3-2.あんまり仕事はないみたいだよ
ボードの町に着いたはいいけど、どの宿がいいのか分からないので冒険者ギルドで尋ねたら、なぜかここのギルド長さんと面談することになっちゃったんだ···。どうしてこうなったの?
「さて、ワシの自己紹介だな。ゲインという」
「は、はぁ···。ボクはライです」
「オレはテオだぜ!」
「冒険者証は見せてもらった。『C+++』とは驚きだ···」
「はぁ···。ボクとしてもどうしてそこまで評価されたのかわかんないんですけど···」
「いや、その評価は正しいだろ?キミたちだろ?ダイナモの町のスタンピードを討伐したのは」
「えっ!?そ、それは···」
「この町にも話は来てるぞ?『幼い少年がスタンピードを討伐した』ってな。どんな冗談だと思っていたが···、この冒険者証の表記が正しいって証明だ。カソドの野郎とポーラの姉ちゃんが認めたのならなおさらだ」
「カソドさんとポーラさんをご存知なんですか?」
「業界じゃ有名だからな。あそこはギルド中央本部から選りすぐりのエースが派遣されてんのさ。4人もな」
「そうだったんですか···」
「なんでも『今後の町作りや制度の最先端を実地検証する』って目的らしいぜ?あの町はいろんな専門家が叡智を結集して作った町だからな」
「そうだったんだ···」
「まぁ、確かに結構頑丈そうだったぜ?」
「そうか。ワシは行ったことないのでな。しかし···、少年とはウワサであったがここまで幼いとは思わなかったぞ」
「あはは···」
「今回はどうしてここに来た?」
「カソドさんから次に行くならここがいいって言ったからです。道に迷って別の町に行ってしまったので遅くなりました」
「ふ〜ん···。と言っても特に今は問題はねえな。カソドの野郎がなんでここを推薦したのかは分からんがな。うちにはAランクもいるんで、特に頼みたい事はねえな」
「えっ!?Aランクがいるんですか!?」
「ああ。だから難易度の高い依頼や討伐に関してはそいつがやるからな。まぁ、せっかく来たんだからのんびりしたらどうだ?」
「わかりました。お言葉に甘えさせていただきますね。そうそう!聞きたかったのですが、この町でおいしい食事を出す宿ってありますか?」
「宿か?だったらここを出て港の方に行くとある『潮騒亭』ってとこだな。ちょっと宿代が高いが朝夕食事付きだな。その日に漁でとれたての食材が出るぞ」
「わかりました。ではそこに泊まらせていただきます」
「メシに期待だな〜!」
「テオはさっきからそればっかりだね···」
一応、目的は達したね。ちょっと大回りしたような気がするけど、どのみちギルドにはあいさつに向かうつもりだったからいいか!
そして教えてもらった宿に来た。建物のすぐ隣が海で、1階にはテラスがあって、そこから釣りができるようになってたよ。これは釣りしたら食事が1品増えるのかな?
まぁ、それは後で考えよう!部屋を取らなきゃね!
「こんにちは!2人なんですけどとりあえず3泊したいんですが、空いてますか?」
「いらっしゃい!···え?子どもだけ?」
「あ、はい。子どもですけど旅してるんです。冒険者でもありますよ。ギルド長のゲインさんがオススメされたので来たんです。これが冒険者証です」
「···本物かぁ〜。遊びじゃなさそうだね。聞いてるかもしれないけど、うちは朝夕食事付きだよ。昼は別途払ってもらうけどね。だから宿代が高いんだよ。1泊15000ジールだから3泊だと45000ジールだね。1階は釣りもできる部屋で、追加料金が1泊5000ジールになるが、どうする?」
「じゃあ1階で!6万ジールですね。これでお願いします」
「計算速いな!?ありがとな。じゃあ宿帳に名前を書いてくれ。カギはこれだ。105の部屋を使ってくれ。夕食は午後6時からだ。今日は外で網焼きをやるから、時間になったらここに来てくれ。会場へ案内するからな!そうそう、部屋で釣った魚は調理場に持ってきたら食事に無料で追加するからな。たくさん釣るとトクだぞ〜!」
「わかりました。お世話になります」
「···よくしつけのできた子だなぁ〜。ゆっくりしていってくれ!」
ボクたちは部屋に入った。今までの宿だったらベッドだけ!ってところだったけど、ここはトイレも洗面所もあったよ!
