している。

 バルザック自身はマルクに向かいかねないオークを倒しているが……。


「間に合えばいいんだがなぁ」


 黒いオークの首を飛ばしながら、バルザックは呟いた。




 苦手な土の魔法で作った足場を三つ飛び移り、黒いジャイアントの頭から炎の大剣で真っ二つにする。()しものジャイアントも、一撃で炎と化した。


「六体目! あと四」


 そして俺は、横に大きく跳び退()く。

 着地の隙を狙ったジャイアントの大棍棒が、地面を抉る。

 一体一体と戦う間隔が、狭くなっている。

 中央に集まったのだろう。

 炎という魔力に誘われたのだろうか? 全て俺の方に向かってきているようだ。

 さらに一撃、別のジャイアントから大棍棒が横薙ぎに振るわれた。

 俺は炎の大剣で、大棍棒を切り裂く。

 だが、大棍棒と大剣の衝突による衝撃は、俺の体を吹き飛ばすには十分だったようだ。


「ちぃ、≪(かぜ)(はね)≫」


 唱えた魔法により、ふわりと落下が緩やかになる。

 タイミングを計り、地に足を付け、踏ん張る。地面の焦げる臭いがする。

 手はヒリヒリするが、体に傷や損傷はない。

 幸いなことに、二体のジャイアントと距離を取ることが出来た。

 ならば魔術師らしく行こう。

 想像を()き立てろ。天を覆う厚い雲を。雲の(いなな)きを。声が呼ぶは、天の怒り。

 二体の標的を見据え、魔力を高める。


「≪天馬(てんま)(いかずち)≫」


 線の(ごと)き閃光が二つ、上空から空気を割って、ジャイアントに落ちた。

 一体一条。

 二体のジャイアントそれぞれが、雷により薄い煙を上げている。

 ジャイアントは、直撃を受けたままの姿で動かない。

 全力で駆け寄り、二体の両足、計四本の足を切り取る。

 倒れたジャイアント達の首を、炎の大剣で切り落とす。

 ジャイアント達の足と首、それぞれの切り口から侵食するように燃え上がり、命が尽きる。


「残り二」


 風の羽もそうだし、天馬の雷もそうだが、三つも同時に魔力を吸われるとキツイものがある。特に、炎帝竜の大剣を出しっぱなしにしているのが……辛い。

 だがあと二体だ。

 事前情報は正しく、それ以外の敵は見当たらない。

 偵察を行ってくれた人に、感謝したいものだ。

 見え辛い視界で見渡してみると、オークの数も、もう数えるほどだ。

 見ると、残りのジャイアント達は、二体合わせてこちらを同時に襲うつもりのようだ。こちらにとっては好都合なのに。

 炎獄王の鎧を解除する。

 拡散するように、炎が空気に溶けて消えていく。

 鼻から息を吸い、口から長く吐く。


「はぁー熱かった」

「おぅ、マルク。流石にもう限界か。ハァハァハ。間に合ってよかったぜ」


 俺の隣で、バルザックさんが笑う。

 でも、御免。もう終わりなんだ。

 勢いを上げ、俺たちに突っ込んでくる黒いジャイアント。

 距離はまだある。

 だから俺は、二体を仕留める為に、前方のジャイアントに向け、炎の大剣を投げつけた。

 高速で飛ぶ炎の大剣が、ジャイアントの胸に突き刺さった。


「燃えろ」


 溜まりに溜まった全ての魔力が、膨れ上がる。突き刺さった炎の大剣を中心に。

 そしてそれは轟音と共に、炎と化し、爆発した。

 魔力の奔流が地を抉り、触れるものを許さぬが如く、燃え、燃え、燃え、尽きるまで燃やし尽くした。

 余波の熱風が、こちらにも流れる。


「うぉ! あちぃ!」


 バルザックさんが、熱風に顔をしかめる。

 秒も掛からず現象は終わり、そこには(えぐ)れた地面を残すのみであった。

 二体のジャイアントの姿は、当然のように塵一つ残ってはいない。

 魔石は回収できたのかは、ミュール様に後で聞くしかないだろう。

 俺の頭に痛みが走る。

 バルザックさんの仕業だ。


「マルク! てめぇ何しやがる」

「ごめんバルザックさん。魔力がもったいなくて……つい」

「ついじゃねぇ。絶対ついじゃねぇだろう。俺の獲物ごと吹っ飛ばしやがって」

 

 もう一発、拳が飛んできた。

 流石に見ていれば、避ける事が出来る。


「やっぱりマルクとは、いっぺん方ぁ付けねぇと駄目だな……覚悟しろ」

「ちょっと! バルザックさん? 目が本気なんですけど。助けてください。ドムさん。テガーさん。助けてー」


 砦へ向け、全力で走る。

 逃げながらも、警戒は怠らない。それはバルザックさんも同じだろう。

 バルザックパーティー全員が、バルザックさんの後ろを走って付いてきている。

 これでは、パーティーの次の獲物が俺みたいではないか。

 サラスさんに至っては、走りながらケラケラ笑っている。

 空からも、クスクス笑い声が聞こえる。

 全力の逃走劇は砦まで続いた。道中に、モンスターの影は一つもなかった。

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