おはようございます
出発しようにも筋肉痛だぁ〜!!いっってぇ〜〜!!
チクショウ、昨日一日中歩き続けたからか?それ以前からもフィールドワークとかアスレチックとかで動き回ってたのにい〜!
…使う筋肉が違うのかしら。これはしくったな〜。
「ゆきうさ〜、もうちょい下〜」
ゆきうさのアップデートそのニ、回復魔法〜。
筋肉の疲労回復や簡単な傷の治療、あとは毒の浄化なんかを仕込んでおいた。私の手の届かない場所(背中とか)に怪我ができても、これで安心。
まさか初使用がこんなおっさんじみた内容とは思わなかったけど。
あー回復魔法かけてもらってる間になんかもふもふが当たって気持ちいいんじゃ〜。
…これは、出発はお昼くらいになりそうかな?
私はこの世界に来てすっかり眠りが浅くなってしまっていた。
不慣れな環境に長時間居ることを強制されるストレスのせいか、目を閉じてもなかなか寝付けない。寝ても、少しの物音や光で目が覚めてしまう。
だからゆきうさ作ったんよな〜。愛すべき私のペット兼ベッド。少しあったかいのも、私が安らぐためだ。私、寝るの大好きだからね。ただでさえゲームもマンガもネットもないってのに、睡眠まで奪われちゃあたまらない。
こういうマッサージ受けてる間って気持ちよくて寝ちゃう〜とかありがちだけど、正直足が攣る寸前なんで寝ようにも寝られない。
回復魔法が終わったあとも、自分でふくらはぎをもんだりして少し休憩。ゆきうさも、近くにいてねと言いつけて放置した。
薄情?いやいやそんなことないでしょ。そもそも近くって私の結界の中のことだし。
***
「うっし、ゆきうさー!そろそろ出発するよ!」
私がそう言えば、ゆきうさは耳をピクンと反応させてこっちに来た。
テントもお鍋も、その他道具諸々は全部異空間収納につっこんで、仕込み杖を持ってほぼ空っぽのカバンをかける。
足元でピシリと姿勢を正したゆきうさを撫でて、また歩き出す。
この世界には、方位磁針が存在しない。正確には、存在はするけどデカい。
私の知っているような、親指と中指で作った輪っかくらいのサイズじゃなくて、中華屋さんのテーブルくらいのサイズがどーんとあるイメージらしい。磁石を切り取っても磁力が残ることはわかってるけど、磁石を小さくすると磁力も小さくなるのでは、という懸念点からデカいのばっかなんだって。
そういうわけで、私お手製の方位磁針(魔法ナシ)も他の魔道具同様表に出せなくなっちった。あーあ。
ほんと、初めて出会った人たちが私の常識知らずを利用しないタイプの人たちでよかった。
話を戻して、この世界では、さっきの理由から旅人は方位磁針を使えない。東西南北の価値観はあるけど、星や太陽の位置から方角を探すのが一般的なんだって。
だから、紙の地図も、方角をこれでもかとわかりやすく書いてある。
うーん便利。しかもお高い魔法具だからおおよその現在地をマークで示してくれるのもありがたい。あの街でわざわざ買った高級品の一つだ。
「ゆきうさ、どの街行きたい?」
私が居た山やマルキアがかなり辺鄙な場所にあっただけで、そこから移動した現在地からは三箇所の街が目指せる。
他の街より頭一つ抜けたいわゆる都会、王都クライシェンカ。
工芸品で有名なからくりの街、ヴォルキア。
大きな施設が並び、またその周辺にはお店が数多く並ぶ観光地、ピアーシェ。
私が地図をかざして見せても、ゆきうさは私の足にすり寄るだけ。
わかんないか〜そっか〜。わかんないよな、可愛がってるけど結局は一昔前の愛玩ロボットみたいなもんだし。
どーれにしよっかなー。正直どこでもいっかなー。
今の私は文字通り世捨て人だからなー、ガチの自由選択肢なんだよなー。
うん、やっぱりゆきうさに任せるか。
枝を拾って地面に街の名前を書いて、ゆきうさをこっちに呼ぶ。
「ね、ね。この中から一つ選んで」
こてん、と傾いて、ゆきうさは私が地面に書いた、一つの単語の上に乗っかった。
その街とは――




