63話 剣を…持ってきましたー!!
「おおおっ!」
魔力を高めたジェイクが、ライノス種とすれ違い様にバスターソードを振るう。
「ズォオオ!」
「浅いか!?」
確かにバスターソードで切り付けることはできたものの、ライノス種が炎を纏っているために傷口はすぐに塞がってしまった。
「【ファイアボール】!」
ボボ!ボン!とラッフェルが追撃する。
「ゴァー!」
ライノス種が一声あげるとライノス種が纏う炎が一段の大きくなり、ラッフェルの炎を飲み込んだ。
「くっそー!」
「落ち着け。お前の本分はそのスタミナだろ。動き回って撹乱してやれ。」
「了解っス!うおおおー!!」
「!!」
回り込んだラッフェルに気付き、ライノス種が火炎弾を連続で打ち出す。
「っ!」
身を翻しながら距離を取るラッフェル。ジェイクはそれを見て攻撃の機会を伺っている。
(こいつは厄介だな。)
「ゴァー!グォアー!!」
火炎弾を乱射しながら突進してくるライノス種。その姿はまるで城塞のようだ。
「ライクー!お前の水魔法で攻撃できるか?」
「やってみます。」
だが高速で動き回るライノス種に長距離から狙い撃つのは至難の業だ。かと言って近づこうものなら、火炎弾の餌食になってしまう。後方支援タイプのライクではこれ以上の接敵は危険だ。
「【ハイドロジャベリン】!」
ライクの放つ水槍がライノス種を真正面に捉えた。直撃したと確信したライクだが、なんとライノス種は自慢の角で水槍を真正面から打ち払った。
「そんな…。」
炎に対して優位属性の水魔法が打ち破られたのは、ライクにとってかなりのショックだった。それまでに【ハイドロジャベリン】を連発していて魔力量が十分でなかったことや、距離があったと言うネガティブ要素はあるものの、ライノス種との戦いの決定打にはならなそうだ。
(だめか…。少しまずいな。)
「…っ!?」
「【ウォーターボム】!」
フィリーが巨大な水玉を出現させ、あたり一面を包み込んだ。
(こんな時に何をする!)
ジェイクが水玉の中で目線を動かそうとした時に、微かに衝撃を受けた。ドン!ドン!と間髪入れずに。
(これは、まさか…。)
水玉が解除され、視界が戻ったジェイク。その視線の先にライノス種が立ち塞がっていた。
「二体いたと言うのか!?」
前方と後方にライノス種が見える。
「ジェイクさん…。」
ラッフェルがジェイクの背中に立つ。
「ラッフェル。先にあちらの方を倒す。焦らず一体ずつ仕留める。」
「…っス!」
「お前たちは援護してくれ!こちらの個体の足止めでいい!無茶はせず危険だと判断したら迷わず逃げろ!ラッフェル、行くぞ!」
そう言って駆け出すジェイクとラッフェル。
「【ファイアボール】!」
走りながら援護するラッフェル。ダメージは与えられてはいないが、目眩し程度にはなっているようだ。
「ふん!」
すかさずジェイクが切り付ける。
「!!」
今度は手応えがあった。ジェイクはこのまま押し切れると判断し、そのまま追撃を行う。ザン!ザシュ!幾度となく切付けるその様は鬼神の勢いだ。
「はぁあああ!」
ジェイクの魔力が高まりを見せる!ライノス種もジェイクに敵意を向け、今まさに突進の構えを見せている。
「ブゴゥフフ!!」
ライノス種が赤熱した角で攻勢に出た。それに対し、ジェイクは真っ向勝負を挑む。
「くらえー!!」
ジェイクが繰り出した一撃はライノス種の角を切り裂き、そのまま頭部を切断した。が、頭部を切り落とされたライノスの勢いは止まることをしらず、ジェイクは弾き飛ばされてしまった。
「がっ、はっ!」
「ジェイクさん!」
ラッフェルが駆け寄る。
「次、行くぞ。」
「何言ってるんスか!?逃げないと。」
「…。奴はその気はなさそうだがな。」
ジェイクは二体目のライノス種に目を向けた。
「ゴゴォー!!」
同胞の敵討なのだろうか、宣戦布告なのか、地鳴りのような鳴き声が響き渡る。
「ラッフェル。援護を頼む。」
「無茶っスよ!」
「無茶でもなんでもいい!やるんだ!!」
「【ヒーリングミスト】」
遠巻きに見ていたフィリーが回復魔法を発動させる。だがラッフェルは直感的にこの位置は、フィリーの【ヒーリングミスト】の射程範囲外だと感じた。
「ん…んん…!」
(頑張れフィリー!)
