46 おじいさんが変
「あそこにネズミがたくさんいます!」
最初に見つけたのはメイだった。
森の入口のようなところから、ちょっと入ったところに木がすくなくなって、小屋が建っているところがあった。
下からだったら気づかないかもしれない。
小屋が二軒建っているので、家と、作業をするところを分けているのだろう。
そのどちらにも、まわりがネズミがいっぱいになっていた。
「ネズミが中に入れていないようなので、まだ無事でしょう」
ガドが言った。
「行きましょう」
私はふわりと降りていって、まわりのネズミをさっと剣にした。
そしてドアをノックする。
「こんにちは」
返事がない。
「お嬢様」
ガドが指したのは、ドアのまわりだ。
「あら」
ドアは、板と釘でしっかりとかためられていた。
「ネズミが入らないようにしているのね」
「……」
ガドがドアを見ていた。
「じゃあ、どうやって中に入ろうかしら」
小屋は、メイの家を新しくして、すこし小さくしたようなものだ。
中は、一部屋しかないのではないかしら。
「窓も、板が打ってあるわね」
横に行って見てみると、入れそうなところがない。
「ドアを切って、開けて入ったらいかがでしょうか」
「そんなことしていいのかしら」
「あとで直せばいいでしょう。お嬢様の剣で直せば、強度も上がり、むしろ喜ばれるのでは」
「そう? いいならいいけど」
私は、ドアのまわりに剣をすっ、すっ、と通した。
「ではわたしが」
ガドがドアノブを持つと手前に引いた。
ドアがこちら側に倒れてくる。それをガドがいったん受け止め、ゆっくり地面に倒した。
中にいたおじいさんが、床で中腰になってこっちを見ていた。
あのおじいさんだ。
おどろいた顔をしている。
「こんにちは、急に来ておどろかせてしまったかしら。私のことは覚えている?」
「あ? ……ああ、あの変な剣を使うお嬢ちゃんだろう」
「よかった。そうよ」
「お前、勝手に人の家のドアを切ったのか。どういう神経してるんだ」
「ごめんなさい。でも、大切なお話があるの。いま、この村にはたくさん魔物が来ているわ。みんな、牛小屋のところにいるの。避難しましょう」
「おれは行かん」
「どうして?」
「おれの勝手だ。それより、お前らが避難しろ」
「一緒に行きましょう」
「だから、行かないと言ってるだろうが! だいたい、お前らになんの関係がある!」
「そう言われると困るけれど。でも、困っている人を助けるのはふつうでしょう?」
「おれは困ってない!」
「私は困っているわ。だから、私を助けるために、一緒に行きましょう?」
「あ?」
おじいさんは一瞬変な顔で止まった。
「だから、おれは行かないんだよ! お前が困ろうがなんだろうが、知らん!」
「そんな」
「さっさと帰れ」
「あなたに用がなくても、こちらは用があります」
ガドが言った。
「なんだお前は」
「この小屋に、あるものがありますね?」
「なにを言ってんだ。お前も帰れ!」
「魔物を引き寄せる銅像が、ここにあるのでは?」
「なにを」
「おそらく、あなたのものですね?」
ガドが言うと、おじいさんの表情が険しくなった。




