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51話 それじゃ、明日も頑張っていくぜ!

「こんな使い方もあったのか…。」

試しに再び剣を振るう。

「はっ!はっ!」

今度は木の枝を二本切り落とした。どうやら風属性を帯びたバスターソードは、斬撃を飛ばせるようだ。

「面白い性質だな。」

ジェイクも驚いた表情を浮かべていた。

「ですね。そうだ!ジェイクさんの場合はどうですか?」

「俺か?」

「はい。炎属性だとどうかなと思って。」

確かに炎属性を帯びた状態でも斬撃を飛ばすことができるのであれば、攻撃の機会を作り出すことができそうだ。

「確かにな。もう一度貸してくれ。」

ジェイクは再びバスターソードを手にした。そして炎属性を発現させる。

(やはり炎属性がよく馴染んでいる気がする。さて、斬撃は飛ばせるかな?)

「ヒッカ、少し離れてくれるか?」

その言葉にヒッカは返事をして、場所を離れた。それを見届けたジェイクは、炎属性をたぎらせたバスターソードを横一文字に振り抜いた。が、斬撃が飛んでいる気配はない。

(斬撃が飛ばない?)

そう思いながらも、さらに魔力を高めバスターソードを振るうも結果は変わらずだった。

(俺では斬撃を飛ばせないと言うことか!?)

少し落胆の表情となるジェイク。

「ジェイクさーん!そっちに行っても良いですか?」

「ああ、構わない。」



「斬撃飛ばないんですか?」

「そうだな。逆にヒッカはどうやって斬撃を飛ばしているんだ?」

「どう、と言われても風属性の魔力を剣に乗せて、そのままそれを振り抜く感じです。」

「ふむ。こんな感じか?」

ブン!と剣が振るわれた。が、先ほどと同じように斬撃が飛ぶ様子はない。

「俺もやってみましょうか?」



「くっそ、ダメだぁ!」

ヒッカは炎属性を解除した。先ほどから炎属性を剣に帯びさせてはみたものの、斬撃は飛んでいるようには見えない。もっとも、ヒッカが普段使える炎属性は低位相当の魔法のため、そもそも絶対的な魔力量が足りていないかもしれない。



「お前でも無理か。いや、試しにもう一度風属性で斬撃を繰り出してくれるか?」

コクリと頷き、風属性をバスターソードに帯びさせるヒッカ。そのまま剣で一太刀繰り出すと、離れた場所にある木の枝を切り落とした。つまり、風属性を帯びると斬撃が飛んだのだ。

「なるほどな。となると、これは風属性でないと斬撃を飛ばせないのかもしれないな。あるいは単純にもっと魔力量が必要なのか。」

「何となく前者っぽいですね。ジェイクさんなら魔力量は十分だと思いますし。」

風属性の魔力を解除してヒッカが言う。

「そうかもしれないが腑に落ちないな。ヒッカ、お前は炎属性をその剣に乗せた時にどう思った?」

「どう、と言われても難しいですね。何となく、炎属性を乗せた時は剣が喜んでいるような気がしました。」

「!!」

ジェイクは驚いた。やはりヒッカもバスターソードと炎属性の何らかのシンパシーを感じていたようだ。

「実は俺も同じようなことを感じていた。炎属性だと剣が手に馴染むと言うような感覚だ。」

再びジェイクはバスターソードを借り受けた。

「それだけに、風属性にのみ反応するのが疑問だ。」

ジェイクは炎属性を全身に纏い、剣を振るった。

「フン!」

熱風があたりに広がる。が、それは斬撃が飛ぶようなものではなかった。

「…。できるような気がしたが、当てが外れたな。」

そう言ってジェイクはヒッカにバスターソードを返した。ジェイクが感じた感覚は、ヒッカも同様に疑問だった。ヒッカ自身は炎属性をバスターソードに乗せた時、何とも言い難い奇妙な感覚に襲われた。ジェイクの言う『馴染む』と言う表現が適切かは分からない。が、落ち着くような懐かしいような…そんな不思議な感覚だった。

