台車に乗って遊んではいけない。
41階以降、ダンジョンの様子が変わった。
と言っても、採掘で出てくる物が変わっただけなのだが、今までは鉱石が出てきていた。
最高ランクはミスリルだ。
俺達はこの調子でいけば、オリハルコンやアダマンタイトの鉱石も取れるとほくそ笑んでいたのだが、41階、正確には42階から出てきた物は精霊石という石ころが取れるようになったのだ。
格好いい響きの名前の上に、見た目も鈍く光って中々綺麗だ。
色も赤、青、黄、緑と四色そろっており、名前から察するに火、水、土、風の精霊石だろう。
俺達はこの石を見て一気に気色ばみ、休憩する時間を削ってまで採掘に没頭した。
残り10階層、その気になれば2~3日で行けたのだが、途中途中で採掘を行っていた俺達は既に7日も使っていた。
流石に時間を使いすぎたと思った俺達は先を急いだのだが、49階でその悲劇は起こった。
49階も1本道だが、その道は上り坂と下り坂が交互にくる一本道だった。
その途中にあった先が見えないほどの直線の下り坂での出来事だ。
「ここって皆で台車に乗れば楽に行けるんじゃねえか?」
大輔が素晴らしい案を言い出したのだ。
既にウンザリするほど歩いていた俺達はこの意見に賛成し、3人で台車に乗り込んだ。
ポジションは台車の安定性を増すために後ろの加藤君、前に俺と大輔が加藤君にしがみつくようにだ。
台車は軽快だった。
少しづつスピードも増したが、その都度俺と大輔が足でブレーキをかけ、スピードが出過ぎないように疾走していた。
ガコン!
何処かそんな音が聞こえた。
「直道!後ろだ!」
大輔の叫びに指差す方を見ると、丸くて巨大な岩の塊が俺達の後を追いながら転がってきている。
何かの映画で見たような光景だ、
だが、映画は自分の足で走っていたが、俺達は台車だスピードが違うから追いつける物ではない。
「このままだと壁と岩に挟まれちゃうんじゃ・・・。」
余裕の笑みをうかべる俺に加藤君の残酷な一言が突き刺さる。
マズイ!それがあったか!
「加藤君、魔法であの岩の迎撃を頼む!」
俺の呼びかけに答え、加藤君が魔法の力を行使する。
爆発の魔法の強力なやつだ。
大岩は爆炎と共に粉々に砕け散った。
「やったぞ!」
だが、はしゃいでいる暇はなかった。
台車が爆発の魔法の影響で加速したのだ。
それもかなりのスピードに・・・。
「大輔!止めろ!」
「無茶言うな!お前がやれ!」
醜い擦り付けあいが続く間もスピードは増していく。
「仕方が無い横に倒れるぞ!」
「いいのか!」
「このまま壁に激突するより何倍もいい!怪我はポーションで直せばいい!」
「よし、やるぞ!直道合図をくれ!」
「3,2,1、いまだ!やれぇえぇええ!!!」
台車を横倒しにしてのクラッシュ!
俺達3人は台車の残骸と坂道を転がりながらスピードを緩めた。
気が付くと俺と大輔は通路に倒れていた。
「大輔、大丈夫か?加藤君はどこだ!」
大輔がヨロヨロと起き上がりながら通路の先を指差す。
「俺を潰しながら転がっていった。もっと先にいるはずだ。」
大輔の指差す方を眺めると100m以上離れたところに加藤君らしきものが見える。
もう二度と台車には乗らない。
俺は固く誓った。
・
・
・
そして、50階のダンジョンボスの部屋の前。
これからダンジョンボス戦となる。
百目鬼の事があるから注意が必要だ。
新たに気合を入れて立ち向かう。
俺はいつものように素早く扉を開けて大輔の後ろに隠れるが、部屋の中には何もいない。
「あれ?・・・ボスいないのか?」
3人で目を凝らすが何かいるようには見えない。
「ち、小さくてここから見えないとか・・・?」
俺達の視力はレベルアップで強化され動体視力と共にかなりのものがある。
1人ならともかく3人で見て見付けられないという事があるのだろうか。
首を傾げていると、部屋の中央にパッと魔石と宝箱が出現した。
「何かいたんだな。」
『うむ、スプリガンだな。』
カイムの説明によると、目に見えない完全に透明な戦闘特化の妖精だそうだ。
「知らずに踏み込んでたら、攻撃をくらうってわけか。」
不意打ちで範囲攻撃されてたら初見で詰む可能性もある、いやらしい敵だ。
今後は何もいないと思っても、部屋の中央にむけて攻撃するようにしたほうがいいな。
3人で部屋の中央に向かうと、大きな魔石が鎮座している。
だが・・・。
「これって20階のボスより小さくないか?」
カイムに持たせていた百目鬼の魔石を取り出し比べると、百目鬼の魔石より二回りほど小さい。
「もしかして、上の奴がダンジョンボスだったとか・・・。」
可能性としてはあるかもしれないが、そんなことは聞いたことが無い。
考えても分からないので、気を取り直して俺達は宝箱の方に意識をむけた。
このボスの宝箱は金ぴかの宝箱だ。
百目鬼の宝箱がどんなんだったか思い出せないが、他のBランクのダンジョンボスの宝箱はプラチナだったはずだ。
加藤君に開けてもらうと出てきたのは、よくある外れアイテムの液体の入った瓶だ。
今度の液体はクリームソーダのような色をしている。
今までのダンジョンボス戦は、それなりにいい物が手に入ってた気がするので、ちょっとがっかりだ。
俺達は気を取り直して、ダンジョンコアのあるコアルームに向かった。
島根ダンジョンのコアも他のBランクダンジョンのコアと同程度の大きさだ。
問題は誰があの苦痛を受けるかだ・・・。
「大輔➝加藤君➝俺の順番で管理者になってるから、今回は大輔の番だな。」
「ふざけんなよ!直道はBランクダンジョンの管理者じゃないだろ!今回はお前だ!」
ほう・・・脳筋が良い事を言ったぞ。
「そうか、なら今回は俺が触れよう。たが、残り2つのAランクダンジョンは大輔と加藤君で決まりだからな。」
俺はそう言い放ち、下腹に力を込めてダンジョンコアに触れる。
「グッ!ゥウゥゥ・・。」
俺の体が光を放ち、痛みが体中を駆け巡るが新宿の時と比べたら屁でも無い。
「ふぅ、・・・終わったぞ。」
「す、菅原君、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。」
痛かったぞ。
だが、この痛みと引きかえにAランクダンジョンを2人に押し付ける事が出来たと思えば、この痛みも意味がある。
自分の失言に気が付いた大輔が慌てているが、もう後の祭りだ。
こうして俺達の島根ダンジョン攻略は終わりを告げた。
感想と誤字報告、有難う御座います。
昨日は私事で1本投稿になりましたが、なるべく1日複数投稿するつもりではいます。
本日1本目の投稿をさせて頂きます。
有難う御座いました。




