3-8.暴走する賢者!?
「ライ!そろそろ休憩しようぜ!」
「そうだね。もうお昼だし、降りれそうなところで降りて!」
「おう!」
ボクたちはボードの町を出発して、東へ向けて飛んでいた。
目的地は『レクト』の国。ギルドの中央本部もあるというところだ。
どうも、ボクたち以外にも神々の遺産を持ってる人がいるみたいなんだよね。どんな人なのか気になるので向かってるんだ。テオだったら2日ほどで着くってエールさんは言ってたね。
降りた場所は森と森の境目、つまり川の岸辺だった。いつも川岸ばっかりだけど、森の中に降りても見通し悪いし、魔獣が多いからね。川岸なら横方向に逃げれるし、小さな川なら飛び越えてしまえばいい。
テオが川岸に着陸したら、すぐにシートを敷いてお昼の準備だ。今日は久しぶりにお肉の串焼きだ!
「お〜!?ライ、わかってんじゃんか!」
「お魚ばっかりだったから、肉が恋しいんじゃないかな〜?って思ってね。ボクも食べたかったんだよ〜」
「魚もうまかったんだけどな!毎日同じだと、さすがに飽きるからなぁ〜」
そうだよね。毎日いろんな食事の方が飽きないもんね。無限収納カバンにはまだまだたくさん食材もあるし、出来たての料理もたくさん入ってる。
スマホで中に入ってる一覧が見れるんだけど···、数が多すぎたんだ···。
一応ジャンル?ってもので分類されてはいるんだけどね。中には『ガーデニング用資材』なんてものまで入っていたよ···。これ、何に使うんだろうね?
さて、串焼きは上手にこんがり焼けたので、おいしくいただきました〜!ホント、この肉焼きセットってアイテムは万能だなぁ〜。
アキさん。本当にいいプレゼントをくれて、ありがとうございました!
昼食後、またテオに乗せてもらってさらに東へ向けて飛んだ。このペースで2日だったら、徒歩だとどれぐらいかかるんだろうね?10日以上はかかるんじゃないかな?
それだけ歩くって事は、魔獣との戦いの危険が大きいね。ボクはこうしてテオに乗せてもらって旅ができるけど、他の人は厳しいよなぁ〜。
飛んでいると、景色がゆっくりと流れていく。そうするといろんな事を考えちゃうんだよね。でも、こうやっていろんな事を考えるのも大事だと思うんだ。
いろんな事を考えていると、いつの間にか夕方になっていた。
「ライ?ず〜っと黙って考え事してたみたいだけど、そろそろ今日のキャンプ地を決めないといけないぞ?」
「···えっ?···あっ!?ご、ごめん!いろいろと考えちゃってたよ〜!今日の宿だね。え〜っと···。このあたりは魔獣が多いなぁ〜。もうちょっと飛ぼうか?」
「だったら目の前の山にするか?」
「そうだね···。うん!そこは魔獣がいないよ」
「よし!じゃあそこで今日は休むぞ〜!」
もう日は暮れかかって、だいぶ暗くなっていた。夜の飛行は周りが見えにくいから危ないしね。
そして山のふもとに降り立った。···なんだろう?卵が腐ったようなニオイがするけど?
『ライくん!そこにはめっちゃいい温泉があるよ!』
「···えっ!?アキさん!?」
「どうした!?ライ!」
「テオ、遺産の知識が···!」
「なんだって!?魔獣がいるのか!?」
「いや!違うみたい···。え!?ちょっと!?」
『温泉は温かいお湯が湧き出してるんだ!いい感じの湯加減で全身入ると疲れが取れるんだよ!そこは硫黄泉か酸性泉のようだから火山があるんだろうね。飲み水としては使えないから注意してね。本当は成分分析して人体に安全なのか確認したほうがいいんだろうけど体がおかしいな?と思ったらすぐに回復魔法をかけようね!温泉の湯加減を近くに流れている川の水とかで調整したら服を脱いで足先からかけ湯をするんだ。心臓に遠いところからお湯をかけていくのがポイントだよ。いきなり飛び込んだりしたら心臓発作を起こしてしまう危険があるからね。特に冬場は要注意だよ。足にかけ湯したらひざ→腰→肩→頭の順でかけるんだよ。こうして体を温泉の温度に合わせておくんだ。タオルは濡らして頭の上に置いておくとのぼせにくくなるから長湯を楽しめるんだよ。でもあんまり長く入ると全身浴はカロリー消費が激しいから疲れちゃうんだ。だから休み休み入ることをオススメしておくね!そうそういい忘れてたけど温泉に入る前にはちゃんとお水を飲んでおこうね!汗をたらふくかくから脱水症状になりやすいんだ。あと硫黄泉や酸性泉は肌への刺激が強すぎるから体を洗わわずに温泉に入るといいよ!洗うなら温泉から出る時がいいね。でもせっけんとか持ってないと思うからどこかで買っておくといいよ。清潔魔法のクリーンもあるんだけどあれはあんまりボクとしてはきれいになったって気がしなかったんだよなぁ。本当は温泉の湯で絞ったタオルであがる際に体を拭くと温泉の成分を肌に擦り込めるんだけど硫黄泉と酸性泉はお肌への作用が強すぎるから洗い流したほうがいいんだ。これは知っておくといいよ!あとはバスタオルだけどボクは使わな』
「ちょ!?ちょっと!?アキさん!?」
「どうしたんだ!?ライ!」
「アキさんが!遺産の知識がやかましい!」
「···は?やかましい?どういう事だ?」
アキさん!?温泉がそんなに大好きなの!?あまりに一気に早口でしゃべるから聞き取れないよ!!だんだん頭が痛くなってきたよ!?
