第六十九話 砂のような水
9月3日。
今日もガガルパーティーでの依頼だ。
依頼はもちろん二流案件、この前の堕星の殲竜のこともあるし、近頃砂漠にはあまり行きたくない気持ちが強くなってきてる。
と言っても……行くしかないんだがな。
ーーーーーーーー二流依頼ーーーーーーーー
推奨等級 上級
報酬金 大金貨50枚 提供 依頼者
依頼者 王都在住の老人
場所 ダウラ砂漠 砂城跡地
内容
ダウラ砂漠の少し先にある砂城跡地、
あそこに希少な魔法石が眠っていてのう……
急遽それが必要となったんじゃ。砂城付近は、
危険な暴野もおるから気をつけての。
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砂城跡地。まぁ普通に生きてたら訪れない。
元々ダウラ砂漠は6000年前は平原だったらしく、
多くの国が南部にあったって話だ。
今じゃ砂の中に町は埋もれて城だけが残ってる。
それとすでに目的地には着いてるんだが、
早速城付近に暴野が何体か見える。
「砂暴知族がいるな……メグバ」
「了解、みんな魔法準備」
メグバさんの指示で魔法使いたちの何人かが、
杖を構えて魔法陣を杖の先に作り出す。
「放てッ!!」
その言葉と共に様々な属性の魔法が放たれて、
砂暴知族たちは一掃された。
「あの感じ……群れから離れて行動してた奴らですネ」
「あぁ、だからおそらく、砂城を縄張りにしてる暴野は他にいるか……そもそもいないかのどっちかだな」
ガガルさんの考察には俺も同感だ。
特別大きい魔力も感じられないし、
デカい怪物の姿だって見えたりしていない。
ただ、油断は出来ないな。
「ガガル、終わったよ」
「んじゃ行くか」
辺りにいる暴野を蹴散らしたあと、
俺たちは砂城跡地へと足を踏み入れる。
「……レクセトみたいね」
「うん……ちょっと雰囲気似てるかも」
リルメスとフリィアちゃんが言う通り、
微かに感じられる町の面影は首都レクセトに似てる。
それもそのはず、グロワール王国は元々この大陸に住んでいた者らが建国した大昔の国。建築技術は向上しようとも面影は残るんだろう。
なんだか歴史を感じる場所だ。
……浅すぎる感想だがな。
「……? リルメスちゃん、なんか足に冷たい感じが」
「えぇ? そんなのただの勘違いで──」
トプン。
「は?」
トプンなんて音が聞こえた時、すでにフリィアちゃんとリルメスは砂に沈んで腕だけが見える状態だった。
それを見てグラバさんが助けようとするも、
あと少しのところで完全に沈み切ってしまう。
「お嬢様ッ!!」
「な、なんでいきなり沈んだんです……!」
【全知脳発動】
【砂触食族についての知識】
お前……! 砂漠にもいるのかよ!!
【砂漠のみに生息する触食族の亜種個体。
非常に大きな身体を持ち砂を纏えば、
足場に擬態して獲物を待ち伏せする。
口内が非常に広く、一本の触手に毒針がついている
毒性の粘液を纏った触手は非常に厄介】
マズい、いくら二人でもこのままじゃ殺される。
【*死のリストが更新されま──】
わかってるわ!! どうせ赤か黒……
どうする……とりあえずぶん殴ってもらおう。
「グラバさん地面をぶん殴ってください!」
「っ、わかりました」
即座に地面を殴って砂埃が辺りを舞うが、
すでに砂触食族は逃げてしまったらしい。
「クッソ、一手遅れた……」
するとガガルさんが。
「……ケルエタさんとグラバのおっちゃん。
あの二人任せてもいいよな?
ちょっと厄介な奴らが出てきたぜ……」
どうやら一気に、この砂城跡地にいる暴野を刺激してしまったらしい。
現れたのは大砂暴知族……上級がデフォルトで、
砂暴知族の上位種に当たる暴野。
「……わかりました。二人は俺たちがどうにかします」
ガガルさんたちが負けるとは思えないが、
かなり苦戦するのは確定してるだろう。
「グラバさん行きましょう」
「えぇ、早く助け出さねば……」
……なんでだろうな。なんであの二人だけ呑み込まれた? そうすぐに毒針に刺されるとは思わないが時間の問題って感じもする。
もしかしたら、二人だけで倒してくるか?




