4-8.ドラゴン族のSランク!?
ウインと試合をした翌日···。ボクは目覚めると、ベッドではなくて国の外にいた。
···えっ!?ど、どういう事!?
「···おはよう。···始めるよ」
「えっ?お、おはよう。ウイン。も、もしかして···?」
「···ん。···まずは走る」
「ちょ!?ちょっと待って!着替えないと···、って!?着替え終わってる!?」
「あぁ~、それはオレがやったぜ」
「サム!?」
待て待て待って!状況が掴めていない!昨日確かにウインの鍛錬に付き合うって事になったのは覚えてる。
どうやって部屋から···、あっ!?サムが忍び込んでボクとテオを連れて転移したんだな!?
そしていつの間にか着替えまでされちゃってるよ···。えっ!?下着まで!?サムがやったんだろうか?は、恥ずかし〜!!
「ん~~?うぇ!?な、なんだ!?ここはどこだー!?」
テオも起きた。テオも着替え終わってるよ···。テオは基本的に上半身裸なんだけどね。ズボンは部屋着じゃなかったから、テオもサムが着替えさせたのか···。
サムってある意味面倒見がいいんだなぁ〜。
「ん?なんだよ、ライ?ニヤニヤとオレを見やがって···」
「わざわざ着替えまでしてくれたんだね?」
「そ、それは!!ウインが早くしろ!って言うから仕方なくだ!お前やテオの『アレ』なんて見たくもなかったんだぞ!?」
「ちょっと!?大声で言わないでよぉ!?恥ずかしい〜!」
「ははは!お返しグヘェッ!?」
「···うるさい。···じゃ、始めよっか」
「は、はい···」
ウインはサムの脇腹を思いっきり突いて吹っ飛ばしたよ···。ウインの顔が赤くなってたから、黙らせようと手加減なしでやっちゃったんだろうなぁ〜。容赦ないわぁ〜。
鍛錬のメニューは以前ボクもちょっとだけやってへばっちゃった内容だった。
あれって、確かアキさんの息子さんたちがやってたメニューだった。遺産の知識であったから知ってるんだけど、1000年近く経ってるのに受け継がれてるんだなぁ〜。
メニューの内容は身体強化魔法なしでの走り込み、息を整えつつ魔力循環し、剣術の型を普通にするのと、ものすごくゆっくりと繰り出して型が崩れないように、そして確実に繰り出せるようにするんだ。あとは体術の型もやる。こっちはテオにちょっとだけ教えてもらったよ。
「···やった事あった?」
「うん。遺産の知識でアキさんの息子さんたちが考案したメニューだって」
「···ん。···代々伝わる鍛錬法。···これで『基礎』はだいじょぶ」
「うん。ありがとう、ウイン!でも···、明日からは早起きするから着替えとかは···」
「···ん」
良かった···。さすがに着替えだけはボクがやらないとね!
そしてサムの転移でボクたちの部屋に戻った。···う〜ん。これはちょっと···。
「あの〜、サム?」
「ん?どうしたんだよ?」
「なんでボクたちの部屋に戻ってきたの?」
「ハァ?決まってるだろ?この部屋はきれいだからな!」
「それって···、サムの部屋って···?」
「うっせえ!···オレが快適なんだからいいだろ!?」
「掃除してないんだ···。じゃあウインの部屋は?」
「お前···!?怖いもの知らずだな〜。見てないからそんな事が言えるんだ!ウインの部屋もゴミ屋ふぐぅっ!?んがぁっ!?」
「···黙れ」
これは···、聞いちゃいけない事だったようだね。またまたサムが吹っ飛ばされてしまった···。ちゃんとサムの着地点を計算していたのか、家具にはぶつからずに、転がっていった先にあった家具の角で頭を強打してたよ···。痛そ〜!!
