第11話
あれから一か月、キッズルームで遂に偉大な一歩を踏み出した。
そう、そうなのだ魔力強化を使わずに寝返りがうてたのだ。
生後2か月の新生児ではありえない快挙なのだ。
興奮冷めやらぬ中、首上げ100回に挑戦中だ。
うつ伏せになり、ひたすら頭を起こす。
背筋が筋肉痛になるなど知ったことか!
「 あぶあぁぶぶぁ!(明細鑑定&HP鑑定)」
>個体名:ラインハルト(仮)
>種族名:人間 賢者
>状態値:新生児 生後2か月状 良好 実質状態4ヶ月
>存在値:LV3
>体力値:50HP
>魔素値:2530MP (保有2532MP)
>スキル:魔力操作 光 闇 火 氷 水 風 雷 土 木 治癒
重力操作 明細鑑定 早熟 肉体改造 魔力強化 念動
木工 金属加工 異空間収納 錬成術 温度変化
続けてHPの鑑定明細が表示される
>体力値:50HP
>攻撃値:0.2
>筋力値:0.8
>敏捷値:0.5
>器用値:1.6
>回避率:0.2
>防御力:0.2
誰かに見てほしい、この筋力UPを、まだ1には届かないが 略1.0といっていい。
偉大な一歩を踏み出すのもあと少しなのだ。
しかも、食事事情が大幅に改善された。
離乳食、テンションが上がる。マーニと母の乳も捨てがたいが、何分味が濃ゆいのがいい!
それにスプーン!これもテンションが上がる。
折角の食事を力加減を誤りぶちまける事がほとんどだが、それでも自分で口に運ぶうまうまの旨さよ。
これが最近のマイブームだ。
乳をもらい離乳食で腹をみたし、満足してまた眠りにつく。
次の目標は” 支えがなくても一人で座れる ” だ、小さな目標であるが、目標があるだけでも筋トレに力が入る。
心なしか、ポッコリお腹の幼児体形も引き締まった気がしなくもない。
・・・・
で、自重を知らないMPなのだが・・・・なんだか腹に魔力が堪り過ぎている気がする。
つっかえてると言ってもいい。こぉ、何というかモヤモヤとした消化不良を感じて仕方ない。
なのでこの際すっきり魔力の放出をしてみたいと考えた。
自分は床面に寝かされて、世話をやく女給の人手は他の兄弟に手を取られている。
保育園や幼稚園特有の熱気と臭い。その換気の為かバルコニーに続く窓が少し開いている。
窓から見えるバルコニーの手すりは目が細かく、階下に落ちる心配もなさそうだ。
・・・・というわけで、一人こっそり擦り這でバルコニーへ逃げ出してきた。
「 あ~! 」
重力操作で重力に逆らい空中浮遊し念動で推進力を得る。
バルコニーは急速に小さくなり、かなりのスピードで城から遠ざかる。
・・・・・既に小さく見える城下町が、更に遠ざかってゆく。
眼下は密林、人が居ても狩人くらいだろう。・・・・
と言いつつ誰か居ては大変なので、鑑定を薄く広く伸ばす感覚で樹海を調べた。
『 ポーン 広域に対する魔力探知を検知しました。 スキル【探知】が派生しました。』
スキルが派生したと同時に、大量の情報が頭に流れ込んでくる。大型の獣程度であれば問題ないが、虫なんかも探知すれば、そこら中生き物だらけだ。
バンと脳みそを叩かれた様な衝撃をうけた。
「 はぅぶぅ・・・・(ちくしょう頭痛が・・・・)」
探知から小さい生き物を除外・絞り込みを行い、比較的大きな魔力に照準を合わせる。
すると密林の更に奥に、魔力を持つ獣の営巣地があるのが感知できた。
空気を圧縮し、光の屈折率を変え二枚のレンズを作り、簡易の望遠鏡を作り上げる。
『 ポーン 遠方確認による魔力の使用を検知 スキル【遠見】が派生しました。』
蠢くゴブリンの集団だ。
ここは一発、MP大量消費で殲滅だ。
「 あう! (行くぞ)」気合を入れ、力んだのが拙かった。
ぶびびぃ・・・・
よりによって大きい方だ。おむつがベタベタして気持ち悪い。
このまま魔物の巣を叩くか、おむつを替えに戻るか、究極の選択・・・・
ここは冷静に考える。
” 遠くなら、遠くに届く攻撃魔法を使えばいいじゃないか! ”
「 あぶぶ!あぶぶ!ぶあぁ(本日は快晴なり、快晴なり、日焼けには注意)」
昼に近いのか太陽はほぼ真上、空気中に水蒸気で作った巨大な鏡を魔力で数十枚程作り出す。
そこから反射した光を、再び作成した巨大な水蒸気のレンズで収束させてゆく。
焦点が次第に細くなり、遠くに見える営巣地に光点を集めてゆく・・・・・
焦点が営巣地に定まった。
シュゥーワァ!!!
光点が定まった瞬間、空気を焼き光線が点のように小さく見える営巣地を一瞬にして焼き焦がす。
遠目を使い確認する。
微調整をかけ、営巣地の隅々まで丁寧に焼く。
木々や建物は一瞬のうちに発火、炭を通り越し灰になる。
光線の当たった岩肌はドロリと赤銅色に溶解し、含んだ水分の為か爆散している。
ひとしきり焼いたところで探知を使って、取り残しを探す・・・・が魔物の気配は完全に消え失せていた。
「 う~! (成功)」
喜びながらも、・・・・やっぱりオムツが気持ち悪い。
全速力で飛び戻りバルコニーへと帰還した。
・・・・
キッズルームは緊迫した状態に成っていた。
ラインハルトがいないことに気が付いた女給が金切り声を上げながら其処ら中を探しているのだ。
「 あぶぅ・・・・(やっちまったか)」
モリモリウンチのオムツは擦り這いでうまくバルコニーに放置し、さっぱりした所でこっそり部屋の中を覗いてると、あっさり見つかりお縄となった。




