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19話 師匠って言い方、面白いわね

「んん~。」

「お!」

「師匠!」

「あれ?ここは?」

「ようやくお目覚めか。ヒッカ。」

「えっと?」

「ここは私の村よ。家がほとんど壊されてるから、殆ど野宿みたいなものだけどね。」

ライクは少し寂しそうに笑った。

「え?」

ヒッカは辺りを見回し、状況を察した。


ライクの表情はどこか虚ろだ。無理もない。数日前までの村の面影はない。その惨状にヒッカは心を痛めた。潰された家、柱だけになっている家もあれば、今にも崩れ落ちそうなほどボロボロになっている家もある。今寝ていた場所も屋根も玄関も無かった。

「ところでヒッカ?」

焚き火を眺めながらジェイクが尋ねた。

「お前は炎魔法もできるんだってな?」

「そうなんですよ!いやー師匠凄かったんですよ!あのバトルガルーダを一撃ですよ!」

「…。」

「どうした?」

「分からない…です。あの時は無我夢中で、なんか勝手に体が動いたって言うか。その…上手く言えないですけど。」

「そうか。」

「??」

「いや、いいさ。悪かったな。このまま今日はここで休むか。」

辺りはもう暗くなっている。それに皆も疲れ果てていた。

「俺たちはそれでもいいですけど、ライクたちはどうするんですか?」

「…。」

「ライクの村はこの有様だからな。ひとまずフレアランドに行くのが良いんじゃないか。」

「師匠!俺たちも連れて行ってください。いや、ついて行きます!」

「君たちは…。ごめん。どうしようか。」

ヒッカはラッフェルたちも故郷を無くしていることを思い出した。

「んー。いずれにしてもここで野宿をするのは危険かな。夜を明かすにしても魔獣に襲われたら満足に戦えない。」

ヒッカは改めて全員の装備を見回した。全員軽装で特に防御面は心許ない。小型の盾を備えているジェイクや魔力を帯びたローブを纏っているヒッカも、魔獣相手に真っ向勝負するのは避けたい。

「帰りましょう。しばらく休んだので元気になりました。。みんな連れて帰りますよ。ライクたちも母さんに頼めばどうにかしてくれるかもしれないですし。」

「随分と無茶な話だな。あれだけの大立ち回りをしたのにもう回復したのか?」

「はい!本調子じゃないんで高高度は避けて低空でゆっくり飛びます。ジェイクさんはフィリーをおぶってあげてください。ラッフェルは俺の背中に捕まって。ライクもこっちに来て。」

「これで大丈夫か?」

ジェイクはヒッカに尋ねた。

「はい!大丈夫です!では行きますよ。みんな捕まっててね。」


ヒッカは【エアライド】を唱えた。

「おい。もう行くのか!?」

「師匠!飛んでます!」

「ヒッカさんすごいです!」

「…っ。」

何も言わずに目を固く閉じるライク。

ちょっとでも気を抜くとバランスを崩しそうだった。それに今のヒッカは魔力もカラッカラになっており、いざという時に魔力で強引にカバーする方法は無理そうだった。

(仕方ないか。)

やはり高度を上げるのは危険と判断したヒッカは、地上数メートルの高さに下った。

(やっぱりこれだけの人数になるとちょっとキツイかも。)

