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傷付かない恋

「イタっ……」

調子に乗って慣れないヒールの高いパンプスを履いてきてしまったから、右足の指先に激痛が走った。


「リンネ、大丈夫?」

突然しゃがんで足を抑える私に、瞬もかがんで私の足に触れた。

「軽い靴ずれだと思う。遊園地にこんな靴履いてきた私がバカだったんだよ。ちょっとそこのベンチに座ってれば回復するよ、きっと」

「オレも一緒に座ってようか?」

「大丈夫。少し休めばすぐに良くなるから。瞬はバカ母を見張ってて」

見張ってると言う言葉に、瞬は少し笑って、OKとウィンクして拓馬とバカ母の後を追いかけて行った。


ベンチに座って靴を脱いでみると……。


「あちゃー、思った以上に足が腫れてる……。これはもう歩くの無理かな?」

せっかくの拓馬との初デートだったのに。

拓馬と初めて二人きりになれたのに。

遊園地はそんな私の気持ちを置いてきぼりでたくさんの人で賑わっていた。

思ってみれば……。

私はもう何年も前から、ずっとずっと拓馬の事が大好きだったけど、それは一方的な片想いで。

それはそうだよね。

そんな風に好きになった相手は乙女ゲームの中のキャラクターなんだから。

ゲームの中のキャラクターを好きになるってずるいよね?

絶対に傷つくことのない片想い。

これは本当に恋と呼べるのかな?

傷付かない恋なんて、恋じゃないのかな?


それでも……。

私は……、毎日毎日、バカの一つ覚えのように勉強勉強って言う糞みたいな学校で心が折れそうな時も、拓馬がいてくれたから。

確かに実物の無い人だったけど、拓馬の存在のおかげで私は毎日を耐え抜くことができた。

私は拓馬が好き。大好き。


だけど……。

この世界でリアルに拓馬が存在している世の中で、どうしていいか分からない。

意中の人に自分から思いを伝えてはいけないなんてルールが無かったとしても、自分から想いを伝えることなんてできない。

そんな勇気どこにも無い。


「リーンネ」

気が付くと、目の前に拓馬がいた。

「靴ずれしたんだって?大丈夫?」

心配して来てくれたの?

胸が高鳴る。

「リンネと一緒に観覧車乗りたかったんだけど、厳しいかな?」

観覧車。

乗りたかった……。

乗りたい。

「だ、大丈夫、歩ける」

拓馬と観覧車に乗ることができるなら。

痛みをこらえて立ち上がった私だったけど、想像以上の痛みが襲う。

せっかくの観覧車……。

泣きそうになる。

すると、信じられないことが……。


持ち上げられる感覚。

宙に浮いたような浮遊感。

かがみこんだ私を拓馬がお姫さま抱っこしてくれたのだ。

「た、た、拓馬」

「このまま一緒に観覧車乗ろう」


ああ、神様ありがとうございます。

私をこの世界に連れてきてくれて。

先のことはまだ分からない。

それでも、今はこのままで、このままの時間を楽しんでいたい。

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