2-24.ボクからアスへのプレゼント
本日で第2章完結なので、朝に本編を投稿して夜にネタバレ集を投稿しますよ~!
「···という状況でした」
「···やはりそうだったか。しかし···、なんとむごい惨状なのだ···」
ボクたちは夕方にグランドの町に戻った。そして、領主邸で昼間に見てきたゲートの国の惨状を伝えたんだ···。
しかも、ボクには神器のスマホがある。スマホにはカメラ機能があり、たくさん写真を撮ってそれをリークさんに見せたんだ···。最初はカメラ機能に驚いていたリークさんだったけど、撮影された画像を見ていくうちに顔が険しくなっていった。
リークさんの様子から思うと、ここまでひどい状況だったとは思ってなかったようだった。魔獣の被害もそうだけど、お城での食料を求めて人同士で争った形跡が最もショックな様子だったよ···。
「ありがとう···。とてもつらい思いをさせてしまったな···。本当に悪かった···」
「いえ···、ボクもこの状況を確認してよかったです。さすがにあそこまでひどいとは思ってませんでしたが···」
「そうだな···。生き残ったとしても、その中で争い、飢えてしまうなんて···。この世の地獄といっても過言ではあるまい。この町がそうならないよう、対策をせねばなるまいな···」
「そうですね。大きく壊れていた門は3か所のうちの南側の一つだけでした。ほかの2か所も壊れてはいましたが、その1か所ほどじゃなかったです。生き残った人がいたとしたら、おそらくはその2つの門から出たんじゃないでしょうか?」
「ひとつはダイナモの町の方向だな···。もう1つはサブステ方面か···。最も近いのはダイナモだな···」
「もしかしたら···、ダイナモの町に流れてきた避難民はゲートから来たのかもしれません。確か、『ここ最近急に増えた』と聞きました」
「ならば間違いなくそうだろう。完全に全滅ではなさそうだが、国内に魔獣が大量に徘徊しているとなると···、再建はほぼ不可能だろうな···」
「そうですか···」
「ライくん、本当に貴重な情報をありがとう!すぐにこの周辺の町に知らせるとしよう。幸いなことにここには川があるので、水運が発達しているからね。それじゃあ、この話はこれで終わりとしよう。これからお見送りのパーティーを始めるぞ!アスも待っているからな」
「はい!ありがとうございます!」
リークさんの仕事場を離れ、ボクたちは食堂にやってきた。扉を開けると···!なんと領主邸で働いている人全員がいたんだ!警備の人や厨房の人、掃除やシーツの交換をしてくれたメイドさんたち···。さらにはディーブ先生やシースさん、アトさんや監督さんまでいたよ!?
そして、リークさんからパーティー開始のあいさつがあったんだ。
「みんな、待たせたな!それでは今からライくんとテオくんへの感謝を込めたパーティーを始めるぞ!ライくんとテオくんには魔獣襲撃から本当にお世話になった。門の修繕も完了し、以前よりもこの町の守りはさらに強固なものになった!すべて、ライくんとテオくんのおかげだ!ここに改めて感謝したいと思う。二人とも、本当にありがとう!!」
パチパチパチパチ!!
「では、せっかくだからライくんに乾杯の声掛けをしてもらおうかな?」
「え!?ボクがですか!?」
「ああ。このパーティーの主役なのだからな」
「で、では···。皆さん。今日はこんなすごいパーティーを開いてもらってありがとうございました!それじゃあ、かんぱ~い!」
「「「「かんぱ~い!!」」」」
···それは、とてもとても楽しい時間だった。後で思い返しても、この時の思い出はボクの人生が終わるまで決して忘れることはなかったんだ。
ボクは···、今までの人生でここまで祝ってもらえるようなことはなかった。村では貧乏だったのでそんな余裕はなかったし、ダイナモの町ではギルドの人たちとの交流はあったけど、こういった余裕はなかったんだ。
ああ···、これが···、『幸せ』って事なんだろうな···。これが···、『平和』って事なんだろうな···。
この時の思い出が、そして体験が···、この後のボクの人生を決めたようなものだったと気づいたのは···、ボクの人生が終わる時だったよ···。
そして、楽しかったパーティーはついに終わりの時間を迎えたんだ。最後に、ボクはみんなに感謝のあいさつをしたんだ。
「皆さん、今日は本当にありがとうございました!今日、この時間はボクにとって一生忘れることのない、素晴らしい思い出になると思います!この町のこと、そして皆さんのその笑顔を、ボクは決して忘れません!ボクたちは明日朝にこの町から旅立ちます···。ボクは他の町や国を見てみたいんです。でも!この町には旅の帰りに必ず寄りたいと思っています!これが最後のお別れじゃないです!また訪れた時に···、優しく迎えてください。最後に、ボクたちを温かく迎え入れてくれて···、もう一度言わせて下さい!本当にありがとうございました!」
パチパチパチパチ!!
