第30話 次の舞台へ
次の日、僕はいつも通り特殊2課のオフィスにいた。
ドリーム・メイトの出現、紅月によるテロ、昨夜のことを新聞やニュースは大々的に報じた。
しかし、ドリーム・メイトは妨害行為を行っただけで、殆どは警察部隊による鎮圧だと報じられた。そのせいで自分達はエベレストよりも高い報告書を書かないといけない。
今夜も徹夜か……
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ルナはリヴェルダの治療を受けた後、また学校生活に戻っていった。あの事件に関わったことは誰も知らない。
「狼族は紅月の一件で絶滅した」となっているのでルナはこれからどうするつもりだろうか。
たまにルナの高校にネロが遊びにいっているらしい。2人で授業を抜け出して遊んでいるんだとか。
「ルナってクレーンゲーム好き?」
「アタシは苦手かな。よくわかんないからな」
「教えてあげるよ。その代わり、また抜け出してきてね」
最近大学に通いながら幹部をしているハーツにパン屋であんぱんとフルーツオレを交換に色々聞いているらしいが……まさか…。
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「紅色の夜の英雄様はこんなところで何をしてるんだ?」
星が見える夜に、警察署の屋上で珈琲を飲んでいると後ろから突然声がした。
ポーカーがいつもとはちがうキチッとした正装を身に纏って立っていた。
「疲れたんだよ。昨日のルナを助けた時、正直ダメかと思ったよ。本来、他の幹部達はヴォルクと共に消滅するはずだったからルナも危ないと思ってヒヤヒヤしたぜ」
「ふふふ。やっぱりどんなピンチも緊張感を感じさせずやり遂げるお前は最高だよ、アルカナ」
腕を柵の上に乗せ、ポーカーは上を見上げながら言う。
「両親のおかげじゃないか?なんとしても生きて欲しいと言う気持ちが今回の夢に繋がったとか」
僕は遠い夜空を見上げる。
……両親か…。いや、俺に取ってはどうでも良いことだ。
「……かもな」
紅い月ではなく真っ白な月が夜空に輝いていた。
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ここは、高層ビルが立ち並ぶ都市に巨大な敷地を持つ屋敷。
ベンッベンベン……
琴が鳴り響く屋敷の大広間に100人以上が座っている。
今日からバイトの私は、高額収入というのを目当てにここにきた。なんと、ここはこの都市の権力者様がいるとか……後で写真貰おうっと。
すると、そんな気持ちを打ち破るような大声が室内に響き渡る。
「帝様の御成り!!」
その瞬間、全員が頭を垂れる。私も驚きつつ、急いで頭を下げる。
そこに入ってくるのはあまりにも異質な雰囲気、しかし高貴さを感じられる男が入ってきた。
金色の着物を着て、顔は張り付いたような笑顔。
「皆の者、頭を上げよ」
全員がシンクロした動きを見せる。
私は何か異質なバイトを持ってしまったと少し後悔した。
だが、『帝』と呼ばれる人物はいきなり高らかに笑った。
「ハハハッ、皆固苦しいのう。朕はこれからの祭りを楽しみにしておると言うのに。今夜はその祝いの宴じゃ!遠慮せず飲むといい!!」
その瞬間、周囲の雰囲気は一気に和む。強張った顔の人も笑っている。
私は胸を撫で下ろして、使用人に指示された通り、酒を運ぶ。
(こんな簡単な仕事で数十万円稼げるなら、何回来てもいいかも!)
しかし、油断しすぎて畳の隙間に気づかず、お酒を溢してしまい『帝』の足元に染み渡ってしまった。
一瞬で周囲は凍りつく。
ヤバっ!! 急いで謝って拭かないと。
「も、申し訳ありません!!」
私は少しヘラヘラした態度で拭いてしまった。絶対に怒られると思い、顔を上げると『帝』はニコニコとしている。
「ハハハッ、小娘。すまぬが朕の前に立ってくれぬか?」
立ち上がると『帝』も立ち上がり、手を私の頭に伸ばしてくる。
ヨシヨシでもされるのかな?と思い待ってい……
ブチャっ………
『帝』の前に先程の女性はいない。あるのは血溜まりだけ。骨も残らず、あたりには静寂だけが残った。
「全く、このように庶民は阿保うばかりよ。さて…」
『帝』は再び肘おきにもたれ掛かり座る。
「先日、朕と同じ『零位』のある…アルカナ?という蛮族が暴れたらしい。では、我らもとくと暴れようではないか」
目を細め、血を足で跨いで静かに告げる。
「始めよう。歴史に残る新たな祭りを……」
次章、百鬼乱都編へ続く……




