泉の女神
その日、女神は困惑してた。
彼女は泉の女神、そうあの有名な金の斧の話に出てくる女神だ。
彼女の住む池は様々な池や湖に繋がっており偶に斧が落ちてくることがある。
それを拾って持ち主に質問するのがいつもの流れなのだが・・・・
『レベルが上がりました』
突然頭に聞こえてきた声、それに続いて
ドッボーンードカドカどっガーン
「え、何、何言ってるの? っていうか凄い音したんだけど」
長いことこの池で過ごしてるが初めて聞く大きな音だった。
「切り倒した大木でも倒れたのかしら?」
そう想いながら見に行くとそこには豪華な装飾のされた大きな斧?が
「これ? 斧よね・・」
柄も金属で出来てるしドラゴンのような装飾もされごついけど。
とりあえず地上にでないとって、
「重ッ‼、何この重さ」
神力使って何とかって、こんなの人間が持てないと思うけど?・・・
色々思考しながら地上に出てみると。
そこにいたのは・・・・・・・牛・・?
「ハッ?」 牛人間?? まさかミノタウルスってやつじゃ?
そこに居たのは何処かの迷宮の最奥にいそうな凶暴さをにじませたミノタウルスだった。
「ブモオオオウウウウウゥゥゥゥ」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
突如としてミノタウルスが叫ぶ、
女神も叫ぶ とても五月蝿い
「ゴッボ、えっぐゲエエッツ、えっぐッゲツ」
二人とも咳き込んでぜえぜえ言い出したところで少し冷静になれたのかお互いを見つめ合う。
「・・・・・・・・・・・・・・」無言 えっと、
「あなたが落としたのは、この金の斧、それともこの銀の斧?」
とりあえず女神はいつもの営業トークを繰り出した、顔がもの凄く引きつって強大な斧のせいで腕がプルプルしてるが。
「・・・・・・・・・・」 だが無言。
あれっ、もしかして頭悪そうだからわからなかったかな?と女神が失礼な事を考えてると
「ぶも、ぶぶもも、ぶぶーもーもー、っぶっぶもー」
ミノタウルスが身ぶり手ぶりで何かを訴えかけ始めた。
まさかの言葉が通じないパターンかっと女神は額に手を当て空を見上げるのだった。
!!!
「え!? ちょっと待って!!」
「月が2つ・・・・此処って・・・何処?」
空を見上げた女神の目に写ったのは2つの月だった。
いったいどういう事、確かに神の言葉が通じない事はおかしいのだ。
神の言葉は精神に直接語り掛けるものだから。
言語どころか動物や魚だろうとも通じるのだ。
それなのに通じないって・・・・・・やっぱり頭悪くて通じないのね、って違う。
月が2つもあるし、神々の権能が通じないし、此処、私の知ってる世界じゃないのかも。
その瞬間だった。
ぷるん。
地面が揺れた、正確には、池が揺れた。
水面が盛り上がり、巨大なゼリーの塊のようなものが姿を現す。
巨大スライムだった。
「え!・・・」
女神はぽかんと口を開ける。
すると、そのスライムが喋った。
『こんにちは』
「喋った!!」
『私はこの池の主です』
スライムはのんびり説明を始めた。
『さっきレベルが上がりまして』
『新しいスキルを覚えました』
『池召喚です』
女神は嫌な予感がした。
「・・・それで?」
『試しに使いました』
スライムは言った。
『そしたら池が出ました』
女神は言った。
「それ、私の泉」
スライムは言った。
『はい、異世界の池(初回特典サービス)ってスキルでした』
女神は聞いた。
「・・・つまり?」
スライムは答えた。
『女神様ごと召喚しました』
・・・・・・・
風が吹いた。
ミノタウルスが
「ブモ?」
と首を傾げた。
女神はゆっくり立ち上がる。
営業スマイルを作る。
斧を掲げる。
「では改めて」
遠い目をしながら言った。
「あなたが落としたのは、この金の斧?」
「それとも銀の斧?」
ミノタウルスは困った顔で
「ブモォ・・・」
と答えた。
女神は空を見上げた。
「・・・・・帰りたい」
こうして。
異世界に、泉の女神が爆誕した。




