第10話 サイドメニュー研究~とんかつ賢者編~
トレッキングシューズにジャケット、帽子にアームカバー。バックパックとトレッキングポールも装備。
私は今、山に来ています。
とんかつ賢者さんの世界ではクラーケンが名産。これは蛸タイプなんだけどそれは名産だけに普通に買ったんだよね。
それで隠れた名産品としてサーモンがいるんだけど、この世界のサーモンは川を上るんじゃなくて山を登るんだって。
山頂で産卵する生態なんだけど、サーモンも回転すしには必須と言っていい人気のネタだしイクラも欲しい。
そこでとんかつ賢者さんと一緒に山登りをすることになったんだよ。不思議なことはないよ。だって異世界だもん。
登山は久し振りだったし一応ちゃんと装備をしてきたんだけどさ、あんまり必要なかったかも。
賢者さんの魔法は私たちを包み気温の変化を防ぎ、草木や虫なども寄せ付けないし。
山の土は柔らかくて歩くのが大変かと思ったらそもそもホバーしてるし。
流石は10万の魔法を操る賢者さんであったのです。私だったら覚えてる魔法を覚えきれないや。
「そろそろ山頂ですね。少し開けた場所が出てくるんですがそこが産卵スポットになってるはずです。もう少し頑張りましょう」
うん、頑張ってないんだよね。浮いてるだけなんだよね。でも賢者さんは魔法使ってて大変なのかな?そんなふうには見えないけど。
それか賢者ジョーク?細かいことは気にしたら負けだから気にしないでおこう。
山頂は本当にすぐそこで。開けたその場所に臨時でテント張って拠点作って、ま、全部魔法で一瞬だったけど。
「じゃあこれから捕獲の準備をしますね。あ、これ耳栓です。特殊な耳栓なので他の耳栓使っちゃ駄目ですよ。はい、付けましたね?
えー、今日から新学期が始まります。みなさんは夏休みの間、それぞれになにかしらの…………――――」
耳栓をしているから良く分からないけど賢者さんは結構長い間ずっと口を動かしてたんだよね、なんかの詠唱かな?
「はい、もういいですよ。全体睡眠魔法の校長先生のお話を使いました。これで山全体の生物は暫くの間起きて来ないほど深い眠りにつきました。鮭を狙ってくるクマとかも面倒ですから。これで鮭は取り放題ですよ」
耳栓を外す合図のあとに聞いた話はもうこれ冗談だよね?確かに全校集会のあの話は眠くはなるけどさ。
10万も魔法あるんだからもっとお手軽なやつはなかったんだろうか?それともやっぱり賢者ジョーク?
どうにもやりづらい賢者さんとの絡みだけど鮭とイクラのために頑張らないとね。楽なのは確かだし、感謝なんだけどさ。
マウンテンサーモン。この山で取れるこの世界の隠れた名品なんだけど。この鮭は元々空中も泳げる?って言うか飛べるから山登りの途中でもエサは食べてるんだよ。
だから産卵直前でも身が細くなることはない、というか産卵のために栄養を蓄えていて美味しいまである、だからこそ名品なんだよね、
それで身も美味しいんだけどなにより卵が美味しい。取れたての鮭から卵巣を取り出して塩水で洗って。
十分に成熟してればイクラに出来るからね。一粒すつほぐしていけば筋子からイクラになるよ。
今日はいったん試食もするからサクッと作ってっちゃおう。ぬるま湯に塩をいれてその中で膜から裏返すようにして。
一粒ずつポロポロとほぐれてイクラが出来上がっていく。マウンテンサーモンのイクラはその赤みと透明感が強くて本当に宝石みたい。
ほぐれたイクラを更に丁寧に優しく。潰れないように細かい汚れを取り除いていく。
そうしたらざるに上げて水気を切って。後は味付けすれば普段目にするイクラの完成だね。
醤油漬けや味噌漬け、塩漬けなんかだよね。賢者さんの世界は味噌と醤油が手に入りにくいからお礼に作っといてあげよう。
醤油と味噌の方が漬け込みに時間が掛かるから塩漬けで試食かな。昆布だしと塩で調整した調味液につけてっと。
コッチは割とすぐ食べられるけどその間に他の色んな試食用の料理を作っちゃおう。
マウンテンサーモンはお刺身もオーケーだから普通のお刺身と。これも背中とお腹で味が違うから両方。
サーモンは人気ネタだからバリエーションも豊富だよね、炙ったり漬け込んだり生だったり。トッピングも色々。
それとサイドメニュー候補なんだけど
「僕はやっぱり揚げ物だね。唐揚げとかもいいし串揚げみたいなのも好きだったね。天ぷらもいいけどお寿司で醤油使うからさ。
串揚げにソースだと味も変わるから新鮮に食べれて僕は好きだったな。変わったとこだとタコ焼きかな。あれどこでもちょっと食べたくなるんだよね。焼肉屋さんとかにもあったりすよるね。普段食べない癖になんか食べたくなっちゃうんだ」
流石とんかつ賢者さん。やっぱり揚げ物は外せないよね。それとたこやきはなんだろう、ソースが好きなのかな?ソース賢者さんに改名かな?
