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ゾンビライフ  作者: ひろ
5/5

変化

僕が子供だったころに熱を出した時、決まって同じ夢をみた。

大きな岩に押しつぶされてもがいている夢だ。助けを呼んでも誰も来ない、真っ白な空間にただ一人で

岩に押しつぶされている。物凄い重さだった。

熱の苦しさ、頭痛。

そんな事よりも僕はこの夢をみるほうが嫌だった。


僕はゆっくりと目を覚ました。

時間はわからなかったがすでに夜は明けて、明け方のような明るさと静けさだった。

どのくらい寝ていただろうか。重い体を起こすと、服と地面がどす黒く染まっているのに気付いた。

なぜか僕は冷静だった。

僕は奴らに噛まれて死んだ。そう思っていた。

しかし、死んだような実感はないし自分の意思がちゃんとある。

おかしい。

良くあるゾンビものは噛まれたら死に、同じようにゾンビ化して人を襲う。自分の意思などあるわけはない。

しかし僕は違っていた。

辺りを見渡しそばの電柱にぶつかり止まっている、車のミラーを覗き込んだ。

「うわっ!!」

とっさに後ろに後ずさった。もう一度、恐る恐る覗き込んだ。

そこに映し出されたのを奴らと同じ、まったく生気の感じられない目に、体温が低いのか肌が真っ白だ。

他には噛まれたところから顔に向かって紫の血管が何本も浮き出ていた。

間違いなく奴らと同じになっていた。

いろんなことが頭をぐるぐるとまわり、涙が出そうだが出ることはなかった。

その横を僕の存在に気づいていないかようにゾンビが通りすぎる。

「間違いなく奴らと同じだ。」

そう声に出したつもりだった。

ア゛ア゛ァ

しかし、実際にでていたのは呻き声だけだった。

人間の言葉が喋られなくなっていた。

十分見た目も人間離れし恐ろしいが、何不自由なく使っていた言語をしゃべる事が出来なくなる。

恐怖を感じた。


今の状態を整理してみた。

見た目は完全に奴らと同じだが意思はあるしある程度走る事は出来た。当然だが息も切れなかった。

喋ることはできない。

まだ確認出来てないこともまだ、いくつかあるはずだ。


周囲は人のいる気配はなかった。

あまり変わっていないようにも見えるがそこら中が血の海になっている。

恐らく襲われて人間がゾンビ化し、そこらを徘徊してるはずだ。

ゾンビ化する前の人間の死体もいくつかあったが、そのうち動き出し人を襲うだろう。


しばらく途方にくれ歩いていると車のセルを何度も回す音が聞こえた。

遠くだったがクリアに聞こえる、耳も良くなっているみたいだ。

徐々に車に近づくと妙にお腹が空いてくる感じがした。良いにおいがする。

足音を無意識に殺していた。

車のエンジンがかからないと諦めたのか男性が出てきた、僕は走り出していた。

男性は気配に気づいたのか、後ろを勢いよく振り向き僕を見た。

しかし遅すぎた、逃げようとする男性に僕は躊躇なく、後ろから飛び掛かり首筋に噛みついていた。

おいしい・・・

今までこんなおいしいもの食べたことがあっただろうか。

夢中になって貪り食っているとふと、遠い昔の事のようにあのカレーの味を思い出した。

血に染まっていく男性に覆いかぶさり、貪りつく僕の目からは涙が流れていた。


そうだ。

僕はもう人間ではないのだ。










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