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94話 これが俺の、俺たちの力だ!

「一人デハないだと?」

「ああ」

「言うねぇ。 新しいお仲間ハとっくに逃げてるじゃないカ?」

「……ここにいる」

 ジェイクは自分の胸に拳をあてた。吹き荒ぶ炎の嵐。

「ダッタら何だ?」

 たじろぐギース。

「貴様には分からん事だ!」

「!?」

 一瞬で距離を詰め、炎と共に剣を振り下ろす。その剣はギースの左腕を切り飛ばした。

「いっテーなぁ!」


「……」

 ジェイクは先ほどの手応えに違和感を覚えた。いくら召喚獣の力で再生できたとて、なるべくダメージは負わない方が良い。だが先ほどのギースのそれはむしろ、まるで自ら差し出した様にも思えた。

 それに何より、爆炎を纏う一撃をくらったのにも関わらず、全く怯んでいなかった。

(奴はもう痛みを感じていないのか?)



 ギースはいとも簡単に左腕を再生した。

「!!」

「お前はオレには勝てなイ」

「貴様…!」

「ヘッ!」

 伸縮するギースの両腕が、まるで鞭の様に迫り来る。ジェイクはそれに怯むことなく突き進む。

「ナニ!?」

「はっ!」

 ジェイクの剣は的確にギースの胸部に狙いを定めている。魔力核を破壊して召喚獣への魔力供給を断とうとの考えだ。

 手応えは……ない。

「そんな、まさか?」

「俺ノ魔力核を狙っタのであれば残念ダッタな。俺はニンゲンを超えた存在なのだ!」


 瞬く間に傷口が塞がるギース。そう豪語するだけのことはある。


「これだけデは面白くナイだろ?」

「何?」

「まズは……」

 ギースの左腕が伸び、ハイゴブリンの死骸に突き刺さる。

「!」

 何かを察知し、すぐさま行動に移すジェイク。

「はっ!」

 ジェイクの剣はギースの左腕を切り飛ばした。

「ははハ!」

 ギースの左腕の切断面から触手が伸び、近くのハイゴブリンに突き刺さる。何かを吸収するごとにその触手は太く大きくなる。やがて、左腕は何事もなかったかの様に元に戻った。

「な!?」

「面白イだろウ?」



 瞬時に傷が癒やされたギース。『癒やされた』と言う表現が適切かは分からない。ただ一つ言えるのは、ギースはもはやジェイクの知っている人間ではなくなっている事だ。

(……)

 もはや一刻の猶予もない。このまま悪戯に時間が過ぎれば、切り札の【フレイムプライド】を発動する魔力すら残らない。仮に発動できても数分と持たないだろう。



 ジェイクは大きく、深く深呼吸した。

(やはり奴はもう人間ではない…! それに攻撃しても次々と再生してしまう。で、あれば、どうするべきか?)

 ギースは不敵に笑いながら一歩一歩近づいてくる。


(そんなもの決まっている! 頭を潰し再生できないように全て破壊するまでだ…!)

 ジェイクは今一度、両手で剣を握りしめた。ついこの間、修復・改造したばかりなのにいたる所に傷がついている。


(お前も付き合ってくれてありがとな。もう少しだけ付き合ってくれるか?)

 ジェイクの脳裏に、かつての婚約者と仲間たちの姿が浮かんでは消えて行く。

(ヘレナ……みんな……奴を倒して……俺も……お前たちの元に……)




「貴方は……生きて!」

「!!」

 ジェイクは不意に懐かしい声を聞いた。

(そうだったな。お前が救ってくれたこの命、無駄にはしない。)

 胸元のペンダントが優しく輝く。

(ヘレナ……行こう。俺たちで奴を止めるんだ!)

(ええ……)

 ジェイクの纏う魔力が、それまでのものとは異なるうねりをみせる。


「うおおお!」

「ア?」

 ジェイクが纏う激しい炎属性の魔力。そして炎属性を強化するように吹き荒れる風属性の魔力。

「オ前……」

「これが俺の、俺たちの力だ!」

「何ヲ…」


 ジェイクはギースに向かい、凄まじい勢いで突撃する。まるで背中に羽が生えたかの様な一撃。凡そ常人の目には捉える事ができないその速度に、ギースは右手を失う事になる。

 その攻撃は凄まじい炎となり、ギースの切断面を焼き尽くす。

「な!? くそ!」

 ギースは咄嗟に左腕で剣を拾い上げ、切断面をさらに切り落とす。どうやら、焼け爛れて組織が死滅した切断面からは、触手を伸ばす事はできない様だ。



「どコダ!?」

「ここだぁー!」

 方向転換したジェイクが追撃をかける。ギースはかろうじて直撃を避けるも、剣を弾かれた。加えて、強大な炎によって体表にダメージも受ける。

「クソ!」

 ジェイクは突撃から再び方向転換し、ギースに向かう。

(思ったより……加減が、難しい……が!)

「はっ!」

「ガアあ!」

 右足を破壊されたギースが倒れ込む。


(これで……決める!)

 ジェイクは空高く飛び上がった。再生が追いつかないギースは逃げる事が叶わない。

「おおお!!」

「アアアー!」

「ガァクァー!」

 ジェイクは背後から大きな衝撃を受ける。

「ぐっ!」

 ギースの頭部を捉えたであろうその一撃は、背後からの奇襲によって阻止された。

(一体……何が!?)

 周囲をよく観察しようとしたジェイクの眼前に飛び込んできたのは、鳥魔獣の姿だった。剣を振り上げ、何とか追撃をかわす。

(何故急に!? しまった! ギースは?)

 ジェイクはギースの位置に向き直る。ギースの姿にジェイクは危機感を強めた。


「ははハハハ!」

 ギースは全身の再生を終え、剣もその手に握っていた。そして先ほどの鳥魔獣はギースの上空をゆっくりと飛んでいる。


(さっきのは奴が操っていたのか。だがいつの間に?)

 ギースのある行動がジェイクの脳裏を掠めた。

(まさか……、奴は敢えて切断された部位を回収しなかったのか?)



「お前ダケそれはズルいだろう? アあ、抜け駆ケハお得意だもンな」

 ギースは手招きをし、鳥魔獣を近くに呼び寄せる。

(何をする気だ?)

 ギースの背中から触手が無数に生えたかと思うと、その触手が鳥魔獣を掴み取り、ゆっくりと吸収する。

「う、グオオオ!」

 ギースの背中から翼が生える。その大きな翼を使い、悠々と空に浮かぶギース。



「ハハハははハ。ハーッははハハは!」

 ジェイク目掛けて急降下するギース。そのスピードはジェイクと互角だった。防御するジェイク。ギギギと金属が擦れ合う音が響く。

「俺、強イだロ? お前を倒シテ俺の方ガ上だト証明シテヤる!」

「貴様と言う奴は……そんなに勝ち負けにこだわるのか?」

「ソウダ」

「何だと!?」

「オ前がソウさセタ!」

 溢れる憎悪に、ジェイクは真正面から立ち向かった。


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