そして、みんな帰る際に声をかけてくれたよ。『元気でな!』『いつでもいらっしゃい!』『また鍛錬を手伝ってくれ!あの地獄のメニューは勘弁だけどな!』とか···。とっても嬉しかったし、途中から涙がでてきちゃったよ···。
「もう、ライは泣き虫だなぁ~!」
「テオ!泣き虫じゃないよ!感動してるんだから!!」
そんなやり取りもみんな見て笑ってくれたよ。そして···、ボクは1人だけでアスと一緒に庭に出た。テオには悪いけど、席を外してもらったよ。
「ライ···。明日、行ってしまうのね?」
「···うん。さっきも言ったけど、旅の途中で近くに来たら寄らせてもらうからね」
「ありがとう···」
「そうそう、アスに渡したいものがあるって言ったでしょ?それを今渡しておくよ」
「そう言えば前に言ってたわね。なにかしら···?」
「それはね?コレなんだ」
「···え?それって?」
「このスマホは渡すことはできないんだけど、このうちの一つの機能は渡すことができるんだ。『ちーむッス!』っていう機能なんだけど、この機能はボクが指名した人といつでも会話することができるんだ。それを今···、アスを指名させてもらうよ」
「え!?ど、どうなるのかしら!?」
「大丈夫!特に何もないからさ。···うん。これで登録できた。アス?魔法って使える?」
「少しだけなら···」
「なら···、『コール』って言ってみて」
「ええ。『コール!』」
アスがそう言うと、アスの目の前に光る画面が出てきた!
「きゃっ!?こ、これは!?」
「ボクの魔法だよ。アスの魔力を使うけどね。ここにボクの名前が出てるでしょ?ここをタッチして『コール』ってところをタッチすると···。ちょっと離れるね!」
「ええ···」
『もしもし?聞こえるかな?』
「えっ!?ライの顔と声が!?」
『そう、こうやってボクと連絡ができるようになるんだよ!どうかな?』
「あ···、ありがとう!」
『ははは。これぐらいしか今のボクにはアスにはできないんだけどね。これならいつでも会えるでしょ?』
「ええ!手紙よりも確実だわ!でも···、あんまり頻繁にやったらライの迷惑だから···」
『だったら『チャット』ってところをタッチすると文字でもやりとりできるよ。そっちなら気兼ねなしにできるでしょ?』
「すごいわね···。わかったわ!ありがとう···、ライ」
アスへのプレゼントって悩んだんだよね~。領主の娘だから物じゃダメだろうから、ボクにしかできないプレゼントとして連絡先に加えることにしたんだ。遺産の知識で教えてくれたからね。
そして翌日···。
ボクとテオは庭に出て、ここから旅立つことになった。
「皆さん、本当にお世話になりました。また近くに来たら寄らせてもらいますね!」
「ああ!気を付けて旅をしてくれ。そして、またいろいろ教えてくれ!」
「ライ!素敵なプレゼントありがとう!大事にするね!」
「うん!それじゃあ皆さん、また会いましょう!さようなら~!」
テオに乗って、ボクたちは飛び立った。領主邸をぐるっと1周してから町の上空を飛んでると、下から『いってらっしゃい!』や『ありがとう!』といった声が聞こえたんだ。ボクは嬉しくなって手を振ったよ!
門の壁の上には門番さんたちが整列して、敬礼してボクたちを見送ってくれた···。本当に、ボクはこの町に来て良かったよ!
第2章 完
『ライがあんな笑顔をしているなんて···』
『村では生活だけで精いっぱいだったから···。幸せそうでよかったわ···』
『ちーむッス!でやりとりはいいね~。今の状況だと、文通とかは無理だからね』
『そうだなー。そういえばアキ?テオがアトラの子孫に出会ったなー』
『そうだね、リオ。アトラちゃんの家系はわかりやすいなぁ~』
『ルメの子孫も地上に降りてるみたいだし、他にも子孫が地上にいるかもなー』
『かもね。これからテオくんは誰に出会うんだろうね~?』
ライくんのプレゼントはちーむッス!のアドレス登録でした。まったくお金がかからず物ではないんですが、今の状況からすれば何かあった時にライくんが駆けつけてくれる!という安心感がすさまじいんですよね~。
ある意味安全保障というか、もともと国がやるべき援軍がライくんに置き換わったようなものですからね。ライくんはゲートの国が滅びた惨状を見てこのプレゼントを決めました。ライくん自身も旅をしつつも何かあったら駆けつけよう!という考えだったんですね。最高のプレゼントになったのではないでしょうか?
この後、夜にネタバレ集を投稿します。そちらもお楽しみくださいね~。




