21,触れている肩先となぜか落胆する僕と彼と目が合うこと
「じゃあ、体のことを考えて、明日は一日、部屋でのんびりしよう」
そう言ってから、彼は、はっとしたような顔をした。
「あ、いや、君がそれでよければだけど」
僕の胸が、キュンキュンと切なく疼く。
「あの、ありがとうございます。すごくうれしいです」
一日一緒にいられるなんて夢のようだけれど、恥ずかしくて、顔が上げられない。すると彼が、僕の肩に手を置いて言った。
「よかった。とりあえず、ベッドに入ろうか。冷えるといけないからね」
「は、はい」
うわ、いよいよベッドイン。……ってそうじゃないよっ。
「どうぞ」
彼が掛け布団をめくってくれたので、僕は、ギクシャクしながらベッドに入る。壁際のほうに移動すると、当たり前のように、するりと隣に入る彼。
ヤバい、もう逃げ場がないではないかっ。いや、別に逃げる必要はないけれど、でもでもっ……。
心臓が口から飛び出しそうになりながら、それでも一応、(成功しているかどうかはわからないけれど)平静をよそおって横になる。彼は、僕に布団をかけてくれながら、ベッドに身を横たえた。
当たり前だけれど、やっぱりすごく近い。肩が触れ合うし、彼から漂ってくるボディーソープの香りにクラクラする。
内心パニックになりかけている僕に、彼が言った。
「気分はどう?」
「あっ、えぇと、薬が効いてきたのか、ずいぶん楽になりました」
さっき、彼が食事の後で買ってきてくれた風邪薬を飲んだのだ。ものすごくドキドキしてはいるけれど、体が楽になってきたのは本当だ。
「よかった。明日には、すっかりよくなっているといいけど」
「はい。ありがとうございます」
彼が体の向きを変えて、こちらを見たのがわかった。こんな至近距離で恥ずかしすぎるっ。
彼が言った。
「夜中に具合が悪くなったり、何か困ったことがあったら、遠慮しないで起こして。いい? 我慢なんかしちゃだめだよ」
ああ、なんて優しいんだろう……。
「わかりました。ホントにありがとうございます」
ちらりと横を見ると、彼はこちらを見て、優しいほほえみを浮かべている。
尊い、美しい、そして神々しい……。
「それじゃ、電気消すよ」
「は、はい」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
彼がリモコンでシーリングライトを消すと、部屋が暗くなった。暗闇の中、一つのベッドに、大好きな人と一緒に……。
こんなんで眠れるわけがない。触れようと思えばすぐにでも触れられるところに、というか、すでに触れている肩の先に彼がいるのだ。
もちろん、いやらしいことをしようなんて一かけらも思っていないし、そんな気持ちの余裕はないけれど、あの爽やかで優しくて笑顔が素敵なイケメンで、パーフェクト・オブ・パーフェクトのササジンこと笹垣仁之助が、僕のすぐ隣に寝ているのだっ!
体は固まって一ミリも動けないまま、頭の中であーでもないこーでもないと考えて興奮していると、やがて横から静かな寝息が聞こえてきた。
笹垣さん、もう眠っちゃったのか……。なぜか落胆する僕。
当たり前だよ。彼には、僕みたいに興奮する理由がないんだから、そりゃあ眠るさ。
いろいろと複雑な思いはあるものの、彼の規則的な寝息を聞いているうちに、だんだん気持ちが落ち着いてきた。とにかく明日も一緒にいられるんだし、なんだかんだ言ったって、とても幸せな状況には変わりないのだ。
笹垣仁之助さん、僕はあなたのことが大好きです。胸いっぱいにそう思いながら、いつの間にか、僕も眠りに落ちた。
何やら夢を見ていたようだけれど、それは、目が覚めるのと同時に、霧のようにどこかへ消え去ってしまった。
そういえば、僕は……。ぼんやりした頭で記憶をたどる。
僕は、彼のすぐ隣で寝ているのだ! はっとして、目を開けるのと同時に横を見ると、じっとこちらを見ている彼と目が合った。




