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219.魔導師として

「ただいま戻りました。」

「怪我はないか?大丈夫だったか?」

「は?」

離れの扉を開けると、そこに馬鹿皇子がいて、いきなり質問攻めにあってしまった。

「魔物も不審者もいませんでした。結界にも異常はありません。」

そう言いながら馬鹿皇子を玄関に残して居間に戻ろうとすると、

「さっきはごめん。ほんとにごめん。居間で寝ていたこのはをベッドに連れて来たのは俺。たまたまこのはが寝返りを打ったときに俺の体に腕と頭が乗って、そのまま俺が抱き寄せたらあんな感じの姿勢になって。だからこのはが俺の上に覆い被さっていたのも俺の仕業です。ごめん。その、体を触ったのも、己の欲望に負けました。ごめん。」

「は?」

・・・よかった〜私が押し倒したんじゃなかった!セーフ!ってよくないでしょ。寝ていた私をベッドに連れて行った。まあ、これは優しさとして目を瞑ろう。寝返りを打った私を自分の上に覆い被らせる?は?欲望に負けたって何よ!こっちだって・・・。こっちだって何?は?・・・私は大本山を守らなきゃいけないの。桜華様の隣にはずっといる事はできないの!それに私は魔導師なんだから、命に変えても魔物から人々を守らなければいけないの!馬鹿皇子といるとその覚悟が揺らぎそうになる。死ぬのが怖くなってしまう。ダメだ!私は何ともいえない怒りが込み上げ、

「私自身と、矜持を守る為にも、桜華様とは2メートル以上離れて行動するようにします。」

「は?何だよそれ。悪かったって。」

「私は警護として雇われましたが、娼婦として雇われたわけではありませんから。」

と言って居間に戻った。私が中途半端な態度をとったから馬鹿皇子も勘違いしたんだ。私は妃にはなれない。これ以上距離が近くなれば魔導師としてやるべきことを忘れてしまう。私は洗面所で学校の制服に着替えて、荷物をまとめた。

「このは、悪かったって。ごめん。」

「安心してください。私の結界は完璧です。私の勤務時間はあと20分です。それまで別館の屋上から警護を致します。その方が敷地全体が見渡せるので効率がいいです。」

「だからごめん。」

「別に桜華様が謝らなくてもいいんです。私が桜華様といると、魔導師としての使命を忘れそうになるんです。決心が鈍ってしまいそうになるんです。」

「使命ってなんだよ。決心って何だよ。」

・・・魔導師として生き、魔導師として死ぬ事。そもそも魔導師としての力は私が努力して手に入れたわけではない。この力を持って産まれたということは、私は魔導師として人々を魔物から守る為に産まれて来たということだ。これが私の存在意義だ。こんなこと馬鹿皇子に言えるわけもなく、

「ちょっとこの2、3日勉強のしすぎで頭が沸いていました。明日からも仕事頑張りますのでよろしくお願いします。では、失礼致します。」

私は回れ右をして急いで離れから出て行った。

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