第三章3『友人の危機と俺!!』
「――よし、行くか!」
翌日の朝一番。
いつもの朝のルーティンを済ませて俺はローファーを履いて家を勢いよく飛び出した。
無論、失恋から吹っ切れるため、そして新しくできた友達に胸躍らせながら鞄片手に小走りで登校していた。
「おっ、いたいた!」
嵐山高校の校門が見えてきたあたりの住宅街。
他の生徒たちも後に続いて校門を通過していく中。
俺は友人の早田レイジと宮田シンタロウの後姿に目が行っていた。
「――あ、そうそう!今話題のヴァーチャルRPGのゲームアプリ、ダウンロードした?」
「おう、さっきダウンロードした!これだよな?」
何やら早田レイジが宮田シンタロウへ談笑しているようだった。
そんな二人を見かけた俺は声を掛けようと軽くジョギングしながら歩み寄っていった。
「「――ああああ!!」」
俺が声を掛けようと肩を叩こうとする直前のことであった。
急に不気味な声を二人同時に発した早田と富田。
突如として一斉に二人はうつ伏せになり、前かがみに倒れたのだ。
それぞれ持っていた鞄とスマホを、その場に落として……。
「……おい、うちの生徒が倒れたぞ!?」
「……えっ、マジ⁈」
「……こっわ⁈」
周囲の教員や生徒らが二人の容体の異変に気付き、辺りは騒然としていた。
「――おい、大丈夫か!?」
俺はすぐさま、二人の容体を確認しようとしゃがみこんで片腕ずつ二人の背を3海保と叩いた。
さらに二人の脈が動いているか確認するためにそれぞれの手首を掴んだ。
「……おいおい、マジかよ!脈はまだ動いている!!救急車だ!誰か、救急車を呼んでくれ!!あと、AEDを持ってきてくれ!」
俺は周囲の生徒や大人に大声で呼びかけた。
何故なら二人とも、完全に意識を失っていて息もまともにできていないで泡を吹いている状態であったからだ。
「わかった!救急車は僕が呼ぼう。松井さん、保健室横にあるAEDをもってきてくれ!早く!!」
「……あっ、はい!すぐ行きます!!」
先ほどまで腕を組んで校門前に立っていた丸刈りで細身の中年男性教諭の佐藤が、大慌てで俺の声を聞いて駆け寄ってきていた。
彼の指示を受け、近くにいた「松井」という女子生徒が猛スピードで学校へ走り抜けていった。
「――よし、やるか!」
一度深呼吸して俺は二人を仰向けに寝かし直した。
加えて俺は両膝をつき、制服のブレザーを脱いで両腕の買ったシャツの捲り上げたて軽く上下に腕を回した。
無論、AEDが届くまで二人の胸骨圧迫を試みるためである。
「救急車は呼んでおいた。僕は小太りの彼をマッサージしよう。もう一人は頼めるか?」
俺の様子見て同じく心臓マッサージを試みようと橋本先生が声をかけてきた。
しかし、俺は首を横に振って言った。
「いや、両方とも俺が両手でやります。こう見えても、プロのブラックリストハンターですから。特別な処置方法は知っていますので」
「……ええっ?」
俺は右手を早田、左手を富田の胸に置いて両腕で心臓マッサージを始めようとしていた。
俺の返答に普通科の教員である佐藤先生は理解が追い付かないのか唖然として首をかしげていた。
「――よし、いくぜ!!」
俺は高橋名人のボタン連打のごとく高速で、しかも両手で二人の胸部へ力を調整しながら両膝をついた状態で体全身を使って心臓マッサージを開始した。
「す、すごい……これがブラックリストハンターの実力か!」
俺の姿を見て佐藤先生は目を見開いて感服していた。
「……スゲー超人かよ!」
「流石はブラックリストハンター界の神童、大谷どん吉だ!!」
「――がんばれ!」
何やら周囲の男女生徒の声援が聞こえてきたが、俺は無言のまま返答の余裕もなく歯を食いしばりながら心臓マッサージに注力した。
「………クっ!!」
――こんなところで、友人をなくしてたまるかよ!!
心中で、そう叫びながら恩師の櫻井から教わった緊急時の二人の心肺蘇生術を俺は必死に続けるのであった。
……ブルルルーン、ブルルルーン。
俺が胸骨圧迫を最中、二人が倒れた直後から早田と富田が落とした、それぞれのスマホから普段は鳴らないような不気味なバイブ音がしていた。
加えて、そのスマホの画面には白い画面で英語の筆記体で『Game Start !!』と赤い文字で表示されていたことに、俺は未だ気付いていないのであった。




