F-01-02蒼白の姫君
◯F-01-02蒼白の姫君
・発生場所◇位置不特定
・危険度 ◇S
・詳細
地に伏せた百合の花のごとく美しい蒼を基調としたドレスに長い銀の髪。蒼天の瞳を持った女性の姿をしている。
伝承における主神。愛と平和の女神シアンリリィに容姿の特徴が酷似しており、愛と平和の女神を自称しているが、言動、行動が邪悪であり別人であるとされている。
一見愛情深く、慈悲のある人柄だが、彼女が徒花事案であることを忘れてはならない。
神聖魔法学科の区域内にてランダム発生する青色の百合が当該徒花事案への道標となっている。
青色の百合を視界に入れたまま一歩踏み出すと、靴の中に突然水が満ち、不快感に驚いている間に景色が変化。自ら川に踏み込んでいたことに気がつくこととなる。
川の周囲は約一キロメートル程度が百合の花畑となっており、川の付近に蒼白の姫君が出没する。無数の百合にジョウロ(市販のものだと推測)で水をやっている彼女は積極的に話しかけてくる。
この異空間に踏み入れた時点で蒼白の姫君と話すまでは脱出が不可能となっており、彼女が人間を発見すると、その場の百合を椅子やテーブルへと変化させ、着席を促す。
テーブルの上に出現する紅茶やケーキ、スコーンは摂取した者の健康、回復力を促進させ、三日間程度の精神汚染抵抗を得ることができる。
菓子のおかわりは異常な回復力を得て身体に悪影響が出やすくなるため非推奨。(事案1にて表記)
蒼白の姫君との会話は、真紅の貴婦人に関連する項目を避けることができれば安全に終えることが可能。
彼女との会話が終わると、蒼白の姫君から直接制服の胸ポケットに、あるいは髪飾りとして枯れない青い百合をプレゼントされることがある。
※ 徒花事案に辟易としている生徒や精神的に沈んでいる生徒、大怪我をしたことにより恐怖の感情を持って生活している生徒がプレゼントをされるケースが統計的に最も多いと言える。
この青い百合はとても小さいサイズで他人が見えづらい位置になるため、学院で青い百合を所持している生徒がいた場合は即刻取り上げ、花を青薔薇棟の大水槽の中に沈めることを推奨している。
花を所持したままであると、花の持ち主の周囲の人物、親しい人物から順番に災難に見舞われ、日数が経つごとに災難の内容は激しくなり一週間以内には重大な死亡事故に繋がるため、不自然な事故が目立つ場合この徒花事案が関与している可能性を考慮する必要がある。
花の持ち主がなおも激しく怯えて日常を過ごしていると、最終的にもう一度青い百合の花畑へと踏み入れることとなり、その後は二度と戻ってくることはない。
調査によると、前回行方不明になった人物の所持品が、蒼白の姫君の支配する花畑の、新しく植えられた百合の花の近くに落ちていたことから、被害者は花に変質された。または花の栄養にされたと推測されている。
・訂正事項
蒼白の姫君への軽いインタビューの結果、加護(=青百合)を与えた人間が怯えて外を怖がっているようだから、ずっと安全な場所で甲斐甲斐しくお世話をしてずっと生きていてもらいたい、との回答があった。(真紅の貴婦人と違い、彼女の百合畑は時間制限らしきものが存在しないため、インタビューが行われたことがある)
彼女の恐ろしいところは、それらが全て善意で行われていることだろうか。
彼女が世話をする百合の花畑の中のいくらかの花は元々が人間だったのかもしれない。
・補遺
学院内で青い百合を見かけた際はその場で留まり、視界を閉じる。または視界から青い百合を外してから歩み出してください。目を閉じて振り返り、青い百合に背を向けてその場を去れば花畑に誘引されることはありません。
・注意事項
彼女の前でクリムローズや赤薔薇に関する話題を出すことを禁じます。
彼女の善意を強く否定することは推奨されません。機嫌を損ねれば死亡率が跳ね上がるのは真紅の貴婦人と同様です。
彼女のほうから「ローズの薔薇よりも百合のほうが綺麗でしょう?」などの質問があった場合、否定することは許されません。必ず蒼白の姫君のほうが優れている、百合のほうが素晴らしいと肯定してください。
・事案1
百合の花畑の会談にて、誘引された三人のうちの一人が出される菓子を三度おかわりをし、完食後に身体の苦痛を訴えました。
他の二人が蒼白の姫君にどうにかしてやってくれと話しているうちに、身体の苦痛を訴えていた一人は内側から破裂して死亡。
一部始終を証言した残り二人は嘔吐を繰り返し、精神錯乱の末、食事を拒否し始めて一週間程度で餓死をしました。通常、死亡者の記録を揮発させる目的で実行される記憶洗浄儀式を個人に対して行使しましたが、二人の精神的外傷は回復しませんでした。
・インタビュー記録
中略
Q.この学院にいらっしゃる理由があれば教えてください。
A.外の世界は私のおかげでとっても平和! いいことだわ。でもね、平和が当たり前になるとお祈りをしてくれる人は減ってしまうでしょう? 私の存在意義ってなにかしら……ってすごく不安になってしまうのよ。
だからね、私は私に必死に祈ってくれる人たちのいるこの学院にいるの。必要とされてるって実感がしやすくて、怖がる子たちを助けて感謝されるのは気持ちいいことだもの!
私の手を取らなかった子たちだって、最後には私に祈るのよ。助けてくださいって。素敵でしょ?
中略
・注意事項2
彼女は主神シアンリリィではありません。
彼女はシアンリリィを名乗るだけの徒花事案です。それを忘れてはなりません。
主神へ疑問を覚えることほ不敬です。このような邪悪な存在と同一視することは禁じられています。
彼女に対する、善意に見えるだけ蒼白の姫君のほうが性質が悪いなどの悪口は控えてください。日常の些細な悪言も知られる可能性があり、出会った際に質問の形で問いただされる事例が存在します。




