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双面人生  作者: 名のないりんご
第一章 紅き月編

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第4話 ドリーム・メイト

 屋上に出ると、『第一夢』のポーカーと数名の団員がすでに待機していた。

 夜風がビルの間を抜け、街の灯りが遠くにちらつく。


「久しぶりだね、アルカナ。」

「挨拶は後。それより、ソリティアの指示は?」


 ポーカーは少し笑い、耳に仕込んだ通信機を軽く叩く。

『現在、対象は港方面へ。地上班は追跡を継続。アルカナは先回りして挟み撃ちをお願いします』

 柔らかな声の主、『第二夢』のソリティアの言葉に全員が動き出した。


⸻


 場面はポーカー側へ。

 夜の街を駆け抜ける足音が重なり、明るい月が雲間から覗く。


「まったく、いつも地上ばっかで汚れるってのに」

軽く舌打ちをしながらも、ポーカーの両手はすでに腰のホルスターに伸びている。


次の瞬間、路地裏の闇から複数の影が飛び出した。

紅月の妨害部隊――。


「来ると思ってた、、」

彼女は無造作に二丁の銃を構え、銀色の閃光が夜を裂く。


 乾いた銃声が連続し、敵の動きが一瞬で止まった。

すべて、眉間か心臓を撃ち抜かれている。


「あまり舐めないでほしい」

銃口をくるりと回してホルスターに戻すと、すぐさま通信を開く。

『こちら地上班、妨害排除。追跡を再開する』


⸻


 一方そのころ、アルカナはビルからビルへと軽やかに跳び移っていた。

 夜風がコートをはためかせ、靴底がコンクリートをかすめる。


「ソリティア、こっちは屋上ルートで先回りするよ。すぐ終わらせるから。」


 そう言った瞬間、風が変わった。鉄の匂い。血と油の混じった、嫌な予感。


「ガハハッ! 貴様らドリームメイトが邪魔するとはな!」

声の主は、鉄塊のような大剣を担いだ巨漢――紅月幹部のゴンザだった。


「だがこの先を知る必要はねぇ!」

唸りを上げて振り下ろされる剣。屋上の床が割れ、粉塵が舞い上がる。


「声も行動もうるさいんだよ。」

 アルカナは身をひねり、足場の縁に片足をかけた。

「――というわけで、サヨナラ。」


回し蹴りがゴンザの顎をとらえ、巨体が宙を舞って下の通りへと叩きつけられた。

金属音と悲鳴が夜に溶ける。


⸻


場面は港へ。

コンテナが並ぶ無機質な空間の中で、ルナは息を潜めていた。

肩で息をしながら、震える手で耳を押さえる。


「お願い…お願いだから、もう誰もこの力を…」

その声は途中で途切れた。

背後から荒い声とともに、髪を掴まれたのだ。


「ちょこまか逃げやがって、この化け物が!」

「やめろ…! 離せっ!」


容赦なく振り下ろされる拳。視界が揺らぎ、両親の笑顔が浮かんだ。

あの日――力を制御できず、全てを壊したあの日の記憶。


(ごめん……お母さん……お父さん……)


最後の一撃が振り下ろされようとした、その瞬間。

空気が裂けた。


「――それ以上は見過ごせんな」


上空から降下した影。

コートの裾を翻しながら、アルカナが音もなく着地する。


「な、なんだお前!?」

「俺の名はアルカナ。夢の創造主――ドリームメイトの盟主様だッ!」


銃声が二度響き、ナイフが一閃する。

紅月の団員たちは次々と崩れ落ちた。


「大丈夫か?」

ルナは震える声で「うん……」とだけ呟いた。


⸻


そこへ遅れてポーカーが到着する。

「この子、どうするの?」

「敵が追ってたってことは、何かあるはずだ。一旦、保護しておいてくれ。」


「了解。……でも、早く戻ってきて」

「はいはい、わかってるって」


アルカナは片手を挙げ、ビルの影に消えていった。


⸻


夜が明けかけたころ、蓮はいつものようにミナと城田のもとに戻ってきた。

「どこ行ってたんだよ!」

「心配したんですよ!」


 二人の怒声を受け流しながら、蓮は気の抜けた笑みを浮かべる。

「いやあ、怪しいやつを追ってたらマンホールに落ちちゃってさ。上がるの大変だったんだよ。」

「お前なぁ……」

「私よりドジってマジですか……」


 そのやりとりの裏で、蓮の表情が一瞬だけ引き締まる。

――紅月。やはり、裏で何かを企んでいる。


⸻


 同じ頃、紅月のアジト。

ゴンザはボロボロの姿で帰還し、幹部たちの嘲笑が飛ぶ。


「なんだそのザマは!」

「ドリームメイトごときに負けたのか?」


「だ、黙れ……! あいつは、化け物だ……」


そのとき、低く響く声が部屋を制した。

「――もういい。下がれ。」


 暗闇の奥から現れた紅月の代表は、手に何かの資料を持っている。

「サンプルが奪われたか。だが心配はいらない。……次の一手は、ゴンザの改良をしてからだな。」


不敵な笑みが闇の中に浮かぶ。

こうして、新たな夜が静かに動き出した――。

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