幻聴に恋をして《第一夜》
『ねぇ、ねぇってば』
朝、起きた時にそんな声が聞こえた
部屋には一人のはずなのに
親でもない、同年代ぐらいのこえ
『聞こえてないの?』
部屋の影に、小さな変な影が見える
本当におかしくなったのかと感じたけれど、なぜだか嫌な感じはしなかった
「聞こえてるよ」
声に返してみる、もし幽霊とかならまずかったかなと、今更ながら考える
『あ、聞こえてるじゃん!!なーんだ、聞こえてないのかと思った』
「あなたはだれ?」
『私?私はね、んー、なんだろう。わかんないんだよね』
「わかんないってなによ」
『覚えてないのー、別にいいでしょ』
声だけなのだから名前なんてないのかな?
まぁ、どうでもいい
「静かにしてくれない」
『またネルの?学校遅れちゃうよ?』
「どうでもいいよ」
『もー、そんなんじゃダメな大人になっちゃうよ?』
「ママみたいな事言わないでよ」
そんな言葉を休んでる時に聞きたくない
『頑張らないとだよー』
「うるさい」
『課題だってやってないじゃん』
「黙って」
なんで、影だけのあんたが知ってるのかは疑問に持たないようにした。それを聞いたら本当に幽霊なんじゃないかと思ってしまうから
『はぁ、今日学校でテストだよ?』
「そんなの言われてない」
『抜き打ちだもんー』
「なんであんたが知ってるのよ」
『さぁ?』
「さぁ、ってなによ」
『まぁ、いいじゃんー。行こうよー』
「黙って!!」
声を張り上げる。そんなの行きたくない。将来なんて考えたくない
「ちょっと!!日向、うるさいわよ!!」
部屋の扉が開き、怒号が聞こえる。うるさいなぁ
「ごめんなさい」
「はぁ、今日も学校休むの?」
「うん、ごめんなさい」
「わかったわ。あなた、学校は休むのにバイトは行くの?」
「⋯」
黙るしかない、だってそうだもの。おかしいのはわかってるけど、もう私は学校になんて行きたくない
「まぁいいわ。好きにして」
バタンと、少し強めに、諦めてるかのように扉が閉まる
『ママ、怖いね』
「あんた、まだいたの?」
『そりゃね』
「はぁ、別によ。私が悪いんだから」
『そうなの?』
「そうなの」
『なにしたの?』
「言いたくないわよ」
『…』
『そ、それより、あなたの部屋ってもの少ないね?』
わかりやすく、私が嫌な顔をしたからなのかその変な影は話題を変える
「だって物集める趣味ないし」
『そうなの?ぬいぐるみいっぱいいなかったっけ?』
「親戚にあげたわよ」
『大切なのも?』
「まぁ、お願いされたら流石にね」
『綿が落ちてるけど』
掃除を最近していなかったから、枕から出たものだろうか?
「枕じゃない?」
『枕ないじゃん』
「そうだっけ?」
『うん』
「どうでもいいわ」
『そればっか、疲れたの?』
疲れたと言われれば、確かに疲れた
「あんたと話すのに疲れた」
『むー、ひどいー』
「うるさいわね、夕方まで寝させて」
『バイトまで?』
「そう、だから黙ってて」
『はーい』
幽霊のくせに、意外と言うことは聞くんだ
そう思って、急に静かになった部屋で瞼を閉じた




