人生楽ありゃ苦もあるさ。
遅くなりました。
大学との交渉が終ると俺は会社の方に顔を出していた。
別に社長業の為では無く魔鉱石とミスリル、それと精霊石を渡すためと、頼んでいた試作の道具を受け取るためだ。
余談だが、俺達が必死になって採掘した精霊石は、ほぼゴミだという事が分かっている。
本来はこれを付けるだけで防具や武具に耐性を持たせる事が出来るのだが、精霊石に力が溜まっておらず、何の役にも立たないとカイムに言われたのだ。
現状では只の珍しい石でしかないが、鈍く光っているのでギリギリ装飾品に出来るのではないかというのが俺達の意見だ。
「じゃあ、確かに受け取ったよ。」
素材を敦兄ちゃんに渡し、書類などにサインしてお終いだ。
ちなみに、高価な素材を預ける倉庫がないため、現在はカイムのアイテムボックスが会社の倉庫として活躍している。
渡しているのは研究開発に使う僅かな量だ。
「それと、これが頼まれていた試作品だ。」
次に渡されたのが、縦横高さが2メートルの正方形の箱のようなものだ。
正体をばらすとこれは組み立て式の簡易シャワーだ。
ハッキリ言ってダンジョンに3日以上潜ると体の臭さが半端ない。
特にコアルームから転移する際に3人でかたまる時は、吐き気どころか本当に吐くくらい臭いのだ。
タンクに水をため、魔石を燃料とするシャワーシステムをつけており、いくつかの問題はあるがダンジョンの中でもシャワーを浴びる事が出来る。
「おおっ!これが・・・。」
「いくつかの問題はあるけど、試作品だし仕方が無い部分もあるからね。もう少し研究をすすめたら、もうちょっと良くなるかも。」
問題と言っているのは大きさと燃料効率、それと排水についてだった。
大きさは俺達は問題無いけど、一般に販売する際には問題になってくる。
Sランク冒険者でもマジックバックを持っている人は稀にしかいない。
そして燃料効率はそのまま魔石の消費が激しいのだが、これも試作品のため十分な性能を発揮するため多少効率無視の物が付けられているためだ。
だが、元々小型化にすればするほど、魔石を使うのも事実でバランスの問題でしかない。
そして最後の問題点が排水についてだ。
多少の勾配があれば、そこに排水してしまえばいいのだが、全ての場所がそのような適している場所のわけでは無い。
これには一応付属で排水用のタンクも用意しているが、基本はホースでそのまま流す事にしているため、辺り一面びしょびしょになる可能性がある。
「とりあえず、使ってみるよ。」
「一応、使える事は確認してるから、今後マジックバックとの抱き合わせで協会側にレンタルしてもらえるように売るつもりだ。まずは日本国内のシェアを独占したい。」
敦兄ちゃんが何か難しそうな事を言い出したため、俺は聞いているフリに徹した。
会社の事は全て任せてるんだから好きにしてもらっていいのに、相変わらず律義だ。
その後、この簡易シャワーシステムは受け入れられ、それなりの利益を出す事になる。
特に匂いを気にして長時間潜る事をしなかった女性冒険者に喜ばれ、当初はマジックバックとの抱き合わせレンタルを展開していたのだが、知らない他人が使った物より自分達専用が欲しいという事で、普通に売れたからだ。
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数日後、大輔が青い顔をして俺の家を訪ねてきた。
まぁ、これは分かる合コンの件だろう。
「直道、相談にのってくれ・・・。」
馬鹿の相談は案の定、合コンの件だった。
簡単に説明すると、宮沢さんに頼んでいたのだが、まだ会って数ヶ月の浅い関係の友達しかいない。
更にお嬢様学校のためか合コンの風習が無いのだ。
「大輔、無理に合コンにしなくてもいいだろ。夏休みに仲のいい友達同士で旅行に行こうと言うんだ。高原のペンション2つ借り切って、避暑に行くで頼んでみろ。」
「そ、そうか?」
「合コンって言うから警戒されるんだろ。旅行と言え!」
それから、俺達はというか大輔がパソコンを操作し、かなり豪華な山奥のペンションを2つ予約した。
温泉までついているというのが決め手だった。
「いいぞ。女は温泉が好きだからな。肌が綺麗になるとかで好感度もバッチリだ。」
俺は独りほくそ笑んだ。
『愚かな・・・。』
独り悦に入る俺の耳に鳥の呟きが聞こえる。
なんだ、羨ましいのか?
「よし、大輔メスの九官鳥買いに行こう。カイムのお相手も探してやらないと。」
『儂は鳥では無い!主もそのような無駄な事はやめたらどうだ!!』
「ほざくな!やらなきゃ無駄かどうかも分らんだろ!」
『無駄だ。儂には分る。』
まさか、こいつ未来予知とか出来るのか?
『主の魅力は5だ。それでは女共はついてこない。』
なんつった、こいつ!
「おい!魅力ってなんだ?」
『裏ステータスだ。』
「詳しく。」
『通常は見えない、裏ステータスというものがある。魅力、理性、運命の3つだ。主の魅力は10だが呪いで半減している。5では無理だ。』
「だ、大輔の魅力はいくつだ?」
『その人間の魅力は10だ。』
「こ、この雑誌のこの子はいくつだ?」
俺は雑誌についているグラビアアイドルのページを見せる。
『写真では分らん。』
「か、加藤君はいくつだ。」
『丸い人間の魅力は6だ。』
「お、俺は・・・。」
『5だ。裏ステータスは生まれた時に決まり、変わらない。諦めろ。』
「な、直道、俺ちょっと用を思い出したから帰るわ。俺はずっと友達だから、気を落とすなよ。」
「か、神様ぁあぁああぁあああ!!!!」
泣き疲れて床で寝ていた俺が目を覚ますと、大輔からの差し入れがテーブルの上に置かれていた。
甘いシュークリームのはずなのに何故かしょっぱい・・・。
誤字報告増えてきました。
一応、目を通してから直しているのですが、ボタン連打したい欲求にかられます。
感想もちゃんと見ています。
鋭い人が多いので、もうバレバレですがカイムは感想に書かれている通りの存在です。
本日1本目の投稿をさせて頂きます。
有難う御座いました。




