お泊りさせていただきます
皆さんの職場でお泊りすることになりました。
いやなんで?いやありがたいから受けるけどさ。
ジュリアさんが用意してくれたのは、詰所の仮眠室。いくつかあるうちの一つを、私用に開けてくれた。
わーい、ベッドだあ(*^。^*)
「すみません、お手数おかけします」
「いや、いつまでも言うが、部下の不始末がきっかけだしな。放っておくと本当に外に出て野営しそうだし、今日くらいは面倒見させてくれ。シャワーが無いのと、毛布が薄いのは、まあ…諦めてくれ」
「いえ、屋根付きのところで眠れるだけで十分ですよ。ありがとうございます」
私が笑顔でそう言えば、「無欲な奴だな…」と呆れたように言われた。
ひどい、これでも私、割と強欲ですよ。
差別されること覚悟でアルビノのアバター作っておきながら、差別を弾き返そうとする。孤独は嫌いだけど、自分の奥底には誰も入れたくない。何より、自分への差別は嫌っておきながら、私自身は決して無差別主義者じゃない。
矛盾だらけ、強欲・傲慢で超わがまま。ひどいところを挙げればキリがない。聖人君子なんかまっぴらだ。
ジュリアさんが仕事に戻ったんで、心置きなく荷物を広げる。つっても異空間収納から小物を取り出す程度だけど。
髪を洗って乾かして、綺麗にブラッシングして専用の油を塗る。
靴を脱いで、いつもの柔軟とヨガもどき。あ、視界の端でゆきうさが真似っ子してもにもに伸びてる。可愛い。
ダンベル使った筋トレもしようかと思ったけど、もういい時間だし寝ようか。
ゆきうさを抱っこして、薄い布団に潜り込んだ。
***
「ん…んん…?」
寝こけてしばらくした深夜、何か、ドアの開いた気配がしてうっすら目を覚ます。
「…なんですか…」
てっきり「すみません、起こしてしまいましたか」とか声をかけられると思ってたら、なんか違うらしくて下卑た笑い声が聞こえてきた。
「あんちゃん、べっぴんさんだよなあ?」
「…ありがとうございます…?」
褒めるくらいなら寝かせてくれ、せっかく久々に気持ちよく寝てたのに…。
「なら、一晩の宿の礼に、気持ちよくさせてくれてもいいよなあ?」
気持ちよく…気持ちよく?
ああ…なるほど?
「…どうぞ…」
その言葉を聞いて更に笑みを深めた彼らに、抱きしめて寝ていたゆきうさを差し出す。
「は??」
「え、おい、」
「…ゆきうさ、もふもふばくだん」
「えっちょ」
私の手の中で、ゆきうさがぶるぶると震えだす。
ぷるぷる ぷるぷる ぷるぷる …
ぽにっ
毛玉のような、こぶのようなそれがゆきうさにできて、ぽこりと取れる。
…ゆきうさアップデートの中でもとっておき、分体作成〜。本体と違ってお耳が明るい黄緑(本体は深緑)だから見分けも比較的簡単。なんなら本体は赤目で分体は黒目だし。
ぷるぷる ぽにっ ぴょーん
ぷるぷる ぽにっ ぴょーん
ぷるぷる ぽにっ ぴょーん
もこもこもこもこ……
「ちょ、おい、止めろ!止め、うぶっ」
「zzz...」
「の、ノーベもごおっ!?」
あーふわふわもちもちが増えていくんじゃ〜。あったか〜い、ふわふわ〜、気持ちいい……
***
怒られました。ごめんなさい。
「あのな、泊まるの許可したのはたしかに俺だよ」
「はい、すみません…」
「でもさ、わかる?そろそろ起こそうとドア開けたら真っ白な毛玉が壁みたいになってなだれ込んできた時の俺の気持ち」
「本当にすみません…」
なんでこうなってんのか全然覚えてない…休憩に来たらしい他の人も巻き込んでるし…。
しかもどんどん倍々に増えていくゆきうさがトラウマなのかなんも教えてくれないし。これのせいでお仕事辞めちゃったら本当にごめんなさいだな〜…。




