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ドリフト―TrifT―  作者: kishegh
第2章
69/85

補足。


補足説明として、現状の世界の軍事についての説明を入れよう。


すでに述べたとおり、かなり遅れている、もしくは発達していない。


これに関しては間違いが無いのだが、なぜそんなことが起こっているのかと言うと、まずは貴族社会が固定化されているため、守旧をもって最良と成すという精神が長年に亘っていることが一番大きい。


そこに、劇的な状態を好む貴族の感性と、やや誇張された騎士道、そして、平民を使い捨てる事に疑問を抱かない騎士(貴族)が軍祖支配階級から現場指揮官まで全てを支配していたからだ。


現在は、シュトラウス将軍、リヒテンシュタイン宰相、ヴェスター宰相、そして先代国王の努力により、平民からも学院に入り、軍の中で騎士階級になる事も出来るし、官僚として栄達の道もある。


しかし、それは簡単な事ではないし、その新貴族とでも言うべきエリート達の背後には、やはり多くの場合貴族が付いている。基本的に、平民にも貴族にもほぼ同等の学費がかかるからだ。それは、貴族にとっては安価ではあるが、一般民からすれば、家族3人が余裕をもって1年生きていけるだけの費用が毎年かかる。


と、同時に、彼ら新貴族の殆どは、出世我欲の権化であり、キュリアなどのように、国家に奉仕しようなどと考えるものは少ない。ある程度以上の力は余裕を生むが、急激に力を得たと思う人間は、より上を目指す。そのため、出世のためにという風には思っているが、それ以上には至らない。


結果として、彼らとて貴族と変わらない精神構造に至り、なんら変革は起きなかった。それは軍事面、行政面、各方面に共通した事だ。(経済面はちょっと違う所がある)


つまり、国家規模でと言うよりも、人間社会全体が停滞の中にあったといえる。そして、その根本は、神の現出にある。


神が結局は如何にかしてくれる。


人知の及ばない部分は仕方が無い。


そういった考え方がふたになり、それ以上の神秘に疑問を感じ、好奇心のままに突進すると言う精神が全体から薄れていたのだ。(勿論例外もあるが)


結果として、発展もしないが、人口の増加や自然破壊なども起きなかった。


もう一つは、全体の人種的な特性による。


実は、各国の王家はその原点を一つの国家に持っている。人種的な面では、様々な人種がいるのは事実なのだが、その指導者層、その首魁は同一の国家と同一の人種を根本にしている。(勿論例外はある)


その国家と人種は、その軍事的な思考として、物量をもっての守備を重視すると同時に、歩兵同士の総当りを決戦行動とするという面がある。


物量をもって守備をすると言うのは、城郭都市を基本として、守備を長期間に亘って維持し続け、お互いの疲弊を待つ。という事で、基本的には、全て城郭をもって戦場を支配し、その周辺で戦闘を行う。


簡単に言えば、お互いに篭って小競り合いを繰り返し、互いの疲弊を待って、お互いに合戦を布告、最終的には歩兵同士をぶつけあわせて決戦。この形を延々、繰り返してきた。


このような形態が維持されてきたのは、その国家から発生した一族。つまり、現状の各国家の王家には、共通した教育がなされているからだ。


地球においても言われた、騎士道や帝王学などに近しい物ではあるが、より宗教的な、修身法に近しい物だ。


支配者として民に君臨する優れた物である事に誇りを持つ。神を奉じ、神の前にのみ跪く。個人の武技を尊び、その習得に努める。国家と王家を維持するために、あらゆる手段をとる。


他にも多々あるが、主だったものはこの系統に含まれる。


礼儀作法や、武術などについても言及されているこの指導要領が、はっきりと長年の請ってきた事には理由があり、教科書とも言える書物が存在する。


「王権論」と呼ばれるこの本には、無論合戦の仕方も書いてあり、戦争は、基本的にそれに則って行う。これが続けられ、その影響は無論のこと貴族にも広がり、全体がそのままで固まってしまっている。


そのため、戦術なし、奇襲なし、夜襲なし、陣形なし、伏兵なし、予備兵なし、と言う、馬鹿のような戦争が長年続いてきたのだ。


このような、言ってしまえば子供の殴り合いのような戦争しかしていない世界に、戦乱の世界を経験し、過去の戦術戦史に造詣のあるアルトが現れた。当然のように、そこに戦術を組み込もうとするわけだが、状況を見てみれば、勝利があまりにも簡単に見えて、不思議に思うほどなのだ。


ちなみに、シュトラウス将軍は、補給に関しては大きな革新を起こしたが、実践戦術に関しては、兵員整列を考えたくらいで、そのほかは過去の流れに沿っていた。(兵員整列だけでも画期的ではあるのだが)


したがって、彼がアルトと楽しんでいる戦術論というのは、主に兵站に関した部分についてだ。そのほかの部分では、アルトから教わっていると言うのが正しい。


以上のような理由で、非常に軍としても政治としても弱い基盤の上に成り立っている世界、それがアルトが今いる世界になる。よく言えば、牧歌的な世界と言う所だろうか。


そのほか、兵種などについても例外や、過去の特例などはあるのだが、それらの説明はまた別の機会に。



言ってしまえば、宗教的な固陋さで守旧に尽くしてきた世界なんですよね。

頭硬い人間ばかりと考えて下さっても結構です。


次話は今日中に。

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