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たえろエニロエ2

「そのトーアって子、私にも会わせなさいよ」


 ネウクがそう言って、私の後ろをついてくる。正直トーアに会わせるには刺激の強い人物だと、私は思う。

 ネウクはドSなのだ。普段は抑えているが、酔ったり興奮したりすると本性を現し女王様となる。武器だって鞭がメインだし。

 切れ長の目が特徴的な美人ではあるのだが、その性格もあって、私にしては珍しく普通の友達である。


「トーアってどんな子なのよ、M?」

「そんなことまず初めに確認しないで。私だって昨日会ったばっかりだよ、それにしたって謎が多い子だとは思うけど」

「謎ねえ。まあ冒険者なんてスネに傷がある奴も多いもの、いちいち気にしないわよ」


 トーアの過去は謎だけど、悪いことしてたってことはないんじゃないかな……。まあ、そのへんも含めて早く鎧に魔法を掛けた人物が分かってほしいもんだ。

 その後もネウクと話しながら、ダムさんのお店に向かった。


「あ、エニロエ」

「トーア、報酬貰ってきたよ」


 トーアがカウンターの奥から姿を現した。鎧は脱いでるようだ。


「ふーん、あんたがトーアね」

「あ、あなたは……?」

「私はネウク・レバート、A級パーティー『レオンハート』のリーダーにして、マウマスの女王よ」

「お、王族……」

「トーア、ネウクはただのドSだからね、王族ではないからね」


 なんの説明なんだ。

 私は報酬金をトーアに渡し、カウンターにもたれる。ダムさんの進捗を聞けば、やはりまだ何も分からないということだった。でしょうね。

 トーアの用事も済んだことだしこれからご飯にしようかと話していると、またもネウクがついてくると言った。久しぶりに彼女と机を囲むのも悪くない。


「じゃあギルドにしましょ。私も仲間に報酬渡したいし」

「分かった。トーアもそれでいい?」

「うん」


 女三人でギルドへ引き返す。

 ギルドの酒場は新米冒険者に優しい価格となっていて、いつも人で賑わっている。そんな所でツケてもらってる私はなんなんだろう……。


「ランチ三つ〜。あとエール一つ〜」

「くっ……私が飲めないと知っていながら!」

「私はちゃんと働いてるもの。そうだ、トーアはお酒飲まないの?」

「えっ? うーん……飲んでみようかな」

「もうトーアまで!」


 結局テーブルには三つのランチセットと二つのエールが並べられた。ちくしょ〜! しかし私は変わらなくてはならんのだよ……! あとお金も無駄遣いできないし……。


「ふう。現実って頭を冷ますね」

「そうかもしれないわね。じゃ、かんぱーい!」

「か、かんぱーい」


 トーアとネウクがジョッキを突き合わせる。やれやれ、私は水ですか。つい溜息を吐くと、トーアが、


「エニロエも、乾杯」

「うぅ……トーアはいい子だよ〜」


 涙が出ちゃいそう。ほんと、トーアはこのまま大きくなってほしいなあ。その優しさを忘れないで生きて。


「ぷはーっ! クエスト終わりの一杯は最高ね! トーア、ここのエールはいかがかしら?」

「ん……苦いね、これ。エールだっけ」

「あら、エールは初めて? まあ初めはそんなもんよ」


 ジョッキの中身を一気に呷るネウクとは対照的に、トーアはちびりと唇を湿らす程度に飲んでいた。私の分まで飲んでくれたまえよ。

 女三人寄れば姦しいと言うけれど、トーアは元から大人しいし私も酒が入ってないから、ネウクだけが騒々しかった。普段の私ってこんな感じなのかな……。


「もう無くなっちゃった……」

「あらトーア、真っ赤じゃない。あんた弱いのね」

「ん、もう一杯」

「やめといた方がいいよ、私みたいになってほしくない」

「んん……」


 酔い潰れたトーアは、すうすうと寝息を立て始めた。赤く色付いた頬が愛らしい。眠ったトーアは無防備で、どこからどう見たって普通の少女だった。とてもワイバーンをワンパンするとは思えない。

 トーアの横顔を目に焼き付けていると、ギルドの一角からファトゥスさんが、


「ギルドより、皆さんに生態調査のクエストを依頼いたしまーす!」


 と、拡声のマジックアイテムでギルド全体に告げた。

 へえ、生態調査かあ。新種のモンスターが見つかったりした時に依頼されるクエストらしいけど、やってみようかな。


「あ、エニロエさん。いらしてたんですね」

「ファトゥスさん、生態調査のクエストって、新種でも見つかったんですか?」

「いえそうではないんですが、ほら、今朝言ったじゃないですか。トーアさんが倒したワイバーンの調査、ある程度完了したんですよ」

「げ……」


 ワイバーンか……保留にしようかな……。

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