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13日の

狂神の審査から数日が経った。

俺達は大分ダンジョンを制覇し・・・てはいなかった。

というのも俺の顔についた巨大なバッテンのせいだ。

カイムがしばらくしたら薄れて見えなくなるというので消えるまでダンジョンの最深部に引き籠っている事にしたのだ。


「おい、カイム!全然薄れてきてるように見えないが、本当に見えなくなるくらい薄れるのか?」


顏のバッテンは刺青の様にハッキリとその存在を主張している。

そして、大輔も加藤君も俺の顔を見て笑う。


『ここには奴の神気が満ちているせいで消えにくいだけだ。時間が経てば消える!』


また後出しで情報を言いやがった。

それならそうと初めに言え!

顏のバッテンが消えるまで、ここに居たいがそろそろ時間的にマズイ気がする。


「なんかで隠すしかないな。」


大輔が他人事のように提案する。

くそ!どうする!


「す、菅原君、これなんてどうかな?」


加藤君が粘土製のホッケーマスクのような仮面を差し出して来た。

基本はホッケーマスクだが表面に見事な彫刻がされている。

無駄に才能をのばしているデブの気持ちは嬉しいが、粘土のため臭い上に柔らかい。

顔に張り付けても少し動くだけでずり落ちそうだ。


「これでいいじゃん。」


俺が加藤君製作のホッケーマスクをどうにか顔面に張りつけようと悪戦苦闘していると大輔が何やら差し出してきた。

受け取り広げてみるとそれは小さめの麻袋だった。


「これを被って目のとこに穴開けりゃあいいじゃん。」


何となくだがいい案に思えたので取り合えず大輔の意見を採用する。

顏がチクチクするし麻袋のなんともいえない臭いがするが思ったより悪く無い。


「どうだ?」


「う~ん・・・言い出した俺が言うのも何だが・・・どっかで見た気がする・・・。」


「キャンプ場で暴れる殺人鬼に似てる・・・2作目の。」


カイムから鏡を受け取り自分でも見てみると、そこには加藤君の言葉通りの風貌が写し出されている。

殺人鬼とまではいかなくても明らかに不審者、道で会ったら通報待った無しだ。


「いいじゃん。上に戻ったら包帯買い込んでミイラみたいにするとか、適当なお面でも買えばいいだけなんだから、今だけだ、今だけ!」


「大輔・・・お前、今日はいやに饒舌だな。」


こいつは嘘が苦手だ。

すぐにバレるからだが、その特徴の一つに隠しておきたい事があると必要以上にしゃべるというのがある。

だがこいつの隠し事はこの際どうでもいい。

スタンピードがどこから始まるのか分らないが、このままいて飲み込まれでもしたら大変だ。

タイムリミットも俺達が入ってから更に縮んでたりしたらマズいしな。


「仕方が無い、これでいく!分ってると思うが、上に戻ったらあのクソ神とジェノサイダーの事は黙ってろよ。」


「言わなくていいのかよ!」


「言ってどうする。信じると思うか?」


「それに相手は神だ。初めから人に教えてるならともかく、今回はあの馬鹿が口を滑らせただけの可能性が高い。他人に教える事によって未曽有の大災害が試練に追加されたとかになったら洒落にならん。」


「まぁ、そうだな。でもゴーレムの事もか?」


「辻褄が合わなくなる可能性がある。なら初めから神もゴーレムも知らないで通した方がいい。」


あの小さなおっさんはまぁまぁ鋭いからな。

俺はともかく大輔では絶対バレる。

加藤君もオロオロしだすから駄目だな。


「まぁ、しゃあねえな。俺はそれでいいぜ。」


「僕もそれでいいよ。」


「じゃあ、さっさとコアルーム行って終わらそうぜ。そしたら直道の驕りで温泉だ!」


隠し事はこれか!

俺はすっかり忘れてたが脳筋のくせに覚えてやがった!

だが、今回は色々あったし顔のバッテンが消えるまでの間くらいなら湯治という名目で姿をくらませるいい理由になるかもしれない。


加藤君が嫌そうな顔をしているが今度こそはキッチリ管理者になってもらうからな。

まだ心の準備がとわめきだした加藤君を大輔が羽交い絞めにして引きずっていく。

それを見ながら俺はまるで人攫いのようだと思ったが、大人な俺は黙っていた。

ついに痛いのは嫌だと泣き出した加藤君に大輔が困り始めている。

あの馬鹿は人が好すぎるのが欠点だ。


「大輔!ためらうな!!やれ!!!」


聞くに堪えない悲鳴が響く中、こうして加藤君はダンジョン管理者になった。



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