盗賊
薄暗い通路に7人の一行が息を潜めていた
この通路は上層階から階段を降りてきて狭い通路から、かなり広い通路に出る場所だ
少し先に人影を一早く見つけたマリルはガイアスに告げた
「まずい…ローグだ…」
ローグは通常、街道や森に潜み旅人や行商を襲い金品を奪う
しかし、この迷宮にいるローグは更にたちが悪い
金品を奪うのは勿論だが、装備品も全て奪い、何より人殺しを好む
いつの間にか、この迷宮に住み着き、何処かの階層にアジトがあると噂が流れていた
そして、レインの父マッシュはこの階層で何者かに襲われ帰らぬ人となった
レインは無言でガイアス達の動きを待っていた
父マッシュがこの階層で襲われていた事を思い出し強く拳を握っていたのをミリアはわかっていた
「もしかして、父さんを襲ったのはあのローグ?」
レインはガイアスに聞いてみた
「いや…マッシュを襲ったのは魔術師だった、しかもかなりの使い手だ、あんな盗賊風情にマッシュが負けるわけ無いだろ?」
レインは黙っていた
「マリル、人数はわかるか?」
ガイアスが聞く
「待ってください……
6人…いや7人ですね」
マリルは真っ直ぐ前を向いたまま答える
「わかった、ブラハムちょっと頼みがある」
ガイアスは何か作戦があるようだ
「なるほど…それなら、わかりました」
ブラハムは納得した様に答える
ガイアスは全員の前で作戦を伝えた
それは極単純な作戦だった
「ブラハム…頼む」
ブラハムは静かに頷くと同時に他の皆は後ろを向いた
「魔術の神リヴェラよ、我が求め応えよ……」
小さな声でブラハムが呪文を唱える
するとブラハムの杖が光だし光の玉が現れた
それは、ゆっくりとローグ達の元に向う
ローグ達は全員、その光が何なのかを確かめる為に目で追った瞬間、その光が弾け閃光が周辺を包む
「今です!」
ブラハムは叫んだ
それを聞いた全員はローグ達の元に走る
ブラハムが放った光にローグ達は目を眩ましてしまっていた
ガイアスの作戦は成功した
ローグ達は動きが早い、しかも武器には毒が塗られている事が多く、かすり傷一つでも致命傷になるのだから、真っ当に正面から戦う事は危険だった
だからブラハムに目眩ましの魔法をお願いしたのだ
レイン達はローグが眩んでいる隙に間合いに入り次々と倒していく、ミリアとフィーネはローグの武器で毒になった仲間がいないか確認をしつつ、ローグの動きを止める魔法を使っていた
ローグ達は足を動かす事も出来ず、ただ闇雲に武器を振るうしかなかった為、レインやガイアス達は容易くローグを倒す事が出来た
「よし、全員倒したな」
ガイアスが周囲の安全を確認し言った
「ブラハム流石だねー、あたしもあれをされたら何も出来ないよ」
ミレーユはブラハムの肩に手を添えてみんなの顔を見ていた
「いえ、私は光の魔法を使っただけですよ」
ブラハムは淡々と答えた
そんなブラハムをミレーユは笑いながら肩を叩き、笑っていた
レインは戦闘後にすぐミリアのそばに駆け寄った
「大丈夫?怪我は無い?」
ミリアはクスクスと笑いながらレインの顔を見る
「な、何?」
「だって、レインったら凄く心配そうな顔をしているんだもの」
「そ、そりゃ心配するさ…」
レインは照れながら答える
「大丈夫よ、ありがとう、でもそんなに心配しなくても平気よ、少しなら自分の事は守れるから」
ミリアはレインの優しさが嬉しかった、でもその優しさが危なかっしくも思えた
ガイアスとミレーユはローグの死体を調べていた
ミレーユは3体目の死体を調べた時に何かを見つけてガイアスを呼んだ
ミレーユの手には小さな鍵とメモ紙があった
「どこの鍵だ?」
ガイアスがつぶやくとミレーユが答える様に口を開いた
「おそらくこのメモ紙に書いている事に関係していると思うわ」
メモには殴り書く様に文字が書いている。
(物はまとめて置いた、いつもの場所だ)
「いつもの場所ね…それが何処なのかだが、そもそも物が何なのかわからんな」
ガイアスはどうしたものか考えていると、横にいたミレーユがニヤニヤしながらガイアスに言う
「わからないなら確認しなきゃだね、どうせ盗賊なんだし、冒険者の持ち物あたりだと思うけど、もしかしたら掘り出し物があるかもよ」
その言葉に反応したのは意外にもブラハムだった
「魔術書なんかもありますかね?」
その言葉に全員が笑った。
「んじゃ、その部屋を探すかね」
ガイアスが言うと皆んな装備を整え歩き出した。