第3話 邂逅の夜に
「ねぇねぇ、今度さ、あそこのカフェ行ってみない?」
「いいねいいね。ルナはどうする?」
放課後の夕日がガラスに反射して、街が金色に染まっていた。しかし、そんな幸せの中に一つの感覚が頭から離れない。
──最近、誰かに見られている気がする。
「ちょっとルナ!聞いてる?」
友達の茜が顔を覗き込むように言ってくる。
私は慌ててフードを片手で被り直し、笑顔を作った。
「あぁ、ごめん。今度バイト空いてたらねー」
軽く手を振って別れ、私はビルとビルの狭い路地裏に入る。
耳を立てると、靴音が3つ。後をつけられてる。
「……誰?」
問いかけた瞬間、壊れた街灯の陰、十字路の角、そしてーー 正面。
三方から屈強な男たちが姿を現した。
「流石だな、“狼の獣人”。大人しく着いてきてもらおうか。」
──どうして私が狼だって……!?
胸が締めつけられる。あの日の記憶が、脳裏をよぎる。
逃げなきゃ。
前の男が距離を詰めてきた瞬間、壁を蹴って彼の頭上を飛び越える。
着地と同時に路地を駆け抜けた。
「くそっ! 待て!」
背後から怒号が響く。
私はただ、人の多い通りを目指して走り続けた。
⸻
場面は変わり、蓮・ミナ・城田の3人は物資の補給を終え、デパートの前を歩いていた。
「テメェはその骨で我慢しやがれ!」
「うるせ〜!ならおっさんはスルメでも齧ってろ!」
……買い出しのたびに始まる恒例の口喧嘩。
呆れつつも、どこか微笑ましい光景だ。
そのとき、ポケットのスマホが震えた。
画面には、ネロの名前。
『例の紅月の団員が、そっちの区域で動いてる。』
添付された映像を開くと、防犯カメラ越しに映る――
狼耳の少女が数人の男たちに追われていた。
蓮は顔を引き締めた。
『……了解。現場に向かう。』
小丸ビルの屋上で集合とだけ告げると、
ミナと城田に向き直った。
「ミナ!おやっさん!ちょっとパトロールしてきます!」
「えぇ!?どこ行くんですか!?」
「おい蓮ッ!この犬のお守りは誰がやるんだよ!?」
返事を待たずに路地へ走り込み、
人気のない場所で上着を脱ぎ捨てる。
夜風が頬をなでた。
身体に魔素が満ちていく。
「……始めようか。ドリームメイトの舞台を。」
蓮――いや、“アルカナ”が静かに呟き、
闇を駆け上がるようにビルの壁を蹴り、屋上へと姿を消した。




