22 映え
俺の今使っているのはナイフだ。
そんなこと考えたこともなかったけど、視聴者目線に立ってみると一理ある。
大きな画面で視ていれば問題ないと思うけどスマホか。
確かにスマホの小さな画面で視ていたとすれば、すれ違いざまのナイフの一撃はなにをしているのかわかり辛いかもしれない。
俺は今まで最低限の動きでゴブリンをしとめるように努めてきた。
もしかしてそれって視聴者さんからしたら動きが少なくてつまらなかったりするのか。
「え~っと、すいません。ビギナーなものでまだ武器はナイフしかないんです。お金がたまり次第もう少し視やすい武器を購入するのでそれまでお待ちいただけると助かります」
“俺は今のスタイル好きだぞ”
“視やすい武器ってなんだよ。そんなん初めて聞いたわ”
とりあえず今の俺に出来る事は、少しでも画面映えする戦いをすること。
目から鱗とはこのことだろう。
今まで一度も意識したことはなかったけど、これからの事を考えると今のままじゃだめなのはわかる。
レベルアップもしたし、十分安全マージンはある。
「ギイイイ」
ゴブリンを発見した。
意識を変える。
いや視点を変える。
自分を戦場を俯瞰する。
第三者の視点。
自分とゴブリンの動きを上空から俯瞰する。
おそらくはガッシュファルトが持っていた能力なのかそういう事ができてしまう。
第三者の視点から、画面映えするように立ち回る。
スマホの画面でも動きがわかるように大きく動く。
ナイフの刃がカメラに映るよう意識し、ゴブリンへと突き立てる。
突き立てた後の残身も意図的に大きく立ち回る。
ナイフが小さいのはすぐにはどうしようもないけど俺の動き方はすぐに変えられる。
“おおっ、なんかカッコよい”
“わるくない”
“本当にビギナー? 騙ってない?”
おおっ、高評価じゃないか?
やはりこの方向性が正解か。
同じ探索をするなら視聴者さんに喜んでもらった方がいいに決まっている。
僅か5人。
されど5人。
長い間引き籠っていたせいで人とのコミュニケーションに飢えているのかもしれない。
5人の視聴者さんからのリアクションが響く。
もっと視聴者さんが増えれば、もっとやり取りが増える。
そう思うと自然とテンションは上がる。
そして今気が付いたけど、戦場を俯瞰してみるのは悪くない。
敵の動きと自分の動きの両方を把握することで、動きを最適化することが出来る。
「おっ、今度は5匹か」
ゴブリンが5匹。
今の俺なら問題ない。
「「「ギャギャギャギャ」」」
「それじゃあ、いきますね」
“ちょっと待て。ビギナーがソロで5匹は無理だろ。にげろ”
“やっぱオモロイ”
“ソロはやばいって”
俺のやることは変わらない。
5匹と俺を俯瞰しながら、映えを意識しながら戦う。
それだけだ。
ナイフを構え、一匹目のゴブリンの首に刃を突き立てる。
後ろに回りこまれたら厄介だ。
速攻で2匹目も倒す。
残りは3匹。
いや、ちょっと待て。
映えを意識すると言いながら、さっさと2匹倒してしまった。
せっかくゴブリンが5匹もいたのに既に3匹まで減ってしまっていた。
まずい。
さすがにこのまま終わってしまっては視聴者さんに呆れられる。
一匹ずつじゃ変化がない。
ゴブリンの位置を確認しながら、3匹の中心へと移動する。
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