点
色々を見るのが好きな人が居た。
自然。絵。劇。
とにかく、見る事が好きで、見て心を楽しませていた。
そんな人がふと自分の目に点が映る事に気づいた。
点ははっきりとしていなかった。
絵画を見ている時は点は見えなかった。
人の顔を見ている時も点は見えなかった。
町を歩いている時も点は見えなかった。
だが、ふと、空を見ていたり、寝る前のぼんやりしている時に、気づけば点はあった。
最初は鬱陶しがっていたが、次第にその人はどうでも良いと受け入れていった。
やがて、その人は見る事に色々と求めていった。
価値や歴史。珍しさ。
見る事でその人は、自分が何かになれる気がしていった。
点も見えなくなり、忘れていった。
そして、見る事に疲れるようにもなった。
ある時、その人は疲れて寝た。
目を瞑り、今日、見たものを思い出そうとするが、そんな気になれなかった。
ただ、心が渦巻いていた。
目を瞑り、横になる。
すると、久しぶりに点が見えた。
何も見えないのに、点だけがある事がわかった。
点は確かにそこにあった。
その人は点を言い表そうとした。
星。
宝石。
石ころ。
色々と言葉を並べてみたが、どれにも、納得できず、点は点としか呼べなかった。
ただ、見えない中で点だけがあった。
何も言わず、ただ、そこにあるだけだった。
だが、目を離す気になれず、その人はただ見た。
心が渦巻く事はなかった。
気づけば、朝になっていた。
その人は夢を見ていたのだと気づいた。
ただ、心が澄んで、自分の部屋と窓からの光景を見た。
いつも通りだったが、心がはぁと息をつくのがわかった。
それから、その人は見る事をただ見る事にして、点が見える時は微笑むようになった。




