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05:枢機卿も拷問

 北の大地に降り立つ。

 

 北方の国、アリメトリス。


 僕は王の命を受け(という名目で)この国の女王に謁見を望んだ。


「ミスラ王子、それは誠ですか。俄には信じられませんが・・・・・・」


「はい、僕は偶然聞いてしまったのです。自国の勇者達が話しているのを。いづれ他の国の勇者と一緒に反乱、全ての国の乗っ取りを考えている事に」


 勿論、そんな話は聞いては無いけれど。


「女王、確かにあり得ない話ではないかと・・・・・・」


 謁見の前に可能な限り人払いをしてもらっていた。


 この場にいるのは。


 僕と、アリメトリスの女王。


 そして互いの側近のみ。


 僕の場合はクロエだけど、相手の方は。


「ミスラ王子、それでそちらの王はこの件に対してなんと?」


 唐突な話に少々困惑している女王に変わって対応するのは、白い鎧をきた大柄な戦士。

人間でいう初老くらいでとても落ち着いた雰囲気を持っていた。


「勇者達が集結すれば六国全ての力を合わせても対処は不可能でしょう。ですので、こちらは水面下で足並みを揃え対策を練る必要があります」


「対策、例えばどのような事でしょうか?」


「それは勿論、事を起こす前に勇者達には死んでもらいましょう」


「なっ!?」


 何度もいうが勇者達は今や国にいるだけで他からの侵攻を防げている存在。


 だが、その代償は少なくない。


「勇者達は自分の立場をいいことに、国の財政を圧迫するほど好き勝手に散財しております。この国も例外ではないはず。つまり、全ての国に勇者がいなくなれば万事都合がいいというもの」


 勇者達を囲っているせいで民の生活は年々苦しくなっている。


「・・・・・・それは確かに」


 大部分の勇者は自分が身を置いている国の王族にさえ敬意を払っていない。


 それを不満に思う者も多いだろう。


「しかし、勇者を殺すといっても元々我々とは力の差が歴然。あのような化け物達を相手にどうしろと・・・・・・」


「その事に関してのご心配はありません。・・・・・・クロエ」


「はい、王子」


 後ろでかしこまっていたクロエが、僕の意図をくみ取り前に出る。


 両手で持つのは布で包まれた陶器。


 結び目を解くと中が露わになった。


「ひ、ひっ!」


 それを見た女王が目を見開き思わず声を出した。


「こ、これは・・・・・・」


 晒されたのは女の首。


「我が国の勇者の一人、トモエです」


 数日前まで音を聞き、呼吸を、瞬きを、していた女の顔。


 片目と片耳のないそれは今や交渉材料。


 勇者達の顔はよく知られているから多少損壊していても確認は容易。


「一体、どうやって!?」


「それは今はまだ伏せておきたいですが、我々には勇者を殺す術を持ち合わせております」


 一応、殺害した勇者はこのトモエ一人という事にしておく。


 最低でも勇者は三人ほどいれば他から侵攻は受けづらい。

要は勇者も痛い思いはしたくないのだ。

 

 まぁ、それは土台無理って話ですけどね。勇者達にはたっぷり苦しんでいただかないと。


 とりあえず布石はこんな感じでどんどん打っておこうと思う。


 