ラッフェルの願いも虚しく、フィリーの回復魔法はジェイクまで届かなかった。反動でフィリーは肩で息をしている。それをライノス種は見逃さなかった。
「やばい!」
ラッフェルは無意識のうちに駆け出した。
「いやー!」
「来ないでー!」
ライクはフィリーの前に立ち、【ハイドロジャベリン】を放った。目の前の魔獣から逃げたいと言う恐怖心を何とか押し込み、強張った精神状態で放たれたその一撃は無惨に打ち破られた。
「やめろ!お前たちは逃げるんだ!」
ジェイクがそう叫ぶも、ダメージが大きく動けなかった。
「…!」
ライクは咄嗟にもう一度【ハイドロジャベリン】を放つ構えをとった。
(何をしている?先ほどまでの魔力量も込められないのに、さっさと逃げろ!)
「【ハイドロジャベリン】!」
ライクはライノス種めがけて、再び【ハイドロジャベリン】を放った。正確には、ライノス種の進行方向に向けて放った。
「!!」
【ハイドロジャベリン】で地面が削り取られ、そこに走り込んだライノス種はそのまま倒れこんだ。
「今よ!」
ライクがフィリーの手を取り逃げる。
「フゴゴゴ!」
ライノス種は転んだとろこでさしたるダメージは無いようだ。再び突進する構えを見せたその刹那。
「させるかー!」
ラッフェルが魔力を全開放し、爆炎を纏って突撃してきた!フレイムソードもかつてないほどに輝きを湛えている。
「!!」
ドン!とラッフェルはフレイムソードをライノス種に突き立てた。だが…。
「フッゴォー!」
素早く体を転回させ、強烈な頭突きをラッフェルをお見舞いした。
「ッッッ!」
あまりにも強烈な一撃を受け、吹っ飛ばされたラッフェルの魔力はたちまち霧散してしまった。
「はっ!はっ!ごぶっ!」
ラッフェルの戦闘不能を見届けたライノス種は口元に炎をたぎらせた。
「あれは…!?」
先ほどの火炎弾の比ではないであろう攻撃が繰り出させるであろうことを、ジェイクは直感した。
(させない。絶対にそんなことはさせない!)
ライノス種が炎熱線を打ち出したと同時にジェイクは渾身の【ファイアバースト】を炎熱線にぶつけた。
「!!」
ライノス種の炎熱線は射線がずれ、ライクたちへの直撃は免れた。そしてライクたちはそのまま戦線を離れた。
(良かった。間に合った。)
「フゴー!フゴー!!」
怒り狂うライノス種はジェイクを標的にした。
(くっ、思ったより魔力を使ってしまった。)
ジェイクはバスターソードを構えようとするものの、ボロボロの状態で強引に放った【ファイアバースト】の反動で手に力が入らない。
(まずい…。作戦ミスだったか?不運か?いや、これは…俺の…)
ジェイクが絶望を感じたその時、懐かしい声を聞いた。
「…さ…ん」
「!?」
「…もしか…して…?」
「ジェイクさーん!」
「…師匠。」
「ヒッカか!?」
「剣を…持ってきましたー!!」
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