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15話 これでお前も立派な冒険者だな

ヒッカはジェイクから依頼書を受け取った。

小型の魔獣討伐だった。相手はウルフ種三体と書かれている。ウルフ種相手であれば、魔法攻撃が有効だ。一方でスピードのある相手なので、距離を詰められる前に仕留めることが大事になってくる。ただ…。

「どうしてウルフ種討伐を受けたんですか?。俺は鎧は無いし、ジェイクさんに至っては軽装すぎません?万が一囲まれたらやばいかもしれませんよ。」

昼食を口にしながらヒッカが尋ねた。

「そんなことか。理由は単純にここから近いからだ。それに相手はDランクだろ?。慢心するつもりはないが、少なくとも俺たちの敵では無いレベルだ。」

ジェイクは口を拭いながら続けた。

「それに、お前は魔法士見習いにも関わらず、巨大ゴーレムを破壊したんだろ?ドラゴンだって本来は撃退するのも難しいんだ。冒険者ランクで言えば俺と同じくらいの働きはしてるだろう。」

そう言えばそんなことあったな、とヒッカはボンヤリ思い出していた。

「それに、俺に言わせればウルフ種は魔法攻撃が有効で物理攻撃が効果的では無いと言う通説は誤りだ。何故なら奴らの武器はスピードだから、懐に飛び込まれるとこちらが不利だ。近接武器は近づけない、近づきすぎると不利。だから遠距離から魔法で狙い撃ちする。この考え方がおかしいんだ。だってそうだろ?高速で動く獲物を正確に狙い撃つのは難しい。それにそんなことをしなくても勝機はある。」

「例えば?」

「奴らはスピードが命ではあるが、奴らの武器は爪と牙だ。必ず獲物に向かってくる必要がある。そこをこの剣で仕留めるだけだ。簡単な話さ。」

ジェイクは、さもそれが当然とばかりに食後の紅茶を楽しんでいる。確かにジェイクのブロードソードなら、ウルフ種の攻撃範囲より遠くから迎撃できる。それに出会って数日だけだが、ジェイクの体術は『すごい』の一言だった。

「俺が奴らを確実に仕留めるから、お前は牽制する側にまわってくれ。お前もチャンスがあればそのバスターソードで斬ればいい。あれだけの魔力を込められたんだ。Dランクくらいの魔獣なら訳ないはずだ。」

随分と簡単に言うな、とヒッカは思った。

「勿論、迎撃に失敗したら危険だ。噛まれて痛いどころの話ではなく、命の危険がある。だから最初の二体は俺が仕留める。最後の一体は頼んだぞ。」

ヒッカは無言で頷いた。

「よし。なら行くぞ。早速だが、連れて行ってくれ。今日中に三件だからな。まずは腹ごなしだ。」

「分かりました。それでは行きますか!」

ヒッカは依頼書を見た。この方面なら十分ほどで行けるだろう。ヒッカは風魔法【エアライド】で空に昇った。 



ザシュ!ザン!

鈍い音と共に魔獣が崩れ落ちる。

「ヒッカー!左だ!」

二体の魔獣を傍に、ジェイクが叫んだ。

(…来る!)

黒く蠢く魔獣が木陰から飛び出し、ヒッカに襲いかかってきた。

魔獣とヒッカが向かい合う刹那、無意識に魔力を込めた剣をヒッカが抜き払う。

「グォオオオ!」

踏み込みが浅かったその剣は、魔獣を両断するには至らなかった。だが確かに一撃を喰らわせていた。

(…っ!外した!?)

ヒッカがそう思い魔獣の方に向き直ったその時、まさに魔獣は全身のバネのようにしならせて飛びかかろうとしているところだった。

「!!」

「グォオオオ!」

「はぁあああ!」

咄嗟にヒッカは剣に魔力をこめ、超低空での短距離【エアライド】で魔獣の懐に飛び込み魔獣を切り裂いた。

勢いを殺せず、どかっと大木にぶつかるヒッカ。

「やった!?」

「ああ。初戦にしては上出来だ。」

ヒッカの剣で魔獣は真っ二つになっていた。

「ほら、お前も魔力核を回収しておけよ。このまま次の討伐に行く。」

「はい!」

ヒッカはジェイクに教わりながら、魔獣から魔力核を抜き取った。ウルフ種の魔力核は図鑑で見たことはある。だが、実際に手に取るとやはり感慨深いものがある。

「次はここからさらに南下したところだ。あと三つだからな。手早く行くぞ。」

そんな感慨に浸るヒッカを他所目に、ジェイクは次の目的地を示した。



「くらえっ!【サイクロン】!」

ヒッカは渾身の風魔法を放った。

「おいおい…。今日は剣の試し斬りをするつもりだっんだが。」

少し呆れ気味にジェイクが言う。

「大丈夫ですよ!ほらっ!」

ヒッカは剣を振るった。宙を舞うサーペント種の頭部はバスターソードで真っ二つになった。

「これで魔力核を二個目です!」

(風で吹き飛ばしたのかと思いきや、動きを止めてさらに首と牙を落としていたのか。器用な奴だ。普段どんな風に鍛錬してるんだ…?)

「…どこですか?」

「ん?」

「次はどこですか?」

「ああ、すまない。考え事をしててな。」

ジェイクは三枚目の依頼書を取り出した。そして瞬く間にヒッカは三つ目の魔力核を手にした。



「これでお前も立派な冒険者だな。」

少し怪訝な顔をしているヒッカにジェイクは続けた。

「今のゴブリンはDランクだ。これだけ数が多いと手間だがお前は苦も無く始末した。それにさっきのアースサーペントはCランクだったにも関わらず、あっさりと下している。今日中にもDランクの冒険者ライセンスの登録はできるだろう。詳しいことはまたギルドで聞けばいいさ。」

「冒険者ですか!いよいよ旅目前って感じです。あ、もしかして俺が冒険者ライセンスを持ってないから連れてきてくれたんですか?」

「いや、それは違う。シンプルにコイツの試し斬りをしたかっただけだ。ついでにお前に少しでも魔獣との実戦経験も積ませたかったしな。ライセンスはついでだ。」

なるほどと言う代わりにヒッカは頷いた。

「さて、次は今日のメインディッシュだ。」

ジェイクはBランクの依頼書をヒッカに見せた。

「空の暴れん坊。バトルガルーダだ。」

ヒッカは不思議と身震いした。それが武者震いなのかは分からなかった。


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