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33話

目には目を歯には歯を。


----------


「シクオさん、その子は教会に任せていいか?」

「ええ、元よりその積りです。」

 男の子の身柄を、シクオさんに託し、俺は今後をどうするか決めかねていた。

ひとまず宿へ戻ろう。


「グルルルオルロォ『やはりこどもか』」


 突如響き渡る咆哮。

そして微かに聞こえる言葉。


 振り返れば空に羽ばたく黒い影。

魔族はここにも現れたか。


「シクオさん、町の人の避難を。ここは俺が食い止める。」

「出来る限り早く戻ります!」

「苺も行って!」

 苺をそう押しやって、避難誘導を始めるシクオさんに着いて行かせる。

 

「俺が相手してやるよ!」



「ガルルオオルロオウオオロ『あのこどもはどこだ』」


「魔族に渡す子供は居ない!諦めろ!」



「グルルルルロルロオオ『うるさいやつめ』」


 魔族は猛禽が獲物を仕留めるかのように、翼を畳み俺に目掛けて一直線に落ちてきた。

 

 

 横に踏み込み、跳躍。

 

 魔族が地面に拳をめり込ませ、こちらを睨む。

 

 地面を片手で受け止め、勢いのまま半回転。

 

 着地の姿勢の魔物を見据え、足に目一杯の力を込めて体を押し出す。

 

 左手で鞘を固定し、右手でこれ以上ない程の早さで刃を引き上げる。

 

 切っ先三寸、鞘に引っ掛け、力を貯める。

 

 開放すれば、刃先は勢いよく弾け、走る。

 

 見よう見まねの抜刀術。

 

 刃は魔族の脇腹に触れ、食い込み、裂き、そして振り抜ける。


 以前、魔族と戦った時は文字通り、刃が立たなかった。

だけど今は、先生の教えを修め、バーンさんの刃が俺を助けてくれる。




「これならっ!」


 そう口にした次の瞬間。

俺の体は、くの字に折れ曲がり、そして宙を舞い、小屋に激突した。


 何が起こったのかは分かった。

魔族の豪腕が、振り抜いた俺の右腕の下を通り、脇腹を捉えた。


 たった一振り。

俺も、魔族も、共に一振り。


 この違いは大きすぎる。

ちょっとの工夫、ちょっとの技術、ちょっとの執念。

そんな生ぬるい物で埋められる物じゃない。


 甘く見すぎていた。

この世界で人類の敵と呼ばれる、魔族の強さを。



「グルルオオルオオオ『こどもはもういい』」


「グロルルルォロル『ぼたいがあるかぎり』」




 ぼたい…?母体の事か?

 


「おいお前、杏子はどこだ!」


「グルルロオオオオオオ『うるさいぞ』」


「答えろよ!杏子をどこにやったんだ!」


「グルル「バオオオオオオオオオオオオ」



 前触れも無く、突然やって来た。


 魔族なんて、もうなんの問題じゃない。

 

 この咆哮、あの影。

 

 世界の終わりがやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれは…

 

 

 ドラゴンだ。

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