2話
「なあ爺さん必殺技教えてくれよ、必殺技。ド派手なカッコイイやつをさ」
なんて軽口を叩くのは当然俺ではなく、たわけ者と杖で頭を叩かれてるコーンだ。
この村にやってきて二度目の冬。
修行の相手はコーンしか居ない為、強くなった実感はさほど無い。
正直な所、この調子でいつ杏子を探しに行けるのか、酷く不安になってくる事がある。
この世界で杏子の身の安全の保証もないわけで、早く探しに行きたい気持ちが燻っている。
ゲイン先生には、詳しい事情までは話していない。
コーンみたいな単純な奴くらいしか信じないだろうし。
ただ、あまり時間が無いと相談した事はあるが…
「未熟な腕では死ぬだけじゃ」と一蹴されてしまった。
正月。誕生日を祝う風習はないらしい。
尤も俺は杏子と一緒に祝えるようになるまでは、祝う気にはならないだろう。
年越しの祭事なども無いようだ。
農村であるここドエル村、春と秋以外はさほど重要ではないのだと。
その昔この村にもダンジョンが有り季節に関係無く賑わっていたが、ドエルさんが閉じたとか封印したとか。
カミラおばさんの曾祖母さんの時代の事で、カミラおばさんもよく分からないそうだ。
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「今日は魔物で訓練じゃから怪我せんようにな」
「よっしゃ実戦だぜ実戦。爺さん分かってんじゃん。」
目的地は村から北に徒歩30分の森の中。山脈に向かう為やや上りが厳しい。
ここら一帯は積雪地域の為、ゲイン先生やコーンは慣れてる様子。
俺が一番足を引っ張っていた。都心じゃ雪は滅多にみなかったし、仕方ないよね。
意気揚々と森の中に突進していくコーンを後ろから追う。
姿が森の木々で見えなくなった頃、コーンが血相を変えて戻ってくる。
その後ろには狐みたいな魔物が二匹。
「コーン、今助ける」
「おう、任せた!」
あれ共闘じゃ…?と思う暇もなくコーンは俺を通り過ぎ去っていった。
仕方ないやってやるさ。杏子を少しでも早く見つける為にも。
防寒着で多少厚めになっているけど、噛まれたら痛そうだな。
なんて思うのもつかの間、一匹が飛びかかってきた。
雪のせいか膝の高さまでしか飛びかかれないみたいだけど、こちらも雪で足を取られ交わすのも一苦労。
少し距離を取ると、飛びかかって来るので、二度目でタイミングを合わせて剣を薙ぐ。
一刀両断とは行かなかったが、息も絶え絶えという所。
もう一匹が怯んでいる隙にトドメを刺す。
もう一匹は警戒して飛びかかって来なくなってしまい、膠着状態になった所で
「俺が退治してやるぜ」とコーンが走って戻ってきた所で、森の中へ逃げていった。
コーンのお陰で緊張感が一気に抜けてしまった。
いざ自分の手で魔物とは言え、生き物を殺した現実に襲われた。
左手が震え、剣を握った右手は硬直したまま、言う事を聞かなかった。
「よくやった、今回はここまでじゃ。とでも言うと思ったかたわけ者。あと三回は実戦してもらうぞ。特にコーンはな。」
厳しい先生の言葉を貰い。未熟さを思い知らされた。
その後本当に三回魔物相手の実戦を行い、コーンは肉体的に堪えたようだった。
精神面では俺の方が圧倒的に不慣れだったわけだ。
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日差しの暖かい日が続き、雪解けの季節がドエル村にも訪れた。
もうすぐこの村に来て丸二年が経とうとしている。
修行の成果は狩りで実感出来た事もあり、自信もついてきたので、ゲイン先生に修行の進捗を伺いにいった所、後二年はここで励めと言われてしまった。確かに、高々二年足らずで生き残る技術が身につくとは到底思えない。ましてや冒険者として依頼をこなし、名声を手に入れるまでの技術とは一朝一夕で身に付くものではないはずだ。
それでも後…二年…。
その晩にコーンと相談をした。
「先生は後二年は村を出るなと言うが、正直待てそうにない。」
「なら話しは早い。もうじき定期馬車も回ってくる時期だ。南のウィエダまで行っちまおう。俺もそろそろ暴れたくてウズウズしててな」
南のウィエダにはダンジョンがあるらしい。
それも比較的難易度が低く、手始めにはもってこいだとコーンは言う。
二人の意思は決まり。定期馬車に乗りウィエダに。
正確な運行日程は無いため、用意だけは早めに整えておく必要がある。
先生を裏切るような事になってしまうのが心苦しい。
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「コーヘー、定期馬車が着いたぜ」
「分かった、荷物を運び込もう」
家の裏から周り、荷物をこっそり馬車に積み込む。
後は出発前にカミラおばさんに挨拶を済ませる。
「そうかい、もう行くのかい?寂しくなるね」
「短い間でしたが、お世話になりました。カミラおばさんのお陰で立ち直れました。」
カミラおばさんには借金取りに身ぐるみ剥がされたと勘違いされたままなので、そのままの感じで挨拶を済ませた。
村の他の人達にも挨拶をして行きたかったけれど、ゲイン先生にバレると不味いので、おばさんだけに留めた。
尚、コーンは誰にも言わずに村を抜け出すと言うので、こっそりカミラおばさんに借りていた部屋にコーンも一緒に行く旨を書き置きで残しておいた。
親に心配は掛けちゃ駄目だよな。
(全裸だった為)
人目を憚るように村に迎えて貰い
人目を憚るように村を去るのは少し切ない。
ドエル村に戻る時には胸を張って戻ってこよう。
そう思いを残しコーンと二人馬車の下にしがみ付くのだった。
「コーヘー、これキツイな。」
「そう…だな…」
(我ながら締まらないな…)




