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【完結済】継承者ライ、荒廃した世界を生き抜く!  作者: ぷちきゅう
第3章 いろいろ(結果的に)寄り道しちゃって···

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3-16.高速飛行魔法を勉強しよう!

「テオは飛ぶ時っていつもどうしてるの?」


「それってどういう意味だ?」


「意識して何かしてるのかなぁ〜?って思ってね」


「何も意識してないぞ?まぁ、本能的にこうやって飛ぶってやってるだけだからなぁ〜。飛ぶのはドラゴン族の固有魔法だしな」


「じゃあ、鳥が空を飛べる理由って?」


「そんなの知らんぞ?考えたこともないなぁ〜」



 そういう事か。『飛べて当たり前』だから、揚力とかそんなの知らないんだ。


 え〜っと、アキさんの遺産の知識によると、高速飛行魔法は体の部位以外の、体の左右からちょっと離れた場所で魔法を展開して、そこに超圧縮した魔力を注ぐと『ジェットエンジン』という理屈で後方に強力な噴射を出して、その反作用で前に進むそうだ。


 この時、翼を展開していると揚力が翼にかかって浮き上がるって事らしいね。


 ただ、飛んでからも問題があるんだ。どっちに飛ぶか?ってのを翼やしっぽで調整しなきゃならないんだって。右へ行きたいのに曲がれないじゃ、話にならないしね。


 これは遺産の知識によると、ローリング(X軸方向)・ヨーイング(Y軸方向)・ピッチング(Z軸方向)の3方向の揺れの制御らしい。さすがにボクでも難しすぎる···。


 さらには高い場所は空気が薄いしものすごく寒いらしい。そこはエアコン魔法で自分の周囲を温かい空気で満たせばいいみたいだね。


 さらにボクには翼やしっぽがない。だから、それを魔法で創り出さなきゃならないんだって。テオよりも消費魔力量がかなり多くなってしまうみたいだよ。


 高速飛行魔法とは


・ジェットエンジン魔法

・エアコン魔法

・物質化魔法


 の複合魔法なんだね。これは難易度が高いぞ〜!?


 魔法はイメージが大事なんだよ。でも、ジェットエンジンなんて聞いたことも見たこともないもののイメージって···、あっ!?これは···、『飛行機』?


 アキさんの知識に鉄の巨大な鳥が飛び立とうとしている···。そして、一気に加速してゆっくりと飛び上がっていった。


 少しすると、飛んで行った同じ方向で反対側から飛行機が降りてきた!前を上に上げてゆっくりと···、着地して速度を落としていった···。


 これが···、高速飛行魔法のイメージなんだ···。



「どうした?ライ?」


「···え?あぁ、ゴメンね。今、遺産の知識がボクに高速飛行魔法のイメージを教えてくれたんだ···」


「そうか···。どんなイメージだ?」



 ボクはさっき見た光景を説明した。ちょっとわかりにくい部分もあったから、木の棒で地面に絵を描いてみた。···ヘタクソだけどね。



「とりあえずジェットエンジンって魔法を試してみようか?」


「そうだな!体から離れた場所で魔法を展開するんだったな!」


「そうだね。風魔法で空気を圧縮して火魔法を使うんだ!」


「よし!いくぞーー!」



 ドォーーーン!!



「うわっ!?ゲホゲホ!ば、爆発したぞ!?」


「ゲホッ!ゲホッ!そ、そういう事か!爆発させて後ろに爆風を吹かせて、その力で前に進んで飛ぶんだよ!」


「そういう事か!だったらさっきの爆風が広がらないようにして、後ろにだけ噴かせるイメージで···。今度はどーだー!?」



 テオが試してみると、『ゴーーー!!』というすごい爆音が響き渡った!!そして、その爆風の反作用でテオが今度は前へ一瞬で吹っ飛んだ!!


 ···これは調整が難しそうだなぁ〜。それと、大問題も見つかった。着陸ってどうしよう···?


 飛行機は車輪がついていた。でも、テオは普通の飛行魔法に切り替えたらいいんだろうけど···。そんな事を考えてたら、テオが怒ってたよ···。



「ライーー!!考え込んでないで助けに来てくれよーー!!」


「···あっ!?ごめんごめん!つい考え事しちゃったよーー!!」



 テオは全身ボロボロになってたよ···。回復魔法使って体は無事に···、なってるけどね。



「う〜ん···。思ってた以上に力が強すぎるなぁ〜」


「そうだね。さっきは1つだけだったけど、高速飛行魔法を使う時は左右に1つずつ使うからね」


「こりゃ、相当練習しないとなぁ〜。コツをつかまないと···」


「とりあえず大きな岩にもたれかかりながらやる?それなら吹っ飛ばされないかな?」


「それいいな!確かオレがいた湖の近くにあったぞ!」


「じゃあそこでやろうか!」



 テオがいた湖···。あそこも久しぶりだね。森に入ってみると、魔獣が少しだけいた。元の状況に戻りつつあるみたいだね。会うことはなかったよ。


 そして、湖の近くにあった大岩に着いた。さっそくボクもテオも岩を背にして座り、ジェットエンジン魔法を発動した!



