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ドリフト―TrifT―  作者: kishegh
第2章
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外蒐?内厭?


アルトが悩んだり、ベルゲインが冷たい汗をかいたり、バイエルラインが戸惑ったりしている頃、1人だけ国外にいる人間がいた。


いや、護衛もついているので、今まで名前が出てきた人間の(かず)で言えば3人。


彼女たちは、隣国リヒテンラーデ公国にいる。


ミリアリア・エル・アイゼナッハ、マルイレル・コーデローム、ノンリエッタの3人だ。彼女達は、無論遊びに国外へ来たわけではない、重要な案件があってこの国にまで来たのだ。


以前も書いた事はあったが、直接的に教会と国家は関係をしていない。お互いがお互いを尊重しあうと言うの建前をつかって、距離を取り合っているのだ。


そう言った風に見せかけている。


実際には、権謀術数の嵐の中にあることは否めない。貴族や国家と結託する例は多く、貴族や王家、大商家などの次男や三男が教会に入り、何らかの地位に至る事は少なくない。


もっとも、神の前にある物は全て等しいと言う考えは根幹にある。したがって、年功や人気により、勢力と言う物はあるが、直接的に神の声を聞ける者以外は、階級と言う物は無い。


しかしながら、部署の責任者と教会支部長は居る。


彼らは当然ある程度の権能を持つし、国家から何らかの称号を授与される場合や、貴族としての地位を得る者もいる。それは、教会における立場とは無関係とされて入るが、少なくとも目立つ立場に居る事は利益となるほうが多い。


さて、そういった一般論の中で、リヒテンラーデ公国が如何かと言うと、これは、国家と教会の関係性が薄く、その建前に近しい事が知られている。


公王家の家訓とでも言おうか、そもそもが、敬虔な信者であり、自身もかつて教会に直接所属していた事もある初代公王は、国家からの直接の寄付以外は、貴族の寄付金を禁止し、国家からの影響も排除するように交付を出したのだ。


その精神は今なお健在と言える。


もう少し、リヒテンラーデ公国の境界について説明を入れよう。


かつて、アイゼナッハ王国やリヒテンラーデ公国よりもさらに南方に、護国の鬼であるとか、鎮護将軍などと呼ばれた勇将が居た。


戦場においては、正しく名前にふさわしく、負けた事は無く、引き分けに甘んじたとはしても、被害を少なくし、智勇完備の名将だった。しかしながら、政治の場に合っては、非常に凡庸、むしろ無能だったのかもしれない。


有り余る功績を持ちながら、いや、功があまりに大きいため、かえって周囲から疎まれ、悪意を向けられていた。


そして、その名将にも危機が訪れる。


軍政争に負けた結果と言おうか、むしろ貴族の嫌がらせとして、保持兵力を削られ他所にまわされた所で、大軍の攻勢をうけ、大敗必至の状況に陥ったのだ。


大して信者としての経験を持たず、同時に、自身の才能などに十分な自負を持っていた彼ではあったが、この時ばかりは神に祈り、天佑を待った。


結論から言えば、その天佑は起こり、竜巻と同時に穢れ物の襲撃が起こり、敵軍は撤退。彼の祈りは天に通じた事になる。いかに地の利があったとは言え、7千の兵で3万の敵を防ぐ事は不可能だっただろう。攻め手ならばともかく、平野地を守る上での寡兵と言うのは救いようがない。


事が終わり、報告と増兵を求めて、国都に戻った彼を襲ったのは悲報だった。


すでに亡き愛妻との間に生まれた彼の子供が、亡くなったと言う知らせだ。国外に大使付きとして赴任していた長女は、急病で亡くなり。軍人、いや、騎士として多方面にて戦場を駆けていた長男は、戦場に散った。


家族を全て失い、貴族の薄ら汚い謀り、いや、いたずらによって自身も命を失いかけた将軍は、いろいろな意味で絶望した。


職を辞し、わずかな、とは言え余生を生きるのに十分な額の金だけを持って国を出奔した。


悲嘆した彼は、1人で静かに旅をしながら様々な場所を巡って、ある所に落ち着いた。それは、リヒテンラーデ公国とさらに南にある国の境にある山のふもとだった。


しばらく静かな生活をしていた彼だった、当時の彼は絶望できるほどの若さと力があった。


しかし、10年ほど過ぎ、40代も終わりを迎えた辺りから考えが変わってきた。生来活動的で、どちらかと言えば楽天的な彼は、危機の際の祈りを思い出し、そこに意識を向け始めた。


天佑が、神の意思であったかは分からない。しかしながら、偶然と言うにはあまりにも大きな助けを受けたと考えた彼は、そこに何らかの必然性を求めた。それを簡潔に言い表すのは難しい、しかしながら、彼は神の信徒ではなく、純粋な祈りの信奉者になろうとした。


その純粋性を望んだために、権力の影響の少ないリヒテンラーデ公国に居場所を求め、そこで教会に入る事になる。


教会に入った彼は、元々持っていた将帥としての人事能力、そして一種の人徳とも言える求心力によって、教会内で一勢力を築き、現在はリヒテンラーデ公国の国内教会をまとめている。


彼の立場は公国国都の教会支部長であり、それ以上のものではないが、独自勢力としての力を十分に持つリヒテンラーデ公国の教会では、総体の意思と言って良い。その辺りに関しては、むしろ貴族よりのアイゼナッハ王国の教会とは違う。


ミリア等3人が、わざわざ国境を越えてきた理由も、そこにある。


ミリア達は、戦争が起こった後の、講和の調停者として第3者を求めていた。そして、その第一候補となったのが彼、ステッセル・レネンカンプだった。




読んでいただきありがとうございます。


キーボードを買いなおしました・・・薄型はなんだか使いにくい。明日、もう一度買いに行きます。


御意見御感想等お待ちしています。

誤字や脱字などもありましたら、どうかお寄せ下さい。

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