23 投げ銭
“おいおい、囲まれた。にげろ!”
“バカ、一匹ずつ相手にするのがセオリーだろ”
“ビギナー死んだ”
“ヤベエ”
“今までありがとう”
しっかりとゴブリンの動きはみえている。
「「「ギャギャギャギャ」」」
3匹のゴブリンが声をあげると同時に俺へと襲いかかってくる。
正面のゴブリンの胸にナイフを突き立て、引き抜きながら身体を左に回転させそのまま2匹目に刃を突き立て後方に位置する形になったゴブリンを蹴りでけん制しつつ、抜いたナイフを振り向きざまに突き立てる。
「ふ~~~っ」
問題なくいけた。
蹴りも加えて、映えも意識した動きとして結構いけてたんじゃないだろうか。
まだまだだけど、レベルアップしたおかげでイメージに身体の動きが近づいてくれているのを感じる。
“うぇっ。倒しちゃった”
“今までで一番すごかった”
“ゴブリン相手とはいえ本当にビギナー?”
“何今の蹴り。体術イケル系?”
“すまん、死ぬと思った。お詫びに少ないが取っておいてくれ”
コメントが赤く表示されその横には100円の文字が!
うおおおおおおお~~! もしやこれが噂の投げ銭というやつなのか。
100円とはいえ身銭を切って俺の配信に!
有難い。
有難いというかある種感動だ。
コメントも有難いけど、100円の重みが染みる。
「ありがとうございます。励みになります。これからもよろしく願いします」
”少なくて済まんね”
「いえ、初めてなんで、感動してます。本当にありがとうございます”
”喜んでもらえたみたいでよかったよ”
なんていい人なんだろうか。
この世の中にこんな奇特な人がいるとは。
世界は広い。
今までこんな世界を知らずに引き籠っていた自分が情けなくなる。
感動の投げ銭にペースの上がった俺はこの日70匹を超える数のゴブリンを倒す事に成功した。
「お願いします」
「買取ですね。今日はまた多いですね。日々増えていっていませんか?」
「はい、視聴者さんが喜んでくれたんでちょっとテンションが上がってしまいました」
「そうですか。ほどほどに」
「わかっています」
いつもの受付のお姉さんだが、おそらく俺よりは年上。
一般的な感覚でいえば美人だ。
現状、母親以外で唯一会話のある女性がこの人だ。
いつも通りの事務的な受け答えだが、一応心配はしてくれているような気はする。
ただ、脈ナシなのは俺でもはっきりとわかる。
それに妙な事をして唯一ともいえる女性との会話の機会をなくすわけにはいかないので、こちらも必要以上の事は喋らないようにする。
「ちなみに、配信は順調でしょうか?」
「はい、もちろんです。今日、視聴者さんが5人にもなったんですよ」
「……5人ですか。チャンネル名をお聞きしてもよろしいでしょうか」
「ガッシュチャンネルっていう名前です」
「ガッシュチャンネルですか。なにか名前に意味や由来が?」
「……いえ、特には」
「そうですか」
ゴブリンの魔核の買取を終え、その場を後にする。
突然チャンネル名について質問されて焦ってしまった。
安易な名前を付け過ぎたかもしれないけど今更だな。
ダンジョンに潜っている時の何割かはガッシュファルトの記憶に頼っている部分もあるしな。
いずれにしても、初の投げ銭も頂いたし、ゴブリンの魔核は結構いい金額にもなったし、いい一日だった。