「···じゃ、朝食」
「そ、そうだね···。行こうか···」
そうして頭を抱えてうずくまるサムを置いてきぼりにして、ボクとテオ、ウインの3人は部屋の外に出た。すると···、ちょうど隣の304の部屋から誰かが出てきた!部屋から出てきたって事は、この人もSランク!?
「···ん?あっ!?ウインさんじゃないですか〜!久しぶりですね~!それと···、そちらの方は?」
出てきたのは黒髪の人族の少年だった。特に身につけているものはなさそうだね···。もしかして、『武王』さんなのかな?
「···新Sランク」
「あ!あなたたちがですね!初めまして。僕はトルムって言います。一応『武王』なんて言われてるんですけど···。よろしくお願いしますね!」
礼儀正しい人なんだなぁ〜!好感持てるけど、これでじゃじゃ馬なの?どうしてそう言われちゃうのかな?まぁいいや!
「こちらこそ初めまして。新しくSランクになったライです。一応『雷帝』ってあだ名なんです。こっちはテオです!」
ボクは自己紹介してテオも紹介した。すると···、テオがなんか睨んでたよ!?
「テオ?どうしたのさ?」
「···お前、『人』じゃねえだろ?」
「えっ!?ちょっとテオ!?」
「お〜!さすがに見破ってきますか···。まぁ、ここなら人の目につかないからいいでしょう。ライさんに僕の本当の姿を見てもらいましょうか」
「えっ!?ほ、本当の姿!?」
「はい。それっ!!」
すると、ボクの目の前には黒いドラゴンが現れたんだ!!
「えっ!?ド、ドラゴン族!?」
「はい、そうです。黒竜なんです」
「で、でも···。テオみたいに人型の時に翼としっぽが···」
「あ〜、あれは幻惑魔法でそう見えてるだけです。···あんまり人族の前でドラゴン族って見せたくないんでね」
「そ、そうなんですか···。でも、テオは···」
「オレはこの姿で別に問題ない」
「そうですか···。それでいいんじゃないですか?じゃあ、翼を隠しますね」
そういってトルムは普通の人の姿に戻った。どこから見ても普通の人なんだよね···。
「ふう〜。さすがドラゴン族と一緒なだけあって、ライさんは僕の姿を見ても驚きませんでしたね?」
「あはは···。テオとはずっと一緒ですから」
「ライさんはドラゴン族に対してどういう事を思われますか?」
「···え?それはどういう意味ですか?」
「言葉の通りなんですよ。怖いとか···、そういったものですよ」
「いえ、ボクは特に何も思いませんよ。強いて言えば『カッコいい』···、かな?」
「カッコいい···、ですか?」
「はい。ボクが出会ったドラゴン族って、テオと金竜のレンちゃん、そしてトルムさんだけですけど、みんなカッコいいって思いましたよ」
「へぇ~!レンにも会ったんだね?」
「ええ。武者修行って言って魔獣を倒してました」
「レンらしいなぁ〜。僕も武者修行で冒険者やってるんだ。こっちの方が効率的だしね!」
「なるほど···。トルムさんはどんな神々の遺産をお持ちなんですか?」
「ダーツって言う特殊な矢とスマホってやつだね。ライさんは?」
「『賢者の遺産』と呼ばれる力と知識と神器です」
「へぇ~!『地上に封じられし遺産』かぁ〜!じゃあ、朝食の後で腕試ししない?」
あ〜···、やっぱりこうなるんだね···。
3人目のSランクは黒竜のトルムくんでした。前作ではほぼ滅ぼされてしまって1人だけになってしまった黒竜ですが、ちゃんと子孫繁栄しておりますよ。浮遊大陸には黒竜の集落もちゃんとあります。
前作から1000年近く経っていますからね〜。ちゃんと復興を果たしていますし、神器も継承されています。
さて次回予告ですが、テオくんとトルムくんとの腕試しの試合をやります。善戦するテオくんですが、トルムくんの鉄壁の防御を貫通する攻撃を食らわせた直後、トルムくんの様子が変わります。いったい何が起きたのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