四人を支えながらヒッカは森を翔け抜けていく。



「兄さん遅いな。」

不安な表情を浮かべ、ローグはそう呟く。

「ヒッカならきっと大丈夫よ。旅立ち前に買い出しや準備してるんじゃないの?」

「だと良いけど…。」

ローグは胸騒ぎを覚え、庭に出たり家に戻ったりを繰り返している。



ガチャッ

玄関のドアが開く音がして、グランも帰ってきた。

「帰ったぞ。」

「お帰りなさい。兄さん知らない?」

「いや。知らないな。まだ帰ってないのか?」

「うん。まだ。朝早くに剣を持ったままどこかに行ったきり帰って来ないんだ。」

「やれやれ。どこに行ってるんだか。」

装備品を外しながらグランはため息をついた。

「変なことに巻き込まれてないと良いが。」

「悩んでも仕方ないでしょ?」

夕食を並べながらシェリーが言う。

「あの子だって、もう立派な魔法士よ。」

「まあな。それにあいつには俺が叩き込んだ騎士の心得もあるからな。立派な騎士とも言えるんじゃないか?」

「兄さんはきっと魔法剣士だ。父さんの剣と母さんの魔法があるから。それに勇者の剣も持ってるし。」

「あら?そんなの初耳だわ。」

「ああ。言ってなかったか。俺がヒッカに例のバスターソードを渡したんだよ。かの英雄が使っていたとされる剣だ。」

「…そうなの。」

「ん。まあな。」

「本当に良かったの?大切な剣なのに。」

「構わないさ。あの剣の管理は俺に一任されている。それに何となくだが、ヒッカが使う方がいい気がするんだ。」

「…。」

「…。」

「それはそうかもね。」

軽くため息をついたシェリーはわざとらしく明るい声を出した。

「さ、ちょうどできたからご飯食べましょ。」

「お、そうだな。腹が減っては何とやらだ。」

それはグランがスプーンを持ち、食事にありつこうとした時だった。家の前から、なにやら騒々しい音がした。

「何だ?」

グランが立ち上がった。


ヒッカの家の庭先はちょっとした騒ぎになっていた。

「ごめんなさい。みなさん怪我してませんか?」

「俺は問題ない。」

「俺も大丈夫ですよ。師匠!」

「たたた。」

「ちょっとびっくりしましたけど平気です。」

皆の反応から、ヒッカたちは荒っぽく着陸したのだろう。太陽が落ちた後の暗さでは皆がどんな状態かを確認できなかった。

「ここが俺の家です。皆さんも来てください。きっとみんな歓迎してくれますよ。」

ヒッカが言い終わるのと同じタイミングでドアが開いた。

「兄さん。お帰りなさい!」

「ただいま。父さんと母さんいる?」

「二人ともいるよ。呼んでくるね。」

「ありがとう。さあ皆さんも家に入ってください。」

ヒッカが皆を家に招き入れた。



「これめちゃくちゃうまいです!」

そう言いながらラッフェルはシチューに食らいついていた。ライクとフィリーもニコニコしながら食べている。

「ゆっくり食べてね。まだおかわりはあるわよ。」

「本当ですか!?おかわりください!」

ラッフェルは空になったスープ皿をシェリーに差し出した。

「お腹減ってたのか?ラッフェルは?」

「ええもう。安心したら何だかお腹すいちゃって。」

恥ずかしそうに笑うラッフェル。

「良かった。ライクとフィリーはどう?」

「本当に美味しい。こんなに美味しいシチュー初めてかも。」

「私もです。これなら何杯でもいけそうです。」

「それは良かった。私も妻の作るシチューは世界一だと思ってるからね。たくさん食べなさい。」

「「「はい!」」」

不思議と皆の返事はそろっていた。


そして食事がひと段落したころ、ヒッカは改めてことの経緯を話した。

「そうかそうか。それは何とも気の毒なことだ。ここ最近、こちらでも魔獣や魔物の被害が急増しててね。まさかそんな凶暴な魔獣まで出現しているとは。」

「お城の方でも避難民の受け入れ所があるから、そちらに行くと良いわね。もしかしたらご家族の方がいるかもしれないわ。」

「そうだな。ただ今日はもう遅い。今日はここで休んでいきなさい。私は明日早いのでここで失礼するよ。」

「お休みなさーい。」

「ああ。お休み。」

「俺も宿に戻る。夕食のご馳走感謝する。」

そう言ってジェイクも宿に戻った。

「あなた達女の子はこっちへいらっしゃい。ラッフェルくん?はヒッカの部屋に案内してあげて。」

「はーい。じゃあ行こうか。ラッフェル。ローグもお休み。」

「兄さんお休み。」

「了解です。師匠!」

「師匠って言い方、面白いわね。」

ふふふと笑うシェリー。

「からかわないでよ母さん。」


そうして皆はそれぞれ休息をとることにした。ベッドに入ったヒッカは今日一日のことを思い返していた。とくにバトルガルーダとの戦いを。

(何だったんだろう。あの感覚。あんな魔法は知らない。けど…)

ヒッカは寝返りをうった。ラッフェルが寝息を立てている。マシンガントークをしたかと思えば、子どもみたいに急に電池の切れたように眠るラッフェル。きっと疲れていたのだろう。

(悩んでても仕方ない。炎の魔法も練習した方がいいのかな?)

一つあくびをしたヒッカは色々と今日を振り返りながら、いつの間にか眠りについていた。


ここまでお目通しいただきありがとうございます!

ちょっとでもいいなと思ったら、評価ポチっといただけると嬉しいです。


よろしくお願いいたします!


年の初めはウキウキしますね。

皆様にとって、良き一年になることを祈っております。

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