不運
次の日、莉彩はだるい体を起こした。
時計を見たら普段起きてる時刻とだいたい同じで時間の余裕に安堵する。
(時間....大丈夫だよね、寝坊なんて滅多にないし)
そして莉彩はいつもより遅く出て行こうと、再びベットへ潜り込んだ。
「やばっ...!」
二度寝をしたら案の定。考えていた時刻より10分以上遅れて目覚めてしまったのだ。
それから家の中でバタバタしながら準備をして、家を出る。
いつもの道を小走りしながら駅へ向かった。
莉彩は電車の時刻表を見て丁度あと1分で時間ということを確認して乗り場まで走った。
そして階段を駆け上がっていると、突然携帯が鳴りだす。
階段を登り終えながら携帯を開いた。
【新着メール1件】
(誰だよ、急いでるのに!)
そう思いながらメールを見ようとした時、下を見ないで走ったせいで落ちていたペットボトルで足を躓いた。
「う....わぁッッ!」
ドサッ!
「いだだだっ....」
よそ見をしていたせいか、派手に転んでしまった 。
幸い電車がまだ来てなかったことにほっとしたのも束の間で.....
(携帯がない?!)
そう、転んだ時の衝撃で携帯をを落としてしまっていたのだ。
莉彩はあたりを見回したが、どこにも見当たらない。
(まさか....)
莉彩は線路を見下ろした。
「....」
(どんなけ不運なわけ?)
落ちている。携帯が。しかも運悪く確実に潰れると思われるところに。
―――急いで下に降りなきゃ
そう思っていたらカツカツと歩く声が近くで聞こえ、後ろから方を掴まれた。
「やっほー莉彩。遅いとは珍しい」
(誰?)
振り向いてみれば友里だった。が今莉彩は彼女にかまっている暇はまったくない。
「....友里、ちょっとまって」
今は携帯が先!と莉彩降りようとしたら電車遠くのほうからがくる音が聞こえた。
「ちょっ...なにすんの?!」
意を決して降りようとした莉彩の腕を友里がつかんだ。と同時にまだとても近いというわけではないが電車が見える。
電車はきてるし腕は掴まれているしで、莉彩は
「早くしないと間に合わない!」
とそう叫んでいた。
周りの人が少しこちらを見たが、時間がなく急いでいるからだろうと思ったのかすぐに視線をそらした。だが―――
「飛び降りなんて絶対ダメ!!」
友里はいきなりそう叫んだ。
それを聞いてさすがに周りも驚きで静まり返る。
「―――え?」
(何?飛び降り?って、あの?)
莉彩があまりにも惚けた顔と声だったせいで、緊迫そうだった友里の顔つきも変わり
「....へっ?」
という声を発した。
電車が来て扉が開くと、周りの人たちはチラチラと莉彩と友里を見ながら次々に電車に乗っていった。
事態に呆然としていた莉彩だったが、ハッと我に返る。
「......とりあえず乗ろうか」
「あははは!!マジで?うち超恥ずかしいんですけど!」
莉彩が事情を話したところ大声で友里が笑い出した。
莉彩にとっては微塵も笑える話ではない。というか電車内でゲラゲラ笑っている地点で既に羞恥心はないだろうと思いながら「携帯買いに行こうかなぁ―」と呟いた。
「そうだね。何にするつもりなの?あっ、うちが選びた―い!」
パッと顔を輝かせた友里に莉彩は
「え?やだよ」
と、無情にも真顔でそう答えた。
「なんでよ?!」
「ものずご――――く時間がかかりそうなんで」
「わかった。そこまで言うのならば.....2時間以内に決めるから!」
「だが断る!」
電車を降りて、開始時間に着々と近づいてきていることを確認して2人は小走りしだした。
「なんで走らないといけないのよッッ。」
「そう思うのなら歩いてくれば?」
莉彩がきっぱりそう言うと「嘘だから」と友里が返してきた。
(嘘ならいうんじゃないよ、まったく.....)
――――そんな風にい言い合いをしながら走り、結局2人が病院にたどり着いたのは開始2分前だった。




