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16話 こんなやつ、絶対に許しておけない。私がやっつけてやる!

バトルガルーダが討伐対象と聞き、ヒッカは少し身構えた。バトルガルーダなら本で読んだことがある。翼を広げると大きなものでは十メートル近くになる。気性も荒く、知能も高い。例年、魔法士や騎士が犠牲になっているほどだ。

「大物ですね。」

ヒッカが剣を握り締めながら言う。

「何度か言ってるが、巨大ゴーレムを打ち倒したんだろ?怖くないさ。それにバトルガルーダなんてドラゴンから見たら赤子もいいところさ。」

確かにそうだ。ヒッカは巨大ゴーレムを破壊している。ドラゴンも決定打を与えられなかったかもしれないが、大きな被害を出す前に撃退している。ヒッカは深く深呼吸をし、自分の両頬を叩いて気合を入れた。

「了解です!それでは行きますか!」

ヒッカはジェイクを連れ、バトルガルーダが棲むという山麓に向かった。

たどり着いた山はとても静かだった。

「少し身を潜めて歩くぞ。奴らは警戒心が強いからな。」

そう言ってジェイクとヒッカは歩き出した。



…どれくらい歩いただろうか。すでに陽は少し傾き始めている。

「今日はだめかもな。できれば今日中に仕留めたかったのだが。」

「結構歩きましたね。もっと簡単に見つかるかなって思ってました。」

「そうだな。あそことあの山を見て、それでもいなければ今日は引き上げるか。もしかしたら、他の奴らに討伐されたのかもしれない。明日の朝ギルドで確認して、討伐されてなければそのまま昼まで探して、それでもだめならキャンセルするか。」

「分かりました。それにしても少し疲れましたね。休みませんか?」

「よし。ここらで休憩だ。」

「ふう。」

ヒッカは荷物を下ろし、近くの岩に腰掛けた。ジェイクは偵察がてら木の上に登ってそのまま枝に座った。

「何か見えますか?」

「ああ。あそこの山だが、俺たちが最初に会った山じゃないか?」

「ヒルビルド山ですね。ちょうどこちらから見ると裏側になるみたいですね。」

「なるほどな。思ったより遠くに来たのかもしれないな。」

「そうですよ。そもそも俺が風魔法使わなかったら、こんな無茶な移動になってないですよ。」

屈託なく答えるヒッカ。

「かもな。お前の風魔法は便利だからな。…あそこにも行ってみるか。」

ジェイクの言葉に、ヒッカは嫌な予感がした。



「とうちゃーく!」

ヒッカは荒っぽく地面に降り立った。減速が不十分だったために十数メートルの着陸跡が残っている。

「見事だな。こう何度も魅せられると俺も真剣に【エアライド】を覚えようかなとさえ思わされる。」

「調子いいんですから。ちょっと人使い荒くないですか?」

肩で息をしながらヒッカが答えた。

そんなヒッカを尻目にジェイクは周囲を警戒しながら歩き始めた。ヒッカもそれに続いた。

少し歩いてからヒッカはふとライクの村が気になった。

「ジェイクさん。休憩がてら立ち寄りたいところがあるんですけどいいですか?」

「ん?例の村か?」

「はい。この辺りでも凶暴な魔獣が出現してたので偵察しておきたいです。」

「確かにな。そろそろ時間だし、俺たちの獲物は明日に持ち越しだな。」

ヒッカは再び【エアライド】を唱えた。

(さすがにちょっと疲れたかも。)

珍しくヒッカは弱音を吐いていた。




「こいつ!くそっ!」

森の中で少年が少女の手を引きながら剣を振るう。

「これでもくらえっ!【ファイアボール】」

少年は魔獣に向けて炎魔法を唱えた。放たれた火炎弾は魔獣に直撃したものの、分厚い毛皮に阻まれて殆どダメージはないようだ。

「お兄ちゃん!避けて!!」

少女が水魔法を唱えた。

「【ウォーターボム】」

魔獣の頭上に出現した水の塊が炸裂する。だがこちらも効果は見られない。

「くそ!なんでこんな!」

少年の顔に絶望の色が浮かぶ。

「こんなやつ、絶対に許しておけない。私がやっつけてやる!」

兄妹を引き連れた少女が気丈に叫ぶ。まるで大気が震えるかのように、魔力を高めていく。

「【ハイドロジャベリン】」

水流が刃となって魔獣の顔めがけて打ち出される。

「ゴォオオ!」

その水刃は魔獣の右目を貫いた。鮮血があたりに広がる。

「やった!」

小躍りする少女と安堵の顔を浮かべる兄妹。が…。

「グォオオ!ウォオオー!!」

だが魔獣は怯んで逃げるどころか怒り狂っている。

「しつこいわね!」

少女が再び構えをとり、先ほどの水刃を打ち出した。今度は左目に狙いを定めていた。が…。魔獣はその巨体を翻し水刃を避けた。

「外した!?」

少女は驚きの声を上げた。

「うっ!わぁあああああ!!」

傍の少年は自分が狩られる立場を理解し、その恐怖で半狂乱に陥っていた。自身の得意技であろう火炎魔法を魔獣に連発した。だが、さしたるダメージを与えてるようには見えなかった。

「お兄ちゃん!落ち着いて!お姉さんももう一度お願い!」

一番年下であろう少女は冷静に二人に声をかけた。その震えている声を聞き、魔獣に一矢報いた少女は我に帰った。

「ごめんね。フィリー。」

そう言って再び構えをとった。

(今度は外さない…!)

魔獣は少年の火炎弾を鬱陶しそうにいなしている。

(そこね!)

「【ハイドロジャベリン!】」

渾身の水刃は魔獣の左目を正確に撃ち抜く。はずだった。魔獣は少女の魔力の高まりを察知し、咄嗟に体勢を逸らしていた。そして放たれた水刃は、魔獣の左肩の毛皮を滑るように彼方へと消え去った。

「あ…ああ。」

少女は絶望した。この後自分たちの訪れるであろう未来を想像して。

「お姉さん…」

それにつられてもう1人の少女も涙声とともに地面にへたり込んだ。

「はぁはぁ。【ファイアボール】!」

渾身の力を込めて放った少年の火炎弾も、虚しく手元で不発となった。

「ああ…。」

少年の顔も生気が失われる。同時に悟ったのだ。もう自分たちは助からないと。

「何で…こんな…。」

「もう無理なの…。」

「嫌。嫌ぁあああ!」

少女が水魔法を放つも、ダメージは認められない。

「ゴァアアアア!!」

激昂した魔獣が突進の構えを見せた。

(もう…ダメ…。)

魔獣が突進してきたのが見える。魔獣用の重装備もなく、魔力も使い果たした自分たちがあれをくらえば一撃だろう。そんなことを考えながら、少女は思わず目を瞑っていた。

「【サイクロン】!」

突如、暴風が吹き荒れ魔獣が弾き飛ばされた。

(何…?)

「え?」

「あ…。」

「間に合った。大丈夫ですか?少し下がっててください!」

ヒッカが魔獣と少女たちの間に割って入った。


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