表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
徒花事案報告ファイル  作者: 時雨オオカミ
徒花事案報告ファイル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/109

ある貴族少女の日記 4

 編入生さんったら、何度注意をすれば気をつけていただけるのかしら?

 さすがに一週間も経たずに徒花事案と十度も遭遇するだなんて頻度が多すぎますわ。


 ルールを守って生活をしていれば、ランダム発生のものでもある程度回避できますし、そもそも遭遇しない平和な一日を過ごすことだってありますのに。

 あの人自身が迂闊なだけなのか、それとも惹き寄せてしまう体質なのか、不明ですけれど、きちんと検査をしたほうが良いのかもしれません。


 たまに惹き寄せてしまう体質の人がいますし、そういうかたは特に神聖魔法の修練に真剣に取り組まなければなりません。


 この学院や各地の対処のできる地にて徒花事案を収集しているとはいえ、外の世界にもそれらが存在しないわけではありません。立ち入りが禁忌となっている場所などが特にそうです。

 自ら赴くことがなくとも、ああいった場所に呼ばれてしまう場合もありますし、外で自然発生した徒花事案がどこかの地域へ収集される前に人間に危害を加えるだなんてこともございます。

 普通なら被害が大きくなる前に聖女や聖騎士が対処に赴きますが、その間に遭遇することだってございます。


 ただ、編入生さんはきっと修練はお好きではないでしょう。反発されるのが目に見えているので憂鬱ですね。


 昨日は晴れの日でしたのに水たまりに飛び込もうとしているところをお見かけして、慌てて手を触れてしまいました。「水面の穴」の可能性がある以上、晴れの日の不審な水たまりに足を踏み入れるどころか、ジャンプして飛び込もうとするだなんて自殺行為に他なりません。目を疑いました。


 わたくしに見られていたことに気がついたあのかたはかなり慌てておられましたが、あのかたがはしたなく、品のない庶民丸出しの行為をするのは今更ですしなにも思いませんわ。本当ならご指導してさしあげたいところですけれど、悪意を持って返されると分かっていてお世話を焼いてさしあげるほど優しくはありませんわ。


 編入してすぐに死なれると管理責任を問われそうなので、多少助けてさしあげているだけですのよ。


 どうしようもない理不尽な死が彼女に降りかかるまでは、ですけれど。



 本日はとても疲れてしまいました。

 あの子ったら、よりにもよって王太子殿下と、その他取り巻きの騎士団の息子さんや、執事の子や、幼馴染の子達を神聖魔法学科の校舎に連れ込んでしまわれましたの!


 気を回すこちらの身にもなってくださいませ。

 先生がたも驚愕していらっしゃいました。お互いにお疲れさまでしたね。


 あの子たちは気づいていなかったでしょうけれど、神聖魔法学科の皆様総出で護衛しておりました。

 男子寮の寮長さんもご挨拶に向かわれましたし、わたくしも寮長代理としてご挨拶をしてからは近くから護衛しておりました。


 それにしても、殿下はあの子に騙されて寮長を追い出しているからか、代理のわたくしにも随分と態度が険悪でした。あの子がまだなにかおっしゃっているのかもしれません。


 やはり直接護衛をしに行ったのが男子の寮長で正解だったのでしょう。

 ただ、あの子は喜んでいましたけれど、取り巻きにはよく思われていなさそうでしたね。未来の聖騎士候補ですから、地位が問題ないのでなにも言えない様子でしたけれども。


 男子寮長さんによると、それでもあの子たちの行動を縛りすぎるわけにもいかず、多少の徒花事案との接触を許してしまわれたそうでした。


 ええ、ええ、自ら炎の中に飛び込むものを止めようとすると、止める側も危険な目にあってしまいますから。仕方のない話ですわ。

 たとえ相手が地位の高いかたであろうとも、徒花事案の前には塵芥(ちりあくた)と同じ。

 この学科内で亡くなられたのであれば、等しく記憶洗浄儀式魔法の対象となります。それがたとえ、この国の王太子殿下であろうともです。

 うふふ、こんなことが世に明らかになればこの学院の皆さんは反逆者扱いにでもなりそうですね。


 そうです、亡くなられるんです、皆さん。

 今も行方知れずですけれど、きっと帰っては来ないでしょうから。


 だって、あの招待状を受け取ってしまったのですからね。「どこからかの招待状」はほとんどランダムで行き先が決定されていますが、ひとつだけ特定が可能ですの。それは、封蝋印の形が赤い薔薇の見た目をしているときです。

 それは真紅の貴婦人の開催する「喜劇の夜会」への招待状。

 普段のお茶会とはまるで違う、本物の血に塗れた勝手気ままな復讐劇が開催される長い夜のはじまりです。


 だから帰ってくることはないでしょう。

 寮長のお姉様が望んだものでないのなら、真紅の貴婦人の独断によるものなのでデメリットはございません。ちょっと後始末が大変なくらいでしょうか。死の穢れがたくさん発生しますからね。


 ああそれと、あの子たちが亡くなる前に本日遭遇していたものをご報告しておきませんとね。


 あの子、「キューピッドベンチ」のことを恋が成就するおまじないのベンチ程度にしか思っていなかったようで、あそこで王太子殿下と「死ぬまで一緒にいる」だなんて誓いを立てていました。

 たとえ心変わりをしても誓いを絶対に撤回できない呪いのベンチですのにね。


 そして、「善良な貴族の像」に彼らとの関係を惚気(のろけ)て、気を回した善良な貴族の像によって召喚された「親切なツバメ」に結婚指輪らしきものを贈られておりました。


 学科内では「階段を落ちる首」にびっくりして階段から足を踏み外していましたし、放課後には人の重大な秘密をバラす「晒しあげ放送」の餌食になっておられましたね。


 晒しあげ放送では、彼女が寮長のお姉様にいじめなんて嘘。王太子殿下を取り上げてやった! なんて本音で嘲笑っている場面が本当に録音されていたかのように流されておりました。


 放課後に聞くには実に不愉快なものでしたが、あれはそういう徒花事案ですので仕方がありません。


 そして「悪さをするオオカミ」と思わしきかたから受け取った赤薔薇の封蝋印がされた「どこかへの招待状」を受け取り、本人と取り巻き全員で覗き込みながら開いたことで消失したそうです。

 授業を終えて自室に戻ってから、夜間に立ち入り禁止となる校舎内へ取り巻きの皆さんとともに入っていき、そのときに「悪さをするオオカミ」があの招待状を持って近づく姿を見た人がいたそうですわ。だから、全員で見てしまったのでしょう。


 赤薔薇の封蝋印が出現したということで、現在は薔薇園への立ち入りが禁止されています。

 さて、明日はどんな惨状になっているのでしょう。


 お片付けの際に新入生の子たちが吐いちゃったりしてしまうかもしれませんし、多めにケア用品を用意しておかなければなりませんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここまで遭遇できるのは凄い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