35話
一度有ることは二度ある。
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「それはそうと、お主はここで何をしとった?」
セイ達と共に魔物と戦った事は話したけれど…
繭や苺の事、そして俺の事は未だ先生に全て話していなかった。
この際だ。全て洗いざらい話してしまおう。
ドラゴンと友達だっていう、馬鹿げた話しよりよっぽど現実的な話しだ。
「なんでそういう事を早く言わんのじゃ、このたわけ者!」
ポカリと杖で頭を叩かれる。
ちょっと理不尽すぎやしませんかね?
「先生、杏子…俺の妻の居所に、心当たりは有りませんか?」
「うーむ。しばらく村から離れてなかったからの…」
「その繭の子を、見せて貰えるかしら?」
先生は分からないようだった。
キヌアさんは何か手掛かりを得られるかもと、筋肉さんに繭の子を見せて貰いに行った。
「やっぱりそうね、この子。それと…苺ちゃんだったかしら?その子。糸の様な物が見えるわね。」
「糸…ですか?」
他の誰にも見えない糸の様な物が、キヌアさんには見えると言う。
その糸はゆらゆらと風に靡くかのように、共に同じ方角へ伸びていると。
以前ボウムルで出会った時も、苺の糸は見えて居たのだと。
今までこんな物を見たことはなく、俺の精霊の加護の事もあり、害はなさそうだったので、深くは気にしなかったらしい。
「その糸は、母娘の繋がりかも知れませんね。」
筋肉さんは、神職らしい事を言う。
苺を見つけた時も、似たような事を言っていたな。
「魔族の物かもしれんがのう。」
その可能性もある。
苺や繭の子に植えられた石は、魔族の手によるものだ。
それでも、手札の無くなった俺には、それを辿る以外の方法は残されていない。
糸の先に何が待ち構えているのか分からない。
「先生、キヌアさん、一緒にそこへ、糸の先へ行ってもらえませんか?」
「いいじゃろう。但し、報酬は忘れるでないぞ。」
報酬って?聞こうとしたけど、先生の表情を見てすぐに分かる。
先生の鼻の下が物凄く伸びていた。相変わらず、お盛んですね。
アイシスさん、ジュレさん、先に謝っておきます。
下着を幾つか拝借する事になりそうです、ごめんなさい。
「あら、この気配は何かしら。」
再び筋肉さんに繭の子を託し、糸の先へ向かう支度をしている途中。
キヌアさんが何かに気付いたようだ。
「これは魔素じゃな。」
その言葉にハッとして苺を目で探す。
特に変わりは無いようで、椅子に座ってお菓子を食べてる。
そうなると、可能性はもう一人。
繭の子だ。
慌てて筋肉さんの元へ駆け出し、先生も後を追うように飛び出してきた。
村の広場には、ぽっかり開いた穴。
その向こう側には赤黒いモヤが立ち込め、以前に見たのと同じ物が浮かんでいた。
「皆下がって!魔界と繋がった!魔族が出てくるぞ!」
町の人は蜘蛛の子を散らすに建物の中へと避難する。
俺は未だに痛む脇腹を気にしながらも、いつでも飛び出せるよう臨戦態勢を取る。
「来た!」
穴の淵に手を掛け、ズルりと落ちる黒い固まり。
先手必勝。間髪入れずに、踏み込む。
抜刀術を仕掛け、魔物の右腕を切り取る。
更に前飛び、前転回避。
同じ轍は踏まず、次に備える。
「まだまだ、未熟じゃ。」
ほぼ同時に踏み込んだ先生の杖が一瞬ブレた。
途端、魔物の首がボトッと落ち、残った胴体がドサリと倒れ込む。
先生、杖は刃物じゃありません。
まだまだ底知れぬ先生の実力に驚かされる。
穴は仕事を終えたかの様に、徐々に閉じ、消えていった。
苺の時は、すぐには消えなかったのにな。
「あなた、他にも気配がありますよ。」
「うーむ。そっちを始末を優先せにゃならんか。」
キヌアさんが言うには、あちこちに魔族の気配と今回感じた魔素の溢れの気配を感じるという。
キヌアさんの謎センサーは一体なんだ?この人も謎が過ぎる。
一番近い気配は、西にあるという。
繭の子の魔素が一斉に溢れたと考えると、西にあるのはコーン達の居るウィアクティオンだ。
「先生、俺も一緒に行かせて下さい!」
コーン達が心配だ。間に合ってくれ。




