F-01-24 幻惑売りの女
◯F-01-24 幻惑売りの女
・発生場所◇位置不特定
・危険度 ◇C
・詳細
籠を持った女性の姿、または移動販売の店と店主として学院内に現れることがある。
赤地に白文字でイデアと書かれたシンプルなマッチ箱を販売しており、このマッチで灯した炎の中にマッチを擦った人間にのみ見ることのできる幻惑を発生させる。
幻惑の内容はマッチを擦った人間の理想や、望む未来などその人にとって魅力的なものであることが多い。
マッチは販売されているものであり、売買を行わなければ手に入れること不可能である。
マッチを所持している生徒は即刻教員による事情聴取と、所持品のチェックが行われるため、原則学院内ではマッチ箱全般の所持が禁じられている。
・補遺
このマッチで火をつけ、延焼した場合異常性が拡大する特性が存在することが明らかになっています。
見えないはずのものが見えたり、都合の良い未来のようなものを見た場合自己申告することを推奨します。
幻惑には依存性が存在します。
最初期はマッチを擦って炎を見つめるだけで済みますが、だんだんと依存性が高まり、もっと大きな炎になれば理想の世界に行けるのではないかと考えるようになり、深刻な火災を引き起こす恐れがあります。決してマッチを購入してはいけません。
それは幻惑です。
現実ではありません。
また、マッチの幻惑によりテストの問題内容を見たと証言した生徒が全ての教科で満点を取る事案が発生したことから、マッチには未来視、または現実改変能力があるのではないかと推測されており、危険度ランクが変化する可能性があります。
・事案1
マッチを隠れて所持していた生徒が魔法薬学実験室の火種に使用。同グループに所属していた生徒二名と様子を見に来た教師一名の視界に幻惑が発生しました。
生徒によると、購買の店員が一定時間普段の店主ではなく、赤い服に身を包んだ女性に代わっている状態となっていて、マッチの購入はそのときに行ったようです。
規模が小さく、鍋の火種として使用されたのみで被害の程度が低かったため、謹慎などはなく、生徒には当該徒花事案の調査レポート5000文字の課題提出が求められました。
・事案2
青薔薇棟の談話室にある暖炉の火にマッチが混入しており、集団で幻惑が発生する事案が起こった。
そのため、通常の炎にもマッチが混入すると異常性が拡大することが判明しました。
マッチを混入させた人物は発見されていません。
・事案3
神聖魔法学科内で火災が発生しました。
当該生徒は精神錯乱しており、最終的に自身にも放火。死亡しました。
周囲の目撃情報によると、当該生徒は炎の中に見える故人と会うために炎を拡大したかったのだと発言していたようです。
・補遺2
火災発生の際、煙を多量に吸い込んで火傷をした生徒がその後、炎を見ていない状況でも幻惑を見ていたことが判明しました。
当該生徒がその後も無事であったことには、精神力の強さ、幻惑を幻惑として強く認識し、現実ではないことを理解して誘惑に負けない頑強な意志があったことに由来すると思われます。
当該生徒の証言は以下です。
「幻惑だなんてすぐに分かりました。
え、もっとちゃんと会いたかっただろう、どうして炎の中に飛び込む誘惑に負けなかったのか、ですか?
確かに炎の中でなくとも幻惑は見えてましたし、何度も一緒にいようって誘われました。多分炎の中に飛び込めば一緒になれたんでしょうけど。
だってあれは偽物ですからね。
本物のお母様なら、僕のことをきっと褒めて、学院を卒業して、家に帰っておいでって言ってくれるんです。
幼い頃に亡くなったお母様が、今の僕を見て立派に育ったねって言ってくれないわけがないと思いませんか? 自分のところにおいでなんて言いません。絶対。
そう思ったら腹が立っちゃって……。
先生にはちゃんと相談しようと思ってましたよ。
ただ、無視しないで自分で拒否くらいはしておきたいと思って保留にしていました。すみません」




