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43話 裏切りの人馬宮【暁斗視点】

 「ば、バカな………?」


 天空に降臨したメリサストローアは突如巨大な矢に貫かれた。

 ドクター・ベウムは、それとともに倒れようとしたところを、メフィストに抱きかかえられた。


 「パパ!」


 「レイラさん、ドクター・ベウムを頼みます。しかしロイドが裏切ったですと? いったいどうして? 彼もベウムと同じ目的のために行動を共にしたはず」


 そいつが人馬宮(サジタリアス)のマスターか。事態はまだ終わりそうもないな。

 ともかくメフィストに状況を聞いてみるか。


 「そちらから裏切りが出たのか。そのロイドってのは、どんな奴なんだ?」


 「ドクター・ベウムの元の職場の同僚です。ドクター・ベウムの行動の元になった事件にも関係していて、護衛をまかせるほど信頼されていたのですが」


 「なんだよ、ドクター・ベウムの行動の元って」


 「それを話せる立場に、私はいません。それより天秤宮(リーブラ)でガードを頼めますか? このままではメリサストローアが破壊されます」


 「チッ………やってやる」


 たしかに今ガードが出来るのはプラーナキアのソーサー出している俺だけだ。

 人馬宮(サジタリアス)のロイドって奴が何をするか分からない以上、連中に協力するしかない。

 俺はソーサーを操りメリサストローアをガードする。


 「よっしゃ! 暁斗はん、そのままガード頼むで。メフィストはドクター・ベウムはんを守ってや。ウチが裏切りモンをしばきに行ったる!」


 ミランダは星宮石を取り出し詠唱する。


 「星宮より来やれ、這い寄る毒棘(どくきょく)の暗殺者。恐れを知らぬ勇者よ、(なれ)の死の影は蹂躙する大軍でも獰猛なる巨獣でもあらへん。せまる足元にあると知れや。敬い忘れた傲慢、耳朶(じだ)腐る高言の罰を思い知るがええ。音もせでして這い寄り、穿ち送るは蠍の針。渇き悶え苦痛にさいなまれ果ていや! ギルスレイン!」


 細く長い尾を持った虫人間のような星宮獣ギルスレインが現れた。体長は人間と等身大。おそらく探索にはこの程度の大きさが良いのだろう。


 「行ったれ! 裏切りもんのロイドを探し出すんや!」


 ミランダがそう命じたときだ。ふいに空の真上から声が響いた。


 ――「ミランダ、私なら来ている」


 「ハッ」として上を見上げる。すると矢に貫かれたメリサストローアの近くに、上半身が弓を持った人型、下半身が馬の、体長十メートルほどの星宮獣が浮いていた。

 ケンタウロスの姿をした星宮獣。あれが人馬宮(サジタリアス)か。

 そしてその背には、学者然とした男が乗っている。あれがマスターのロイドとかいう奴だろう。


 「どういうつもりだ? わざわざ姿を見せるなんて。アイツ、あんたら二人を相手に出来るほど強いのか?」


 「まさか。 ……ああ、あれです」


 メフィストは空のメリサストローアを指さした。


 「あの位置はメリサストローアを人質にとっています。距離的にソーサーのガードを貫くことも可能。そして星宮石に戻す前に完全破壊も出来るやもしれません。ミランダ、暁斗くん、動かないでください」


 「チッ……ギルスレイン、待機や」


 ミランダは自分の後ろにギルスレインを控えさせた。

 メフィストは、その様子から何か考えがあるようだが。


 「で、どうするんだ?」


 「話し合いですよ。まずは行動の核となる理由を探します。そこから交渉、落としどころを探る。その間、つけこむ隙をこじ開ける努力も、並行して行います」


 まるでプロのネゴシエイターみたいだな。ブラック・ゾディアックの頭脳担当のお手並み拝見といったところか。

 メフィストは空の人馬宮(サジタリアス)に乗った男に、声を張り上げて話しかける。


 「さてドクター・ロイド。どういうつもりです? あと少しで、あなたとドクター・ベウムの罪が消えてなくなるところだというのに。ここに来ての裏切りの理由を教えていただけませんか?」


 ――「フ……フフ……もったいなくなったのだよ」


 「もったいない? ………ああ、そういうことですか」


 「つまりアンタは、このままブラック・ゾディアックの幹部でいたい。そういうことかい!」


 ――「そうだ。たしかに当初はドクター・ベウムとともに、犯した過去の過ちを正すため、テロリストに身をおとした。しかし絶大な力を手にして、はじめて知った。恐怖と暴力で人を支配するのは、本当に気持ちの良いものだとな」