     ◇


 歳を重ねる事でより感じるようになった国の腐敗。


 勇者達の維持費に国の財政は悪化の一途。


 国民の負担は増える一方で、そのくせ特権階級の者達の暮らしは変わらず。


 民衆の不満は日々膨らみそれらは全て王家に向けられていた。


「とりあえず、少しずつでも国民の負担を減らさなくては」


「そうね、それに伴い特権階級の見直しだけど・・・・・・」


 人間共のために僕達が頭を悩ますのは不本意だが。


「今は拠点でもあり行動を起こすに都合のいいこの国を潰すわけにはいかない」


「となると、勇者抜きにこの国の癌はあいつね」


「トリンビア枢機卿か・・・・・・」


 こいつは聖職者のくせにその立場を利用し女性にいかがわしいことばかりしている男だ。


「王もこいつには頭が上がらない。政教分離とはいえ発言力もあり、勇者をうまくおだてて扱っていた節もある。勇者不在が知られる前になんとかしなきゃね」


「そういえばこの前城に来たとき、私も少し触られたわ。一瞬首をはねてやろうと思ったけど私我慢したの、ねぇ、アスト、偉い?」


「そうですね。もしそれをやったら偉いっていうか、えらい騒ぎにはなってたでしょう。よく耐えました」


「そうでしょう~、なら頭撫でて撫でてっ」


 う~ん、なんと面倒くさい。以前はあんなに凜々しかったクロエなのに、今はこんなに変わってしまって。いや、もしかして元々こんなだったのか。


「とりあえず、トリンビア枢機卿は・・・・・・」


 立ち上がる。


「地下室送りで」



    ◇


「ここはどこだっ! 私を誰だとっ!?」


 男が一人、地下室の一画。


 両腕は縛られ天井から吊されている。   


 扉が甲高い耳障りな音を立てながら開かれる。


「こんばんは、トリンビア枢機卿」


「ミ、ミスラ王子っ!? これはどういう事ですかなっ!?」


「まぁまぁ、お静かに枢機卿。今説明しますゆえ」


 僕が合図を送ると、後ろに控えていたクロエが紙の束を捲る。


「トリンビア枢機卿。貴方は自身の気に入った国内外の女性を片っ端から手をつけ、その大多数が同意のないものでありました。かたや人妻、かたや年端もいかぬ少女まで無理矢理です。よってその者達の怒り、悲しみを痛みに変えこれよりミスラ様が貴方に制裁を下します」


「な、なにをふざけた事をっ。ミスラ王子、いくら王族とはいえこれはおふざけでは済まされませ・・・・・・ッアッブッチャラティイイイイイイイイイイイイイ」


 なんだか騒がしいのでまず頬を軽く叩きました。


 人間とはなんと脆い。


 ほんの少し力を込めただけなのに、今ので歯が何本も血と一緒に飛び散りました。


「さて・・・・・・」


 僕は徐に枢機卿のズボンを下着ごとズリ下ろす。


 そこにはすっかり縮こまり小さくなっていたアレがあって。


「まぁ、おかわいい事。これではまるで・・・・・・いえ何でもありません」


 クロエが小さくあざ笑い。


 僕がそれを包みこむように手を添えると。


「まぁ、なんて羨まし・・・・・・」


 クロエは何か言いかけ。


 そして僕は力を込めた。


「フゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウゴォオオオオオオオオオ」


「・・・・・・くないわね」


「クロエ、この男の被害にあった者の数はいかほどでしょうか?」


「そうですねぇ、百はくだらないかと」


「なるほど、でしたら・・・・・・」


 涙と鼻水、口からは血。


 痛みから頭を振る男の頬を掴む。


 そしてそのまま捻り切った。    

 

「ミミミズダァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 頬に穴が開き、中が見えます。


「では、これを百回繰り返すとしましょう」


 二の腕、腹、胸、太股、目に付いた部分の肉を指で摘まむと。


 ブチリと引き離す。


 その度、地下室に反響する絶叫。


「や、や、止め・・・・・・フアアバッキオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

「も、もう・・・・・・グハナァランチャアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 

「お、おねが・・・・・・ドトリッシユアアユアアアアアアアアアアアアアアア」

「た、たのむか・・・・・・ジョバアアナァアアアアアアアアアアアアア」

    

 衣服はボロボロ、身体の模様は赤い水玉。


「あれ、もしかして死んでます?」


「ええ、七十六回目にはすでに」


 勇者はやはり頑丈なんだね、これ以上の事をやってもまだまだ死ななかったのに。


「さて、こうやって国の秩序を守り、同時に不利益な人物も排除する・・・・・・そして」


 やはり勇者。


「クロエ、トモエが話した勇者は隣国の者だった。なので次の標的はそいつらにしようと思う」


「隣国・・・・・・クロスレインね。それなら村の者が以前興味深い話をしていたわ」


「興味深い話?」


 それを聞いた僕は少し方針を変える事にした。

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