でも確かに普段あんまりたこ焼き食べなくてもあるとちょっと種たくなるって言う気持ちは分かるかも?不思議だよね。
たこ焼きは鰹節がないからちょっと物足りないかもだけど昆布といりこで頑張ってみようかな。それと揚げ物だね、
拠点前に臨時キッチンを作って貰って、調理開始だね。
「出来上がり次第おだしするので順番に食べていっちゃってくださーい」
「試食は楽しみだったんだよ。わざわざ山に登ったのもそのためさ。ではまずはサーモンのお寿司が3種類だね。
まずは普通のサーモン。うん。臭みはなく新鮮なサーモンの味が楽しめるね。多少熟成の魔法を使ったから味もでてる。推ししいよ。しっとりとした身の食感に程よい脂の乗り。これは人気が出るのも当然だよね。
そしてこれはトロサーモンか。こっちはトロッとした食感にたっぷり乗った脂の味! 僅かに感じる三位はレモン? 油をしつこく感じないいい工夫だね。
最後に炙りサーモン。これもハラミ部分、トロサーモン炙りだけど、うん! 炙ることで脂の旨味が活性化されて口の中で弾けるようだ!これは山ワサビを刻んだものが乗せられてたけど鮮烈な辛味と風味が炙ったトロサーモンの強い味とマッチしてて旨い! 色んな味が楽しめるしサーモンは偉大だね。
次はイクラの軍艦。おおっ!口のなかでプチプチと弾ける食感がたまらない。それでいてその後をねっとりと旨味の洪水が口の中に溢れて。塩と昆布のシンプルな味付けがマウンテンサーモンのイクラの持つ味そのものをダイレクトに伝えてくる! これはやっぱり隠れた名品と言われるだけのことはあるね。美味いよ」
鮭とイクラはそれだけでも十分にお寿司の満足感を得られるよね。鮭は色んな調理法があるし部位によっても味の違いを楽しめるからね。
それにイクラも。マウンテンサーモンの最大の特徴ともいえる最高級イクラはそのものの味を引き出せればね。それは美味しいよね。
まだまだあるよっ?
「次はこれは蛸の唐揚げか。クラーケンだけど。まあ蛸ってことで。これはコリっとした食感が楽しめていいね、お寿司は結構柔らかい食感が多いから、こういう食感は嬉しいよ。塩コショウにレモンでさっぱりとしつつ揚げ物としての満足感もあるし。ウチの世界のクラーケンはアカシュの蛸なんて言われててね。美味しいんだ。
そしてコレはサーモンフライ。鮭は油との相性がいい魚だから、揚げ物はいいね。これはタルタルソースかソース。やっぱりソースかな。あれ以来持ち歩いてるんだ。
うーん、さっくりほろほろとした食感に鮭の旨味、ソースがそれを引き立てて、あ、皮つきだね。鮭の皮は本当に美味しいよね。
それと皮目のところの旨味と言ったらもうたまらない。昔の殿様が城と交換してもいいって言ったのがのがよく分かるほどだ。
そしてこれは? サーモンフライがもう一つ? これは! レアだ。レアサーモンフライ。衣はさくり、中はしっとりと。
食感の対比がたまらない。それに加熱された鮭の味とレアな部分のジューシー感がたまらない。ポン酢、タルタルソースによく合うね。
どっちも美味しい。でもこれも、ソースで食べてみたい。おおっ!ソースも合うじゃない! コレ、色々なソースで食べたいからもう一枚頂戴?」
よし。蛸唐揚げは安定した美味しさだったし、サーモンフライも好評だね。
鮭の皮は美味しいからね。とは言え流石に皮は生って訳にいかないので、今回はフライで楽しんでもらうことにしたんだ。
本当に色んな料理に合うよね鮭って。カレー勇者さんのところでウニのクリームパスタ作ったけど鮭のクリームパスタも美味しいよね。
それとレアカツ。レアサーモンフライも美味しいんだよ。コツは半解凍、今回は半冷凍だったけど、少し凍った状態から揚げていくことかな。
それでちょうど中が温まったくらいのレア状態の時に衣が揚がるようにすると外はカリッと、外側サクッと、中はしっとり。
食感と味のグラデーションが楽しめるんだよ。タルタルソースかポン酢とかがおススメだけど、そこはお好みだね。
とんかつ賢者さん改めソース賢者さんはソースでも食べてたけど。でもそんなソース賢者さんでもタルタルソースとかポン酢も楽しんでいるようで。2枚目オーダーいただきました!
これは採用かな?
色々サイドメニューも固まってきたしお寿司の研究も進んでる。あとはその時までしっかりと研鑽していくことかな。
特貸「回転すし」開店準備は整ってきたよっ!