 つまり目的のために堕ちた悪ではなく、欲望におぼれて悪に堕ちたということか。


 「ハン、真面目でお偉い研究者はんが、変われば変わるもんやね」


 ――「呆れられてもしかたないがね。しかし今さら過去、私とベウムの製作した薬で死なせた人間をよみがえらせて何になる? 元の医療研究者になってどうする? 我らは偉大な力を手にしたのだ。このまま世界を手にすべきではないのかね?」


 あの野郎。ここに居る誰より完全な悪に堕ちてやがるぜ。


 ――「ミランダ。君はブラック・ゾディアックに未練はないのかね? 君の組織の作る麻薬は大きな富を生んだ。今の君は、あらゆる贅沢と快楽を享受できる立場だ。それを捨ててよいのかね?」


 「せやなぁ、たーしかにチョット惜しくなってきたわ。次の世界でもソコソコな金持ちを約束されるゆうても、さすがに今ほど稼げんしなぁ」


 ヤバイ!! ミランダのやつ、そそのかされてやがる!?


 ――「であろう? ならば……」


 「――けどなぁ!!」


 ギュルンッ


 いつの間にかギルスレインの尾は、はるか天空のケンタウロスに乗るロイドのところまで伸びていた。そして彼を捕らえて縛りあげる。


 「ウチには生き返らせたい弟がおるんよ。今度こそまっとうな生き方して、一緒にくらしたい弟がなぁ!」


 そしてその尾の棘は、容赦なく彼を貫き破壊した。

 ボロボロになったロイドの体は投げ出され、堕ちた瞬間に原型もとどめぬほどバラバラになってしまった。


 「バイバイや、ロイド。最後の最後に、アンタは選択を誤まったなぁ」


 終わった………のか? 

 ミランダは振り向きもせず、レイラさんが介抱しているドクター・ベウムのところへ向かう。


 「ドクター・ベウムはんの容態はどうや。生きとるか?」


 「ええ、ごらんのとおりよ」


 レイラさんに抱えられているベウムは大丈夫そうだ。

 彼女から離れ、自分の脚で立ち上がる。


 「私は無事だ。衝撃で一瞬気を失ってしまったがな。ただメリサストローアは大きく破損している。今は時間逆行は無理だろう。それとメリサストローアは、矢に貫かれたままでは星宮石に戻せん。アレを何とかしてくれ」


 「そうかい。なら………」


 そんな会話を背中で聞きながらも、俺とメフィストは空から目を離せないでいた。


 「ミランダ、まだ終わっていません」


 「そうだ、見ろ!」


 「あん? ………なんやて? どういうこっちゃ!?」


 そう。人馬宮(サジタリアス)の星宮獣は消えずに、空中に浮遊したままだったのだ。

 マスターが死ねば星宮獣も消えるはずなのに!


 「ロイドは確実に貫いて殺した。あれで生きてられるはずないわ!」


 ――「フ、フフ。与えられた力を調べもせず、ただ、ふるっていただけの君らには分かるまい」


 この声はロイド!?

 思わず地面に投げ出されているロイドの遺体に目をやる。

 それはさっきと変わらずバラバラに砕かれたままだ。


 「バカな! ロイドはここで死んでいるはずなのに!」


 「この声……さっきと同じ場所から聞こえてきます。信じがたいことですが、この声を発しているのは、アレだとしか思えません」


 メフィストの指さす先。それは人馬宮(サジタリアス)の星宮獣だった。


 「星宮獣には君らの知らない能力が隠されていた。それがこの【人獣合一神化】だ」


 「………なんです、それは」


 「マスターの魂を星宮獣の体に移し一体化する。星宮獣とマスターの一体化。これによって、マスターの寿命が尽きるまで星宮獣は封印のくびきから解放され、完全な自由を手にすることが出来るのだ」


 「な、なんだってぇ!?」


 くそっ、ここに来て星宮獣の秘められた能力か!

 しかしミランダもメフィストも、奴の言葉に大して動揺はしていないように見える。


 「なるほど。ゾディちゃんが隠してた能力っちゅうわけやね。けどそれなら総力戦でカタぁつけるだけの話やね。メフィスト、暁斗くん。手伝えや」


 そうだ。たしかに驚きはしたが、こちらの圧倒的有利に変わりはない。

 全員でボコして、それで終わりだ。


 ――「フッ、まだ私の勝算が見えていないようだね。わざわざ星宮獣マスターの勢ぞろいしているこの場に、私が姿を現した理由を」


 なんだと? まだ何かあるっていうのか――?

 

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