部屋にはベッドが3つと大きなバケツが4つあった。釣った魚を入れるって事かな?
テラスに出た。一応柵はあるけど、足元に板1枚だけ···。水を汲んだりするからかな?
「テオ。ここって面白い宿だね」
「そうだな!今日はもうすぐ夕食だから、明日は頑張って釣るか!」
「そうしようね〜!今日の夕食、楽しみだなぁ〜!」
部屋でゆっくりしていると、あっという間に夕食の時間になった。ボクたちがフロントへ行くと、宿に泊まってる人たちが集まっていた。
見たところ、行商人の人や冒険者っぽい人たちだったね。ボクたちもそうだけどさ。
「皆さん、お集まりですな?では本日はとれたての魚介類を網焼きで食べます!会場へご案内しましょう!」
そう言って宿の人について行った。宿を出てすぐ隣に木箱やタルでできた簡易のテーブル席と、近くに網焼き台が置いてあった!
でも、食材がどこにもないんだけど···?
すると、宿の人が近くにあったロープを引っ張った!引っ張った先にはカゴがついていて、そこに今日の食材がいっぱい入ってたんだ!
貝がいっぱい入ったカゴもあれば大きな魚が入ったカゴまで!
「このように、今も生きている新鮮な食材です!生でも食べれるのがこの町の売りですからね〜!魚は今から目の前で解体しますよ〜!」
「うひゃ~!ライ!これはいい宿だったな!」
「そうだね!こんな体験は初めてだよ〜!」
今も生きている貝とかを手持ちのカゴにたくさん取って、さっそく網の上で焼いてみた!しばらくするとパカッと貝が開いたよ!?
「そのままもうちょっと焼いてから食べるんだ。海水の塩がいい感じできいててうまいぞ〜!」
「わかりました!」
「もうちょっとだな!」
そして数分経ってアツアツの貝を食べてみた!
「おいし〜!」
「うんめ〜!」
これはおいしすぎるよ!こんなのボク初めてだよ〜!なんでも出来たてがおいしいって聞いてたけど本当なんだね!
続いては解体ショーで切り取られた魚の切り身だ!なんと生で食べちゃえるんだって!
お塩をちょっとだけつけて食べると···!?
「えっ!?とろけた!?」
「ホントに魚の身なのかよ!?」
「はっはっは!これは脂身の多い魚でな!わずかしか取れないが、最高だぞ〜!次はコレだ!このかたまりを網で軽く表面だけ焼いてナイフで切って食べてみな!」
そう言われたのでそのようにした。表面だけちょっと焼いてナイフで切ってみると、外は焼けてて中は生だった。どれどれ~?
「うわぁ~!これもおいし~!」
「へぇ~!ちょっと炙っただけでこんなにうまくなるんだなぁ~!」
他にも魚の切り身を生でいただいたりした。これは本当にいい宿を教えてもらったね!大変おいしくいただきました~!
どうやらこの町にはAランク冒険者がいて、順調に魔獣退治ができているようですね。
そして、海が近い町なので部屋から釣りができるというオシャレな宿がありました!
ネタバレ集には入れてないんですが、元ネタあります。この宿はかつて茨城県の大洗の船宿がこういう仕様だったと某戦車アニメ映画の裏話で聞いたことがあったので、せっかくなので書いてみました。作者は釣りはしたことないですよ。金魚すくいぐらいですけどね(笑)。
夕食と朝食が獲れたての魚介類というのは作者がかつて岩手県の大船渡で泊まった事のある宿を参考にしてます。貝は岡山県の前島の『まえじま牡蠣小屋』を参考にさせていただきました。解体ショーはいろんなホテルでやってますね〜。めっちゃ美味しかったんで、ライくんたちにも味わっていただきました。魚の種類違いますけど(笑)。
さて次回予告ですが、朝食の後で町の見学に出かけます。そこで町の人からこのきれいな円弧の湾の恐るべき由来が判明します。
さらに町中へ行くとカツアゲされそうになったり···。いろんな目に遭いますよ〜。
明日と明後日は朝と夜に1話ずつ投稿します。お楽しみに〜!