「わかりました!わかりましたから!!···あ、収まった。はぁ···、はぁ···」
「だ、大丈夫か?ライ?」
「う、うん···。どうもここには温泉があるみたいで、いきなり遺産の知識が温泉についてものすごく詳しく早口で解説し始めたんだ···」
「そ、そうだったのか···。やかましいって、そういう事だったのか···」
「とりあえず、湯煙が上がってるところにいくといいみたい。ちょっと探して···、えっ!?アキさん!?」
「どうした!?また遺産の知識がか!?」
「え?こっちですか···?あっ!なんか湧き出て···!?ああっ!ちょっと!だからやかましいですって!!」
「···これ、オレ以外から見たらライがおかしな子に思われかねんなぁ~。賢者の遺産にも弱点あったなぁ~」
アキさん···。本当に温泉大好きなんだなぁ~。これから温泉があるところは気を付けておこう···。
アキさんの指示通りに湧き出ているところを土魔法で掘って、そこに川から水を引き込んだ。···これだけでも結構魔力使っちゃったよ~!
そして湯加減を確かめる···。うん。こんなものかな?川の水は引き込むところに石を置いて調整しておいた。
「よし!じゃあ入ってみようか!」
「おう!オレは初めてだぜ~!」
温泉に入る前に水分補給して、バケツに温泉の湯を汲んでからアキさんの言うとおりに足の先から順に頭までゆっくりとお湯をかけてから入った!
「あぁ~!これは気持ちいい~!!」
「ホントだな~!これはいいぞ~!」
なるほどね!一応ボクは賢者の遺産を継承するときにアキさんの家でお風呂?ってのに入らせてもらったんだけど、実体験してみるとこれはいいわぁ~!
ゆっくりとお湯に浸かって、気持ちよくなったところで出た。そして今日はここでキャンプをすることにしたんだ。
賢者の遺産の作成者である前作のアキくんは作者同様に温泉大好き!でしたので、いい温泉を見つけると大暴走してしまいます(笑)!今回は2885字中708字も占めておりまして、お話の4分の1はアキくんの大暴走でした。前作のイアさんよりかはマシですけどね。
基本的にこういった『自然湧出の温泉』は源泉温度が非常に高いという特徴がありまして、だいたい100℃前後で湧出します。そのため、こんな高温で源泉かけ流しは全身やけどしてしまうので、水道水入れて冷やすのが一般的です。『水増しかい!』って思われるでしょうが、高温になるほど溶け込んでいる成分が多いので、ちょうどいいかんじになるんですよ。濃すぎるのもよくないのです。
それでも源泉かけ流しにするには熱交換器で冷やすか、草津温泉のように湯もみして冷やすしかありません。
温泉の成分分析表の近くに『加水してます』の表記があるのは冷やす目的が正しい使用法なんです。『少ない源泉資源を確保』は本当はダメなんですね。どんだけ薄めてるかも実は成分分析表でわかっちゃうんですよ。こういったところでそのお宿の温泉に対する考え方が実はバレちゃってるんですね~。まぁ、事情はわかるんですけどね。
さて次回予告ですが、またまたライくんとテオくんは道に迷ってしまいました(笑)!ただ、今回は夜に飛んでみようということで、明かりがある町を見つけることはできるのでしょうか?
それではお楽しみに~!