だがその答えを、二人はまだ見出せなかった。

「その剣を使わせてもらって戦い方は見えた。一度部屋に戻って今後について決めるか。」

「はい!」



二人は再びジェイクの部屋に戻り、今後について話し合った。

「よし、ではその手筈で行こう。任せたぞ。」

「はい!なるべく早く戻れるようにします!では俺はこれで。今のうちに準備しておきます。」

「頼む。夜に改めて全員に話す。皆にも声をかけておいてくれないか。」

「分かりました。伝えておきます!」

ヒッカは元気よく駆け出した。




「師匠一人だけで行くんスか!?危なくないっスか?」

まず声をあげたのはラッフェルだった。

「そうだよ。材料を仕入れてくるだけだから、そんなに危なくもないし、数日かな。」

「そんなぁ。俺もついて行きたいっス…。」

「その気持ちはありがたいけど、少しでも早く行きたいからさ。俺一人の方が都合がいいんだ。」

「そうっスけど…。」

「お兄ちゃんもついて行ったら日が暮れちゃうよ。それに私のこと守ってくれるんじゃないの?」

はっとした顔でフィリーに向き直るラッフェル。

「そだな。ゴメン。」

ラッフェルは素直に謝った。

(それは俺もだ。三人とも守るって決めてたのに…。)

「ラッフェル、俺の留守の間、二人を頼むよ。」

「っス!師匠の頼みなら任せて欲しいっス!」

ラッフェルは馬鹿でかい声で返事をした。ヒッカは軽く頷き、そしてライクとフィリーにも顔を向けた。

「ライク、フィリー、二人とも無茶はしないでね。」

「大丈夫です。お兄ちゃんが頑張ってくれますから!」

フィリーはドンと来い、と言わんばかりの反応だ。

「うん。私たちは大丈夫。でも早めに帰ってきてね。」

対照的にライクは少し影のある表情だった。

「分かったよ。早めに帰るようにする。」

ヒッカも真剣な顔つきで応えた。



地図を広げながらジェイクが今後の方針を話し始めた。

「さて、これがこの辺りの地図だ。ヒッカが向かうディムシース地方はここだ。対して俺たちが次に向かうのはここ、サイドリャルの町だ。そしてさらにここを抜けてヒュージアル都市に向かう。」

ジェイクが地図をなぞって皆に説明した。

「サイドリャルでもしばらく情報収集を行うつもりだ。ヒッカ、お前とはここで合流するつもりだ。ただ、何らかの予定外のことがあれば、宿の主人に伝えてヒュージアルに向かう。いいな。」

「分かりました!任せてください。」

「頼む。ここまでの流れで、他に確認したいことはあるか?」

四人とも首を横に振った。

「よし。では今日はここまでだ。明日の朝にここを発つ。しっかり休んでおくように。」

「みんな。俺、明日はかなり早めに出るからさ。」

ヒッカは右拳を前に突き出した。真っ先に反応したジェイクは、それに同じように拳を突き合わせた。

「頼むぞ。こちらのことは案ずるな。」

それに三人が続く。

「っスね!師匠!一人だから気をつけてっスね。こっちは俺が師匠の分も働くっスから!」

ラッフェルの返答にヒッカは思わず吹き出した。

「頼もしいな。」

「ヒッカくんも本当に気をつけてね。」

「ありがとう。気をつけるよ。ライクたちもね。」

「ヒッカさん、早く帰ってきてくださいね。」

「ああ。全力で用事を済ませてくるよ。任せといて。」

五人は明日に向かって気持ちを一つにした。いや、気持ちはすでに一つだったかもしれない。それを態度で確認しただけだ。

「それじゃ、明日も頑張っていくぜ!」

「「「おー!!!」」」

店内に三人の声が響いた。ジェイクは慌てて静かにするように、とのジェスチャーをしていた。


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