「うぐっ!?こ、これ···、すごい力だ!も、もっと···、絞らないと···!あっ!?消えちゃった···」


「ぬぐぐ···、これ···、調整が難しいぜ···!」



 ちなみに練習中、爆風がボクたちから出てるんだけど、目の前にあった木は根元からことごとく折れてしまった。それだけ勢いが強いって事なんだなぁ〜。


 午前中でなんとか出力の調整はできるようになった。ただ、実際に飛ぶ時には2つ展開しないといけない。それを午後からやる予定だ。


 昼食を軽く食べたら、訓練再開だ!2つ同時、同出力で展開できるようにするのは大変だった···。



「うぐぐ···!あっ!?うわぁーー!?」


「ぐぬぬぬ···!うわっ!?あーーー!?」



 ちょっとでもバランスが崩れると勢いに振り回されて地面をゴロゴロ転がってしまうボクたち。


 これは飛ぶのに時間がかかりそうだよ···。



 そして2週間があっという間に経っちゃった···。



「じゃあ、初飛行の試験をするぞ〜!」


「テオ!気をつけてね!」


「わかってるって!昨日まであんだけ訓練したんだからな!任せとけ!」



 ボクもテオも、だいぶ調整ができるようになった。何度もバランスが崩れて転がされまくったけどね···。


 さて、今日はテオが初飛行に挑戦だ!最初は通常の飛行で空に浮かび、そこでジェットエンジン魔法を発動して高速飛行魔法を始める。この方法はテオのご先祖様であるリオさんが考案して実際にやっていた方法だ。



「よし!それじゃあ···、いくぜーー!!」


「気をつけてね〜!」



 テオが空中に浮かび、そして高速飛行魔法を展開した!周囲には『ゴーーー!!』という爆音を響かせると、テオは一気に加速を始めて上昇してあっという間に見えなくなってしまった···。


 ···あっ!?これ、テオがどこに行ったのかわかんないぞ!?墜ちてたらどうしよう!?助けに行けないぞ!?そう思ってると、スマホから通知が来た。



『フライトナビのアプリが使用可能になりました。他機の位置も表示できます』



 ···フライトナビ?よくわかんないけど、開いてみると、竜のマークが地図上を動いてた!えっ!?これ、もしかしてテオの位置がわかるの!?


 とりあえずテオはいろんなところを飛び回っているね。しかも速度と高度、昇降速度まで表示されている。


 かなりの速度を出してるようで、しばらくすると···、



『ドーーーーン!バリバリバリ!!』



 すさまじい音がした!雷が落ちたような音だよ!?何が起きたんだ!?


 テオの速度は1400km/hまで出ていた。···えっ?遺産の知識によると、『音速を超えたソニックブームが発生した音』だってさ。


 そして、テオはボクのところで高速飛行魔法をやめて降りてきたよ。



「気持ちよかったから、どこまで速くなるかやってみたぞ!」


「あ〜、そのおかげでものすごい音がしたよ···」



 このあと、ボクはソニックブームについて説明しておいたよ。テオは『よくわかんないし飛んでたら関係ないな!』って言ってたよ···。速すぎるのもよくないみたいだね。

 ジェットエンジンの理論を応用した高速飛行魔法は非常に高難易度な魔法です。アキくんがいた現代世界の技術の応用ですから、ライくんたちから見れば異世界の技術となるので、イメージがしにくいというのもあります。

 風魔法で空気を圧縮とありますが、実際のエンジンでも過給機ターボでやっています。空気を圧縮することで多くの酸素を取り入れて爆発させるためですね。

 ちなみに冬場は燃費が上がるのは気温が低いと空気の密度が上がるので、体積当たりの酸素量が増えて効率が上がるのと、冷却水の冷却効果が上がるためなんです。逆に夏は空気の密度が下がるので燃費が悪くなります。


 今回の練習で高速飛行魔法は大方使えるようになりましたので、浮遊大陸にも行くことが可能となりました。だいぶ先ですが行く予定ですので、ご期待ください。


 さて次回予告ですが、ライくんも飛ぶことができるようになりました。ただ、別の方法でって条件付きですけどね。人が空を飛ぶのは難しいようです。

 そしてマイカ村からレクトの国へはテオくんの高速飛行魔法で飛んでいくことにしました!ついにレクトに到着しますよ~!


 それではお楽しみに~!

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