翔太の知らないところで
翔太は少し早めに教室へ入った。
翔太(昨日、雫華と勉強できたし……
今日も一緒に復習できたらいいな)
そんな淡い期待を胸に、
雫華の席の方へ目を向ける。
しかし──
翔太「……あれ?」
雫華の席は空だった。
翔太(まだ来てないのか……)
少しだけ肩が落ちる。
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「ここはこう考えると楽だよ」
「……ほんとだ。わかりやすい」
聞き慣れた声。
そして、聞き慣れない“雫華の笑い声”。
翔太(……え?)
廊下の奥、窓際のスペース。
そこには──
**雫華と理人が、二人きりで並んで座っていた。**
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理人「この問題、昨日の続きだろ。
雫華さんなら解けるよ」
雫華「うん……あ、できた」
理人「ほら、やっぱり」
雫華はふっと微笑んだ。
昨日より柔らかい笑顔。
雫華「理人、教えるの上手だね」
理人「そうか?」
雫華「うん。助かる」
二人は自然に会話していた。
距離も近い。
雫華は楽しそうだった。
翔太
胸が、ぎゅっと痛くなる。
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翔太はその場に立ち尽くした。
翔太(なんで……理人と?
昨日は俺が教えたのに……)
もちろん、
雫華は誰にもなびいていない。
ただ、わかりやすい人に教えてもらっているだけ。
頭ではわかっているのに、
胸がざわつく。
翔太(……楽しそうだな)
雫華の笑顔が、
自分に向けられたものじゃないことが
妙に寂しかった。
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# ◆雫華が気づく
雫華「あ、翔太。おはよう」
翔太「っ……お、おはよう」
雫華はいつも通りの声で、
いつも通りの距離で話しかけてくる。
雫華「理人に数学教えてもらってたの。
昨日の続き、気になって」
翔太「そ、そっか……」
理人「翔太、お前も来るか?」
翔太「……いや、大丈夫」
笑顔を作ろうとしたけど、
少しだけぎこちなかった。
雫華は首をかしげた。
雫華「翔太、なんか変?」
翔太「べ、別に……!」
翔太はそのまま席に戻った。
胸のざわつきは、まだ消えなかった。
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翔太(……俺、何期待してたんだよ)
雫華は誰にもなびかない。
それはわかっている。
でも──
翔太(……雫華が誰かと楽しそうにしてると、
なんでこんなに気になるんだ)
自分の気持ちに気づきそうで、
でもまだ認められない。
そんな朝だった。




