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48話 アイツ…、どうやって倒せば良いんだろ?

【大地の賢人】を発動できたヒッカは、理解を進めるために試行錯誤を繰り返していた。結果として、いくつか分かったことがある。

一つ目は地面の土は投げなくても良かったと言うことだ。投げた土に地面の土が集まって土の拳になるものと思っていたが実際は違った。厳密には、地面に打ち込んだ魔力に土が集まり、拳が象られていることが分かった。

二つ目は象る対象は拳だけではなく、強くイメージした形になることが分かった。そんなわけで、ライノス種を打ち倒した時に巨大な土の拳になったのは、単にヒッカの戦い方が殴るイメージに引っ張られていたと言うことだ。ライノス種を何とか止めようと、我武者羅にヒッカが肉体強化魔法を使っていたため、それが潜在意識に強く刷り込まれたのだろう。試したところ土の手のひら、土の盾、はたまた土で鳥の形を造形することもできた。

三つ目は【大地の賢人】の持続時間は単純に地面に打ち込む魔力量と造形物に影響を受けることが分かった。当然、魔力を多く込めた方が持続時間は長くなる。複雑なものや巨大なものを作ると、象られるのにも時間がかかり解除されるのも早かった。

一方で、得意の【エアライド】で飛んでいる時に、地面に魔力を打ち込んでも【大地の賢人】を発動させることは出来なかった。原因を突き止められてはいないが、恐らくは魔力接地のタイミングなのだろうとヒッカは考えていた。



「うしっ!」

ヒッカは一通り【大地の賢人】の使い方を理解したことに手応えを感じ、一人ガッツポーズをしていた。

(これは思ったより使い道がありそうだぞ。土の拳で攻撃することもできるし、土壁を作れば防御にも使える。)

ヒッカは魔力を集中させ、地面を叩いた。地面から土が盛り上がり、ローグの盾を象った。やがて、土でできた盾は砂へと還った。

(一旦は良いかな?だけど、どうしてもこんなものが使えたんだろ。やっぱり父さんから教わったんだっけな?)

父グランは土属性を得意としている。優秀な土術使いであり、土属性の基本を抑えた面攻撃の魔法と物理防御が得意だった。思い返せば、土壁の魔法を見せてもらった気がしなくもない。

(父さんにも聞いてみようか。会えたら良いんだけど。)

と、ヒッカが王宮の方に目を向けた際、王立図書館の門が開門されていることに気づいた。

「しまった!いつの間に!」

夢中になりすぎていたヒッカは、自身の砂埃を払うこともそこそこに図書館に向かって走り出した。



(やっぱり良いよなぁ。図書館は。)

ヒッカは感慨深げに本の森の中を進んでいた。状況が状況だけに、人の数はまばらだ。

(武器の歴史は…あった!)

ヒッカは目指していた本棚の前で立ち止まった。

(確かそんなに昔の本ではなかったはずなんだよなぁ。)

自身の記憶を頼りに、ヒッカは本棚にある本を幾つか物色し、目を通し始めた。



「ん〜。」

大きく背伸びをするヒッカ。手当たり次第に読み漁るが、目的のものは見つけられない。かなり集中していたのだろう。目の奥が熱くなっている気がした。

(まずいな。思ったより探すの大変だ。これだけ探してるのに見つからないだなんて。)

腕組みをし、天井を仰ぐヒッカ。焦りと苛立ちを感じ始めていた。

(確かあったはずなんだ。少し変わった形の武器だったから忘れるはずはないと思うんだけど。)

そう言いながら、ページをめくる速さも上がっていた。



どれくらい時間が経ったのだろう。ヒッカはお昼の時間をとうに過ぎていることに気がついた。

(あれ?もうこんな時間か。お腹はあまり減ってないけど、少し休むか。)

本棚から出した本を片付け、出口の方に向かう。ヒッカは出口への道すがら、不意に足を止めた。そこは魔物との戦いや戦争の歴史が記された本が置かれている場所だった。無意識に吸い寄せられるようにヒッカはその中の本を手に取る。それはドラゴンとの戦いの本だった。

(これは今から百年前くらいの話か。いつの時代も魔物との戦いが尽きないんだな。)

ページをパラパラとめくる。

(これは…。)

そこには、巨大なドラゴンの姿が描かれていた。ゆうに五十メートルは超える巨体と記されていた。

(にわかには信じ難いな…。そもそも昔の人はどうやってこんな魔物を相手に勝ったんだろ?)

だが、ページを読み進めてもドラゴンを倒す作戦が記されているだけだった。

(あれ?途中なのかな?)

ヒッカは本を見返すが、特に途中で終わっている様子ではなかった。この本はこれで完結していたのだ。

(参考になると思ったけど仕方ない。この岩山で挟撃する作戦とか良い線いってると思ったんだけどなぁ。)

ヒッカは学園を襲ったドラゴンを思い返した。

「アイツ…、どうやって倒せば良いんだろ?」

ヒッカは思わず独り言を呟き、本のタイトルをメモした。

(今のうちに見つけて早めに叩かないと。一応父さんにもこの本のことを伝えるか。)

本棚に本を戻し、再び歩き始めようとした刹那、ヒッカは視界の端に一冊の本を見つけた。

(これは…。)

それは、古今東西の武器が記された本だった。



(この本だった気がする!)

昼食に向かっていた意識はどこへやら、ヒッカは本を開いていた。

「えっと…。」

まずは目次に目を通す。剣の項は最初の方にあった。パラパラと読み進めると、一枚の挿絵のところで手を止めた。

(あった…。これだ。)

それは大型の剣だった。だが、その剣の特徴はそれだけではなかった。その剣は巨大な刀身の背の下側に持ち手があり、通常のグリップにあたる部分は木製だった。この剣はロープ使いの英雄が使っていたとされるものだった。魔物との戦闘で片手を負傷したその英雄は、ロープに魔力を込めてまるで手のように自在に操っていたとのことだった。



魔力と通常金属の武器は相性が悪いことが多いためだろう。原材料の時点で加護を受けている属性があったり、加工のタイミングで複数の属性を受けることがあるのは周知の事実だ。そのため、武器の持つ属性と、自身の属性の魔力が相反したり打ち消しあってしまう。ラッフェルのフレイムソードは加工の際に意図的に炎属性を多めに与えることで、炎属性に傾くように作られている。いわば、その特性を逆手にとっている訳だ。

金属と木材のハイブリッド武器、それが今ヒッカが探していた武器だったのだ。



当時、何故そのような構造になっているのか分からなかった。だが、今ではその理由はよく分かる。

(これならいいハズだ。早くジェイクさんに伝えないと。)

武器の解説のページを確認するために、前後のページを見る。解説のページはそう多くないようだ。

(これだけか…。ん?)

ヒッカはめくったページの先の武器にも目を落とした。それは柄頭の部分が輪っかになっている剣だった。ロープ使いの英雄はその武器も使っていたとされている。

(へー。こんなことも考えるものなんだ。っと、油売ってる場合じゃなかった。)

ヒッカは本を持ち、転写官の元に急いだ。

(これくらいのページならお昼食べてる間に終わるだろう。あ、お昼は何食べよう。安心したらお腹空いてきたな。)

ヒッカの関心は素早く昼食に切り替わった。


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