☆003★ホシガミ
星は我らを見守ってくださっている。
その代償として、我らも星を見守らなければならない。
これは未来永劫絶対に守り続けていかなければならない契り。
これを破れば星々の均衡は取れなくなり、星の神々は怒りに震え、我らに天災をもたらすだろう。
―――九星誓約書1章1節
辺りを見回しても向日葵だけしかいない。
向こう側ではまだ皆が宴会中。
「なん……だったんだ……?」
「さっきのは暁・V・宵明ちゃん」
うん?
「金星のホシガミ」
クソガキ?
「……すぐ怒る娘なの、かわいいでしょ?」
なんだか呼びにくい名前だな……っておい! そこじゃねぇーだろ!!
「さっきの鋼鉄の板とかナントカスフィアって何なの? 手品??」
「あれは私たちホシガミが使える能力。通称――星光」
ますます信じがたい話だ……子供が性交をするとそんな力が使えるようになるなんて……
「でもね、宵明ちゃんは暴力的だけど、平和をもたらす者って呼ばれてて……本当は優しい子なんだよ?」
いやーそういうことは知らないんだよーお兄さんはー。
とにかくこの娘の話を信じなければ、さっきまでの事が証明出来ない。
信じるしかない。
だが性交のことに関しては信じたくない。
「性交にだけは手を出しちゃいけないよ!」
「っえ? お兄さんは星の光について知ってるの? あっ! そうだよね、さっきのアレが見えるぐらいだもんね、知ってるよね当然!」
星の光……?
何のこと……って、そっちかよ!
そっちの字での星光なのね……
それにしても、なんか俺は知ってる人間って認識されちゃったぞ、どうする俺!?
まぁ、どうもしなくていいか……
「じゃあ、君は何なの?」
向日葵は一呼吸間を空けた。
「私は太陽のホシガミ」
結局さっきから言ってるホシガミってなんだ?
「ホシガミって?」
向日葵は困惑の表情を浮かべた。
「ど忘れしちゃったの? それともさっきまで知ってる風な事を言っていたのは嘘だったの?」
なんだこれは……この娘が勝手に勘違いをしていたというのに、罪を擦り付けられているだと!?
「君が本当に知っているかの確認だよ」
こういうことを言っておけば回避できるだろ!?
「あっ、そうだったんだ、ホシガミって言うのはその星を守護するべき神、それを略してホシガミって言うんだよね」
つまり俺は神様を目の前にしているのか?
「そうだね、でもなぜそんな君らはココに?」
「私はこの星、地球を守るため……そして他のホシガミは地球を破壊するため」
大体のことは分かった。
俺は危険なことに巻き込まれていると。
「分かった分かった信じるよ。でも、俺はあんまり関わりたくないから帰るわ」
コレが得策。
いつまたさっきみたいなことになれば、命が幾つあっても足りない。
さっそうと下山しようとした時だった。
近くにあった巨大な石から突然破裂音がしたかと思うと、石の破片が顔の横を飛んでいった。
何がなんだか分からなかった。
「私……地球での居場所が場所がないの……」
知らないよそんな事!!
変なことに巻き込まないでくれ。
「それは大変だねぇ」
そういって、再び歩き出そうとするとまた石が飛んでくる。
今度はさっきより大きい。
「お願い……」
誰か……助けて……コレって立派な脅迫だよ……。
やむ無く一緒に住むことになってしまったわけだが……この先の事……考えたくないわ……
***
――翌朝……
鳥達の鳴き声が聞こえてくる中、朝日がサンサンと顔に降り注いでくる。
まぶたはまだ重く、目を開けるのがめんどくさい。
何だろう……朝日が……段々……熱く――!!
「アッ、ッチ!!」
同じ布団で寝ていた向日葵の体が太陽の光を体に取り込み、体温をものすごく上げていた。
オチオチ寝てもいられねぇーんじゃねぇのか、俺!?
そう思いつつも、洗面所に顔を洗いに行く。
顔を洗ったついでに歯を磨いていると、空気が突然変わったことが分かる。
しかも煙臭い……
まさかと思いつつ、向日葵の寝ている寝室をのぞいてみると案の定布団が燃えていた。
「うわぁぁあぁぁあ!!」
急いで水をかけているが中々消えない。
俺の人生やばいぞ! この先長くないかも!!